社会的連帯経済基本法レポート第8回

レポート
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日本にもある、地域を支える仕事

このレポートの作成方法と資料上の限界

筆者は韓国語の法律原文を独力で読解できる者でも、韓国の法制度を専門とする研究者でもない。本レポートでは、韓国政府、国会、法令情報などが公表した一次資料をもとに、生成AIを利用して韓国語資料の翻訳、制度の整理、日本の行政制度との比較、原稿の下書きを行っている。二つの参考資料も、主としてこの方法によって作成したものである。

そのうえで、何を問題として捉えるか、日本の制度とどのように比較するか、どの記述を採用するかについては、筆者が判断し、編集している。

法律に関する記述については、韓国語原文に加え、日本協同組合連携機構が公開した日本語仮訳などとも照合する。ただし、翻訳や制度の理解に誤りが含まれる可能性を完全には排除できない。このレポートは法律の専門的な逐条解説ではなく、現時点で確認できる資料から制度の意味を考えようとする調査と検討の記録である。

基本法は国会を通過したばかりであり、具体的な施行令、基本計画、予算、評価方法などはこれから明らかになる。新たな資料が公表された場合や、記述の誤りが確認された場合は、随時修正する。

韓国の制度を礼賛することが目的ではない。市場だけでも行政だけでも解決できなくなった問題に対して、社会はどのような第三の制度をつくることができるのか。そして、自治体の成果を「行政に残った金」ではなく「市民の側に残った豊かさ」によって測ることができるのか。その問いを、読者とともに考えていきたい。

韓国の社会的連帯経済基本法について、これまで7回にわたり、その背景や制度、地域の事業、行政による支援などを見てきた。

韓国では、企業の利益や経済成長だけでは捉えきれない社会的な課題に対して、市民が主体となる経済活動を政策として支えようとしている。

では、日本はどうだろうか。

日本にも、協同組合やNPO、社会福祉法人など、市民のくらしを支えるさまざまな組織がある。近年では、働く人自身が出資し、運営に参加する労働者協同組合の法人制度も整えられた。

これらの活動を支援する制度も、すでに存在している。

では、その制度は、地域で求められる仕事をどこまで支えられているのか。そして、事業を継続するために、どのような条件が必要なのだろうか。

今回は、日本にある担い手と制度を確認しながら、その働きを考えてみたい。

日本にも、地域を支える仕事はある

私たちのくらしを支える仕事は、企業や行政だけが担っているわけではない。

例えば、生活協同組合は、組合員が出資し、共同で商品やサービスを利用するしくみを発展させてきた。食料品や生活用品の供給だけでなく、福祉や医療、子育て支援などに活動を広げている生協もある。

農業協同組合は、農産物の生産・販売や資材の共同購入などを通じて、農業者の経営や地域の農業を支えている。

いずれも、組合員の共同の利益を目的とし、一人ひとりが組織の運営に関わることを基本とする。ただし、事業の内容や法律上の位置づけは異なる。

1998年に施行された特定非営利活動促進法は、市民による社会貢献活動に法人格を与える道を開いた。NPO法人は、福祉、子育て、環境、まちづくり、災害支援など、幅広い分野で活動している。

NPO法人は利益を得てはいけない組織ではない。事業で得た収入を活動に使うことはできるが、利益を構成員に分配することはできない。ここに、一般の営利企業との制度上の違いがある。

また、社会福祉法人は、高齢者、障害者、子どもなどを対象とする福祉サービスの重要な担い手である。社会福祉法では、支援を必要とする人々に無料または低額で福祉サービスを提供するなど、地域における公益的な取り組みに努める責務も定められている。

これらに加え、住民が主体となって生活を支える「地域運営組織」もある。

人口減少や高齢化が進む地域では、買い物や移動の支援、交流の場づくり、農産物の販売など、複数の活動を組み合わせている。地域運営組織は一つの法人制度を指すものではなく、NPO法人や住民組織など、さまざまな形態で運営されている。

共通するのは、商品やサービスを提供するだけでなく、人々のくらしや地域社会を支える役割を持っていることである。

しかし、組織の形態が同じだからといって、活動の目的や成果まで同じとは限らない。それぞれが誰のどのような必要に応え、実際に何を生み出しているのかを見る必要がある。

働く人自身が、事業をつくり運営する

こうした組織の中でも、比較的新しい法人制度が労働者協同組合である。

2022年10月に施行された労働者協同組合法は、組合員が出資し、事業の運営に意見を反映させ、自らその事業に従事することを基本原理としている。

通常の企業では、事業に資金を出す人、経営を判断する人、雇われて働く人が分かれていることが多い。

労働者協同組合では、働く人自身が組合員となり、出資と事業運営にも参加する。

ただし、組合員全員が日々の業務を直接決定するという意味ではない。重要なのは、働く人の意見を組織の運営に反映することが、制度の基本に置かれている点である。

協同して働く活動は、法律の成立以前から存在していた。新しい法律は、そうした働き方に対応する法人制度を整えたものである。

実際に、この制度を利用した事業も始まっている。

鹿児島県日置市の「ワーカーズ・HIOKI労働者協同組合」は、弁当の配達や除草作業など、地域のくらしに関わる仕事を事業としている。組合員が協力して働く場をつくり、住民の困りごとに応えようとする活動である。(訳注1)

石川県珠洲市の「海浜あみだ湯労働者協同組合」は、地域の公衆浴場を引き継ぎ、運営している。入浴施設を維持するだけでなく、子どもたちの教育支援や文化活動にも取り組んでいる。(訳注2)

この二つの例には、それぞれ異なる特徴がある。

前者は、地域のさまざまな需要を仕事として組み立てている。後者は、地域にある施設を引き継ぎ、事業と交流の場を維持しようとしている。

ただし、これらの事例だけで、事業の経営が安定しているか、地域にどれほどの成果が生まれているかまで判断することはできない。

それでも、働く人たちが共同で事業を運営し、地域を支える仕事をつくるという、従来の企業とは異なる方法を具体的に見ることができる。

制度があっても、仕事を続けられるのか

日本には、こうした団体や活動を支援する制度が存在する。

補助金や助成金、融資、行政からの業務委託、公共施設の指定管理などである。利用できる制度は、団体の法人格や事業内容によって異なる。

しかし、制度が存在することと、活動を安定して続けられることは同じではない。

例えば、高齢者への配食事業を考えてみよう。

設備や車両の購入には助成金を利用できるかもしれない。しかし、食事をつくり、届ける人の賃金、食材費、燃料費、事務所の維持費などは、事業を続ける限り必要になる。

行政から委託を受ける場合もあるが、必要な経費が契約金額に十分反映されなければ、働く人の待遇やサービスの維持に無理が生じる。

利用者から料金を受け取る場合には、負担できる金額との兼ね合いもある。サービスを必要とする人が多くても、利用料金だけでは事業を維持できない場合がある。

もちろん、こうした条件は事業によって異なり、すべての団体が同じ問題を抱えているわけではない。

問題は、支援制度の有無だけでは説明できないということである。

ある制度では設備費を支援できても、人件費や運営費には使えない場合がある。複数の支援制度を組み合わせようとしても、利用条件や申請時期が異なることもある。

また、制度があっても、申請のための事務や報告書の作成に人手が必要になる。小さな団体ほど、こうした負担が活動そのものを圧迫する可能性がある。

制度の設計や利用条件が、事業の実態に合っているのか。行政の支援が、継続的な収入や雇用につながっているのか。

制度を評価するには、そうした点まで確かめる必要がある。

年度が変わっても、仕事は続いている

もう一つ考えたいのが、事業の継続性である。

自治体の予算は、原則として年度ごとに編成される。一方、地域を支える仕事は、年度が変わったからといって必要がなくなるわけではない。

高齢者への配食も、子育て支援も、生活に困っている人への相談も、継続して利用できることが重要になる。

もちろん、自治体には複数年度にわたる契約や支出を可能にする制度がある。単年度予算であることが、直ちに長期的な事業を妨げるわけではない。

しかし、毎年の予算や契約によって仕事の継続が左右される場合、団体は翌年度の収入を見通しにくくなる。

人を雇い、経験を積み重ね、利用者との信頼関係を築くためには、一定の見通しが必要である。

また、必要な事業の規模に予算が見合っていなければ、制度があっても十分なサービスを提供することは難しい。

ここで考えるべきなのは、支援制度を増やすことだけではない。

すでにある制度をどのように組み合わせ、事業を続けるための条件を整えるのか。そして、それぞれの活動に対して、行政がどのような役割を果たすのかということである。

韓国の社会的連帯経済基本法は、これまで別々に進められてきた政策を、基本計画や省庁間の連携によって結びつけようとしている。

ただし、それによって地域の事業が安定するかどうかは、施行後の運用と実際の支援内容を見なければわからない。

日本についても同じである。

制度があるかないかだけではなく、その制度が誰の活動を、どのように支え、どのような成果につながっているのかを確かめる必要がある。

では、市民が担う活動を支援することと、本来行政が担うべき責任とは、どのような関係にあるのだろうか。

次回は、「共助」という考え方と行政の責任、そして地域に残る価値の評価を通じて、日本にも「公共の経済」はつくれるのかを考える。


訳注

訳注1 ワーカーズ・HIOKI労働者協同組合

鹿児島県日置市で2024年12月に設立され、2025年4月から事業を開始した労働者協同組合。弁当の配達、除草作業などを行い、「仕事づくり」「人づくり」「地域づくり」を掲げている。

出典:厚生労働省「ワーカーズ・HIOKI労働者協同組合」

訳注2 海浜あみだ湯労働者協同組合

石川県珠洲市で2023年11月に設立。2024年の能登半島地震を経て、2026年1月に地元の公衆浴場の事業承継を正式に完了した。入浴施設の運営に加え、子ども・若者の教育支援、文化活動などにも取り組んでいる。

出典:厚生労働省「労働者協同組合の活動事例」(海浜あみだ湯労働者協同組合)

主な参照資料

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