環境評価項目は多い。だが安心できない。

レポート
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―大阪・関西万博は何を測り、何を測っていないのか

環境評価項目は多い。だが安心できない

事後調査報告書には、多数の評価項目が並ぶ。
騒音や振動だけではない。低周波音、地球環境、生態系なども含まれている。しかし、項目数が多いことは、それだけで十分な環境評価を意味しない。むしろ重要なのは、何を「問題」として扱う構造になっているかである。
【図1】万博の環境評価は何を対象にしているのか
項目	主な評価対象(例)
大気質	工事車両・施設稼働による排出
水質	濁水・排水
騒音・振動	工事・交通による基準値
低周波音	設備・交通由来の低周波
廃棄物	発生量・再資源化率
地球環境	会期中のエネルギー使用・CO2排出
交通	夢洲周辺道路のピーク時交通量
陸域動物	鳥類・昆虫類などの確認
植物・生態系	植生・確認生物
景観	視覚的変化
こうして見ると、確かに多数の項目が評価対象となっている。
しかし同時に見えてくるのは、多くの項目が「管理可能なもの」を確認する構造になっていることだ。そこに、今回の環境評価の特徴がある。

「基準を満たす」が中心になる構造

報告書では、多くの項目が「環境保全目標を満足するか」という形で整理されている。

基準を超えなければよい。
対策を講じていればよい。


この構造では、環境への影響そのものより、「管理されていること」が前面に出やすい。
例えば騒音では、住民生活への長期的影響より、規制値を超えていないかが中心になる。廃棄物では、発生抑制より再資源化率が前面に出る。
生態系でも、「何が失われたか」より、「何が確認されたか」が中心になる。
問題は、個別項目の不足ではない。「何をもって環境配慮とするのか」という評価の物差しそのものだ。
【図2】「見ているもの」と「見えにくいもの」
見ているもの	見えにくいもの
規制値適合	都市全体への負荷
再資源化率	発生抑制
確認種		生態系変化
ピーク時交通量	長期交通変化
会期中CO2	建設・解体由来炭素
工事中騒音	累積生活影響
会場内影響	周辺地域への影響
もちろん、報告書は多数の項目を測定している。だが、その多くは「管理可能なもの」を確認する構造になっている。逆に、長期変化や累積影響、都市全体への負荷は、結果として見えにくくなる。

「影響最大時」は何を見落としているか

事後調査では、「影響最大時」を中心に測定するという考え方が取られている。
しかし、「最大時」を測ることと、「持続可能性」を測ることは同じではない。短期間のピーク管理では見えないものがある。
【図3】「最大時評価」で見えにくくなるもの
●閉幕後の環境負荷
●累積的な交通・物流影響
●長期的な都市熱環境変化
●生態系の継続的攪乱
●解体・撤去段階の負荷
●周辺地域への波及
●IR等との複合開発影響

「見えていないもの」は偶然なのか

もちろん、事後調査報告書は、多数の項目を測定している。だが、その多くは「イベントを予定通り開催すること」を前提に、管理可能な範囲を確認する構造になっているようにも見える。その結果として、長期変化や累積影響、都市全体への環境負荷は見えにくくなる。
問題は、単なる測定不足ではない。何を環境影響として扱い、何を測定対象から外すのかという、環境評価そのものの考え方である。
問われているのは、何を測ったかだけではない。
どこまでを「環境」とみなしていたのかである。
大阪・関西万博の環境評価は、夢洲という会場の中だけを見ていたのか。
それとも都市や地域の変化まで視野に入れていたのか。

次回は、「環境影響評価区域」という考え方から、この問題をさらに考えたい。
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