――庁舎と職員配置から見える、特別区設置案の欠陥
大阪市の廃止で市民は何を失うのか⑥
福祉と住まいの支援を組み合わせる。道路の不具合を確かめ、補修方法や予算を調整する。市民のくらしを支える仕事には、部署を越えた連携が必要である。
大阪市を廃止し、4つの特別区に分けた後も、その仕事を続けられるのか。10月20日の法定協議会で示された案は、費用を抑えるために職員の働く場所を分けながら、業務をつなぐ体制を十分に示していない。
新庁舎を建てないために、区域の外へ分ける
資料では、前回と同様にコスト抑制を重視し、既存庁舎の活用を最優先する。第1区と第4区は、区域内の執務面積がそれぞれ約1万3千平方メートル不足するため、区域外の中之島庁舎で補い、新庁舎の建設は不要だと整理している。[1]
第1区は、此花区・西淀川区・淀川区・東淀川区からなり、本庁舎は現淀川区役所。第4区は、天王寺区・東成区・生野区・阿倍野区・住吉区・東住吉区・平野区からなり、本庁舎は現天王寺区役所。両区とも、一部の職員は、第2区にある中之島庁舎に配置される。[1][2]

必要な行政を支えるため、どの部署をどこに置き、どう連携させるのか。本来、法定協議会で議論すべきことである。ところが、既存の空間に職員を収める計算が先行し、その配置で仕事を続けられるかの検証は、判断材料としても示されていない。ここに設置案の欠陥があり、協議会も実質的な協議の場としての役割を果たしていない。
面積の確保は、行政機能の確保ではない
本庁舎には、政策企画部、危機管理室、議会関係の機能を置く想定である。しかし、それらが収まることと、離れた部署も含めて自治体が機能することは別である。[1][2]
例えば、生活相談の担当者が別庁舎の専門職と支援方針を詰める。補修担当者が現場の状況を報告し、事業や予算の担当部署と対応を決める。誰が情報をまとめ、判断し、急ぐ場合に職員を動かすのか。
電話やオンライン会議で対応できる連絡もあろう。しかし、現場確認や対面相談、複数部署による判断も含め、分散で増える負担を検証し、人員や手順を組み込むことは欠かせない。その体制は公表資料から確認できない。
現在も区役所、本庁、事業所は離れている。問うべきは、再編で部署と職員のつながりがどう変わり、調整や応援のしくみを引き継げるかである。席が収まる計算だけでは、仕事を続けられる体制を確保したことにはならない。
職員数の試算と、仕事を担える配置は違う
各区の職員数や部局別の人数は、類似自治体の人口・職員数を用いた推計や、大阪市の行政需要に応じた加算などで算定されている。[3]
しかし、職種や課・事業所ごとの具体的な配置計画は、住民投票後の設置準備期間に決める。資料では、各区の実情を反映した配置には、各局との綿密な協議・検討が必要だとしている。[3]
ならば、その検討を経ない試算で、業務の継続をどこまで保障できるのか。専門職には資格だけでなく経験や技能も必要である。各区に必要な人材を確保し、欠員や業務の集中、分散に伴う調整まで担えるか。頭数と、仕事をつなげて実行できる体制は、別に確かめなければならない。
成立する条件を、投票の後へ送ってよいのか
新庁舎の建設費を抑えても、移動や調整に時間がかかり、人員の追加や市民への対応の遅れを招くなら、負担は職員と市民、将来の財政に及ぶ。その検証を欠いたままでは、ただの数字合わせである。
一人ひとりの配属まで投票前に確定せよと言っているのではない。重要な業務を支える職種と配置、部署間の連携、不足時の応援について、実現可能性を判断できる根拠が必要である。
大阪市の廃止は、積み重ねてきた人材、経験、組織のつながりを組み替える決定である。費用抑制のために分散配置を組み込み、行政を機能させる具体的な条件を後に残す。行政の成立に不可欠な条件を欠いた設置案のままでは、くらしを支えられるとは判断できない。
この欠陥を設置準備期間に埋めればよいとして、大阪市をなくす判断を先に求めてはならない。くらしを支える仕事が続けられる根拠を、市民に示すことが先である。
出典
- ページ番号は各資料に印刷された番号。
- [1]第11回協議会・資料3「特別区設置コストについて」、10~15頁。
- [2]第11回協議会・資料2「特別区本庁舎の位置について」、1~2頁。
- [3]第11回協議会・資料1「組織体制について」、8~14、19頁。

