地域活動協議会のなぜ。—「委託」と「自治」を分けない制度のツケ

大阪市地方自治の現在地進化する自治 vision50
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夏祭りの提灯、防災訓練の放水訓練、登下校の見守り隊。地域活動協議会(地活協)は、いまや大阪市内のほぼ全ての校区に形成され、こうした営みを支える「制度」として定着したように見える。

しかし現場の声に耳を傾ければ、評価は決して芳しくない。会計処理は煩雑で、担い手は固定化・高齢化し、そもそも何のための組織なのかという問いが解消されないまま十年以上が過ぎている。

この機能不全の正体は、単なる運用上の不手際ではない。振興町会との関係性を整理せず、予算の組み方を曖昧にしたまま船出した、制度設計そのものの欠陥である。

「動員」の装置から「自律」の建前へ

地活協の出自を辿ると、ひとつの転換点が見えてくる。橋下徹氏が市長に就任する以前、大阪市では地域振興会への補助金が、領収書添付を不要とする交付金となっていた。一町会あたり百万円という規模の交付金の一部は、盆踊りとかだけではなく、地域を守るということで地元議員(多くは自民党市議)への活動の支援に利用されていた地域もあったのは事実である。

橋下市長はこの仕組みを問題視し、就任後に廃止した。
同時に、平成二十年に設置された市政改革検討委員会タスクフォースが市内十地域への聞き取り調査を行い、担い手不足、住民参加の低調、縦割り行政による負担感、支援制度の使いにくさといった共通課題を洗い出していた。

この知見は平成二十三年の「なにわルネッサンス2011」を経て、平成二十四年七月の「市政改革プラン」に結実し、平成二十五年四月、「地域活動協議会に対する補助金の交付の基準に関する要綱」が制定される。これが地活協の正式な出発点である。

「領収書のいらない補助金」から「会計の透明性」へ。

建前の上では大きな転換だった。しかし、行政が地域を都合よく使う発想そのものが解体されたわけではない。形だけ整えた状態で、地域と行政の関係性の本質——委託なのか、自治なのか——が問われずに残されたのである。

ねじれた関係性—振興町会は「一構成団体」だったはず

地活協は制度上、振興町会や地域社会福祉協議会、PTA、NPO、企業などが幅広く参画する「連合組織」として設計されている。誰か一つの団体が独占する仕組みではない、という建前である。

しかし実態は異なる。会費を集め、慶弔から防犯灯の電気代まで担ってきた振興町会だけが、組織的な実務能力と最低限の手持ち資金を持っている。
結果として、地活協の事務局機能は振興町会の役員が事実上兼務し、振興町会の延長線上の組織として運営されているケースが大半である。
制度上は「対等な連合体」、実態は「振興町会の別働隊」。この建前と実態のねじれが、新たに参画したNPOや若い世代の当事者意識を育てる土壌を奪っているのもまた事実であろう。

でたらめな予算設計——後払い・部分支給・立て替え能力の格差

財政面の設計はさらに深刻である。大阪市の補助金交付要綱を見ると、補助金は事業が完了し金額が確定した後に請求し、三十日以内に支払われる仕組みになっている。つまり年度末の実績確定までは、地活協側が経費を立て替えなければならない。

この立て替えを担えるのは、会費収入という固定財源を持つ振興町会系の団体に限られる。PTAや子ども会、ボランティア団体には、そもそも立て替えるための手持ち資金がない。

さらに補助金は活動費の全額を保証するものではなく、地域の選択に委ねられる「大括りの補助限度額」として提示されるにすぎない。いくら使えるかも、いつ手元に入るかも不透明なまま、それぞれの構成団体が手弁当で活動を支える構造になっている。これでは、会計に強い人材や時間に余裕のある人材しか担い手になれない。

一式委託という根本問題——行政機能と自治活動の混在

最大の制度的欠陥は、行政が地域に委ねる業務の性質を区別していないことにある。

大阪市の要綱は、区長が校区ごとに「地活協が担うべき分野」を防犯・防災、子ども・青少年、福祉、健康、環境、文化・スポーツの中から指定し、補助金の交付はその活動が指定分野の「すべて」にわたる場合に限って認める、と定めている。要綱はまた地活協の機能を「準行政的な機能」と明記し、一般の市民活動団体への補助とは異なる位置づけを与えている。

つまり制度の建付け自体が、地活協を実質的な行政の下請けとして認識しながら、それを「自由度の高い補助金」という名のもとに、夏祭りや盆踊りといった地域固有の自治的活動と一緒くたに一括発注しているのである。

本来であれば、地域の安全網を支える防災・防犯・福祉・見守りといった準公共的な機能には、行政が事務として適正な対価を支払って委託すべきであり、祭りや独自の交流活動については行政が手を引き、地域の自由な発意に委ねればよい。

両者を線引きせず一式で押し付けているからこそ、「行政に協力させられている感」と「自分たちの祭りなのに口を出される感」が同時に生まれ、誰も得をしない制度になっている。

この歪みは大阪市だけの問題ではない。全国的にも「地域運営組織」と呼ばれる同種の仕組みが急速に広がり、令和四年度時点で全国七千二百団体を超え、半数近くの市区町村に存在するに至った。

先行事例として知られる島根県雲南市では、人件費を含む一括型の交付金を地域自主組織に交付しているが、これもまた行政機能と自治的活動を分けずに丸ごと手渡す発想に立っている。

大阪市の地活協が他都市以上に窮屈なのは、防犯・防災から文化・スポーツまで「すべての分野」を一律に担うことを補助金交付の絶対条件としている点である。地域の実情に応じて重点を変える余地さえ封じ込め、全分野に薄くリソースを広げさせる設計は、担い手不足という現実とまったく噛み合っていない。

二層化による再設計

第一に、防災・防犯・福祉・見守りなど公共性の高い活動は「委託」として切り出し、実費に基づく適正な対価を支払う仕組みに改めるべきである。
大正区は平成二十六年度から二十九年度まで、補助金交付を取りやめて地活協支援を委託料として別途計上する試みを実際に行っていた。残念ながらその後補助金方式に戻ってしまったが、この前例こそ全市で再検証し、制度化する価値がある。

第二に、祭りや独自の交流活動については補助対象から思い切って外し、地域が自分たちの裁量と財源で自由に行えるようにする。行政の評価や報告義務から解放されることで、むしろ地域の創意は育つはずだ。

第三に、委託部分については四半期ごとの分割払いや概算払いを基本とし、年度末一括清算という後払い構造を改める。立て替え能力の有無が担い手の偏りを生んでいる現状を直視すべきである。

第四に、振興町会と地活協の関係性を制度上も明確にする。振興町会の実務的基盤に依存していること自体は否定すべきではないが、その依存を「対等な連合体」という建前で覆い隠すのではなく、役割分担として正面から制度に書き込む必要がある。

おわりに

地活協が抱える問題は、担い手の意欲や能力の問題ではない。行政が地域を「自治の主体」として遇する覚悟を最後まで持たず、形だけの制度に着地させてしまったことの結果である。

委託すべきものは委託し、任せるべきものは任せる。この単純な線引きをやり直すことこそ、地活協を「単なる看板の挿げ替え」から「機能する期待される自治」へとバージョンアップさせるための、最初の一歩になるはずだ。

<山口 達也>


参考

  • 大阪市「地域活動協議会とは」 https://www.city.osaka.lg.jp/kita/page/0000542387.html
  • 大阪市「地域活動協議会の形成に向けた支援」 https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000209897.html
  • 大阪市「地域活動協議会に対する補助金の交付の基準に関する要綱」 https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000263908.html
  • 大阪市「地域活動協議会補助金」(大正区の委託料移行の記載含む) https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000220494.html
  • 大阪市中央区地域活動協議会補助金交付要綱 https://www.city.osaka.lg.jp/chuo/page/0000220380.html
  • 総務省「令和5年度 地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業 報告書」(令和6年3月) https://www.soumu.go.jp/main_content/000874295.pdf

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