シリーズ・チャレンジ市民×行政
ucoは、「進化する自治を構想する」というテーマで、市民と行政のあり方、市民が行政の計画や施策に対していま以上に関与し、積極的な市民自治のありかたを探り続け、情報として発信しています。
「進化する自治」
一つには、現在ある制度や市民が持つ権利の範囲で、行政に対して意見や要望を伝える方法をどのように使うか。あるいは最大限に活用するにはどうすればよいのか。些細なことや、変わればいいなと思っている小さなことを行政に伝え、実現すること。
もう一つには、新たな制度や、実験的な手法などを提案し、現在の二元代表制の地方自治とは別に、もう一つの「新たな自治」を提示し、市民と行政のより密接な関係性を生み出すたの手法を探ること。
前者には、選挙投票権や署名活動、陳情書や請願書、議会傍聴やパブリックコメント、情報公開請求などの方法がある。
後者には、ミニパブリックス(気候会議などはその一種)や市民参加型予算など、世界的な民主活動の中で生まれたような新たな制度などがある。
このシリーズでは、様ざまな形の「進化する自治」の実践を紹介していくもの。
まずは「行政との対話を重ねる陳情書のすすめ」からスタート。
講師は、地方財政・地域政策論を専門とする名古屋市立大学名誉教授の山田明さん。
山田さんは、ここ数年、大阪市への情報公開請求や、議会への陳情書を利用することで、大阪市の事業や施策への要望や、公開されていない情報の公開、事業の進捗や疑問に思ったことに回答を求めるなど、既存の制度を駆使して、ご自身の活動に利用されている。
山田さんは、大阪府・市が誘致を進めている「IRカジノ」にまつわる公金支出の無効と損害賠償を訴える「夢洲IRカジノ訴訟」の原告としても活動をされている。
その山田先生の活動レポートを紹介しながら、「進化る自治」の実践について話を進めていこう。
大阪市会と陳情書
山田 明[名古屋市立大学名誉教授]
写真は大阪市会事務局作成の冊子。令和8年2・3月市会(定例会第1回)日程が掲載されている。2月17日に本会議開会、3月27日に閉会となった。本会議や多くの常任委員会を傍聴したが、陳情書審査を中心に傍聴記を記録しておきたい。
次の写真のように、常任委員会は財政総務・教育こども・民生保健・都市経済・市政改革・建設港湾の6委員会で構成されている。常任委員会のほか、特別委員会(決算、大都市・税財政制度)が設置されている。昨年度まで万博推進特別委員会があったが、閉幕後に廃止された。


陳情書はいつでも提出可能であるが、2月市会は2月6日、3月市会は3月6日締切であった。陳情書は議会事務局に提出し、6常任委員会で審査される。写真の各委員会の所管事項に対応して、陳情書が付託される。陳情書はふつう陳情趣旨と陳情項目から構成されるが、項目によっては別の委員会で審査されることもある。私の陳情書では、万博やIRカジノ関係は都市経済委員会、夢洲関係は建設港湾委員会、副首都・都構想関係は財政総務委員会で審査される。
常任委員会では、付託案件審査のあと、陳情書の審査が行われる。まず当局(理事者=各局の局長)から、陳情書ごとに見解が表明される。次に、委員による陳情書に関連した質疑がある。こちらの答弁は主に各局の課長が行う。質疑のあと、陳情書の採択に移り、各会派から陳情書への態度が表明され、陳情書ごとの採決に移る。陳情書は「採択」「不採択」、「引き続き審査」に分けられる。大半の委員会は維新が過半数を占めているので、維新の動向に左右されることが多い。私の万博やIR関係の陳情は「不採択」が多かったが、最近は「説明を求める」といったタイトルにしたので、「引き続き審査」が大半を占めるようになった。
私が陳情書を単独で提出するようになったのは、2000年11月の大阪市廃止・分割の是非を問う住民投票のあと、維新が大阪市の骨抜きをねらう大阪府市一体条例制定の頃からだ。陳情書を審査する委員会も傍聴するようになった。私が「夢洲IRカジノ住民訴訟」原告になり、市役所市民情報プラザで情報収集することが多くなり、陳情回数次第に増えていった。
私は陳情書をA4で1枚にまとめることにしている。議会ごとに陳情書を4〜5件ほど提出するので、事務局に負担をかけないよう、できるだけ締切1週間前には提出することにしている。陳情書をまとめることにより、大阪市政に対する関心が高まり、市政の問題点や課題を私なりに整理できる。
陳情書提出は「自己研鑽」のためだけでない。IRカジノなど夢洲開発は情報が十分に開示されていない。大阪市に対して情報公開請求を重ねてきたが、時間とお金がかかる。陳情項目は具体的な事例を挙げ「説明を求める」として、局長らから見解表明(情報)を短期間に引き出すことができる。
それだけではない。陳情は議会の活性化につながると思う。大阪市は維新が過半数を占めており、馴れ合いの議会運営になりがちだ。それを打ち破る一つの手段が陳情である。最近では、「樹木伐採」「喫煙所」「特区民泊」などで、多数の陳情書が提出され、それをめぐり活発な質疑が繰り返された。常任委員会に属する委員は、地元からの要望を無視できないので、真剣に質疑することが多い。その一方で、私が提出するIRカジノなどは、地元からの要望が少ないのか、取り上げる委員は少ない。さて、どうするか。
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