行政が止まると、市民の何が止まるのか

コラム
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大阪公立大学で10月2日未明、情報基盤システムに大規模な障害が発生した。大学は8日まで全授業を休講としている。履修登録や教材の閲覧、課題提出、学生の相談窓口、大学のメールなど、学びと大学生活を支える多くの機能が利用できなくなった。

10月5日の記者会見では、大学はランサムウェアによるサイバー攻撃とみられると説明した。バックアップデータの多くも暗号化され、システム復旧の見通しは立っていないという。くわしい侵入経路などは、これからの調査を待つ必要がある。

今回の事態で気になるのは、一つの基盤が止まることで、授業、手続き、連絡といった別々の活動が同時に妨げられたことだ。情報システムは、便利に使う道具であるとともに、日常の活動を成り立たせる条件になっている。

災害やシステム障害時、市民のくらしには何が起こるのか

行政で同じようなことが起きたら、市民のくらしには何が起こるのだろうか。

住民票や証明書を受け取れない。給付や支援の申請が進まない。相談の予約が取れず、担当者とも連絡がつかない。利用する予定だった公共施設の予約や受付ができない。止まる業務によって、私たちの予定や生活にも影響が及ぶ。

その影響は「少し不便になる」で済むとは限らない。就職や転居のために書類をそろえなければならない人には、提出期限がある。家賃や生活費を支援に頼る人には、手続きの遅れが家計の不安につながる。相談を必要としている人にとって、窓口につながらない時間は、一人で問題を抱える時間になる。

同じ一日の停止でも、別の日に出直せる人と、もう休みを取れない人とでは負担が違う。別の窓口に行ける人もいれば、移動が難しい人もいる。行政の仕事が止まるとき、誰が、どれだけ困るのか。その違いまで含めて考えなければならない。

災害時にも必要な仕事や業務を続けるために

災害時には、さらに事情が変わる。避難先や被害の情報を伝え、生活に必要な物資を届け、被災した人からの相談を受け付ける。行政自身が被災しても、こうした仕事の必要性は増していく。職員も、庁舎も、通信も、いつもどおりに使えるとは限らない状況で、市民を支える仕事を続けることが求められる。

そのための考え方が、BCP、業務継続計画だ。企業では事業継続計画と呼ばれるが、行政にも必要な備えである。緊急時に優先する仕事を決め、それを続けるために必要な人や場所、情報、連絡手段などを確保し、停止した仕事を復旧させる手順を整えておく。

内閣府も、自治体の業務継続について手引きを示し、計画の策定とともに、点検や訓練を通じて実効性を高めることを求めている。

市民×行政のBCPを考える

市民の側から考えるなら、重要なのは、困ったときに必要な支援へたどり着けることだ。システムが使えない間も相談を受け付ける。申請の受付方法を変え、期限の扱いを知らせる。利用できる窓口や再開の見通しを、届く方法で伝える。こうした対応が用意されていれば、停止による負担を減らせる。

もちろん、業務を支えるシステムを止まりにくくすることも必要だ。そのためには費用も維持管理もかかる。だからこそ、何を優先して守り、停止した場合はどのように業務を続けるかを、くらしへの影響から考える必要がある。

また、計画があっても、職員がその手順を使えなければ、実際の対応にはつながらない。いつもの連絡手段が使えない状況で、誰が判断し、どこに連絡し、どの仕事から動かすのか。必要な情報を取り戻し、業務を再開できるのか。訓練を通じて確かめ、足りないところを直していくことが欠かせない。

自治体が他の自治体から応援を受ける場合も、来てもらうだけでは仕事は進まない。任せる仕事や必要な情報、働く場所を準備しておく必要がある。市民や地域の団体と協力する場合にも、行政が情報や連絡先、役割を明らかにしておくことが、協力できる環境につながる。

大学の障害は、私たちの日常が、情報システムによってどれほど支えられているかを改めて示した。行政の業務継続も、市民のくらしと結び付けて考えたい。

必要な手続きや相談を続けられること。支援を必要とする人を、停止の間も支えられること。そのために行政がどのような備えを持ち、市民とどう協力できるのか。これから、BCPを手がかりに考えていきたい。

参考資料

執筆時点:2026年10月5日。大学の障害については同日18時までに確認できた公表情報・報道に基づく。

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