市民×行政のBCP 第2回
いつもの支えが、届かない日
離れてくらす親のもとに、週に何度かヘルパーが来ている。食事の支度や身の回りのことを手伝ってもらい、親も自分も、その訪問を頼りに日々を送っている。例えば、そんなくらしを思い浮かべてみる。
ある日、災害が起き、いつもの事業所から訪問を続けるのが難しくなったと連絡が入る。自分もすぐには駆けつけられない。今日の食事をどうしよう。ほかに頼めるところはあるだろうか。
まずは、いつも相談しているケアマネジャーに連絡するかもしれない。別の事業所を探してもらったり、行政にも相談してもらったりするだろう。そのとき、相談先の職員も十分に出勤できず、必要な情報を調べるシステムも使えなかったら、どうなるだろうか。
ふだんは、一回一回の訪問の向こうにある連絡や調整まで意識することは少ない。支援が届かなくなって初めて、それを支える人や情報のつながりが気にかかる。
介護に限った話でもない。子どもを養育する保護者が被災し、一時的に子どもを預かってもらう必要が生じることもある。これまで支援を利用していなかった人が、初めて助けを求める場合もある。行政の仕事がいつもどおりにできない日にも、支援を必要とする人の一日は続いている。
相談を受け付けた、その先は
こうしたときの備えが、BCP(Business Continuity Plan=業務継続計画)である。厚生労働省は、介護施設・事業所向けに、感染症や自然災害に備えるガイドラインや研修資料を公開している。
事業所が、職員や物資を確保しながらサービスを続ける。そのうえで、現場だけでは解決できないことを、ほかの事業所や行政につなぐ。利用する側から見れば、その先まで連絡や調整が進んで、ようやく必要な支援が届く。
例えば、システムが使えなくても、窓口で紙に相談内容を書き留めることはできるかもしれない。ただ、相談を受け付けた後、本人にどんな支援が必要かを確認し、誰が対応するかを決めるところまで進められるのだろうか。
連絡先の一覧があっても、その相手も被災して電話に出られないことがある。ほかの事業所に頼めても、本人に必要な介助の内容が伝わらなければ、引き継ぐ側も困るだろう。相談した人が同じ事情を何度も説明する間にも、食事や介助の時間はやってくる。
また、サイバー攻撃などによるシステム停止では、建物や職員に被害がなくても、記録を取り出せない事態が考えられる。災害の場合とは条件が異なるが、情報を確認し、判断し、支援につなぐ方法を用意しておくという課題は重なる。
システムやデータが元に戻るまでに、どう仕事を続けるか。システムやデータが元に戻るまでの間にも、必要な支援を届ける。そのために何を用意しておくのかを考えると、BCPの具体的な意味が見えてくる。
頼りたいとき、つながれるだろうか
大阪市の業務継続計画も、災害対応とともに、市民生活に不可欠な通常業務を続けることや、早期に再開することを掲げている。
では、福祉の現場ではどのような対応が用意されているのか。市のデジタル統括室に電話で尋ねたところ、システム停止中に各部局がどう業務を続けるかまでは把握しておらず、確認したい項目を示してほしいとの説明だった。具体的な対応は、担当部局への確認がこれからである。
そのとき知りたいのは、自分や家族が困った場面で、誰に連絡すれば、その先へつないでもらえるのかということだ。いつもの担当者に連絡がつかなくても、事情を受け止め、対応を引き継ぐ人がいる。そのことが分かれば、利用する側も、支援する側も、次の行動を考えやすくなる。
計画や訓練に、利用者や家族、事業所の経験を持ち寄ることで、見えてくることもあるだろう。行政が想定する手順と、実際に困ったときに頼る相手が、うまくつながっていないかもしれない。地域で協力できることも、連絡先や必要な情報、使える場所や物資が分かって初めて具体的になる。
いつもの時間に支援が届く。その毎日は、どれほどの人や情報のつながりに支えられているのだろう。もし一つが途切れても、別の誰かにつながれる。そんな備えは、身近なところでどうなっているだろうか。


