なぜ、決まってからしか知らされないのだろう

市民と市政
この記事は約5分で読めます。

データセンター誘致から、まちの決め方を考える①

いつも通る道の先に、工事の看板が立った。そこに何ができるのかを知り、少し気になって説明を聞いてみる。ところが、場所も用途もすでに決まっていて、工事も始まっている。

もし、それが自分の家の近くや、子どもが通う学校の隣だったら、どう感じるだろう。

建物ができれば、風景も、人や車の流れも変わる。その場所で続いていくくらしについて、私たちの思いは、いつ、どこで受け止められるのだろうか。

北九州市のひびきの地区で進むデータセンターの建設計画は、そんな問いを私たちに投げかけている。

小学校の隣の土地は誰が選んだのか

計画地は、北九州市立ひびきの小学校の隣にある。市が公表した1棟目の計画は、地上4階、建物が立つ地盤からの高さ約42メートル、延べ床面積約3万2,000平方メートル。さらに2棟目も計画されている。

データセンターは、多数のコンピューターを動かし、情報を処理・保存する施設だ。冷却設備や非常用の電源設備も必要になる。学校や住宅の近くに建てるなら、騒音や排熱、工事車両などの影響を、そこで過ごす人たちが確かめたいと思うのは当然だろう。

この土地は、もともと市有地だった。

市の説明資料によると、2021年に市が事業者へ複数の候補地を提示し、土地が選ばれた。2023年には売買契約が市議会で全会一致で可決され、10月に売却が完了した。同じ月に、自治会組長会で説明したことも記されている。

事業者にとっての立地条件が検討され、土地の売却へと進んだ。その過程に、学校で学ぶ子どもたちや周辺で生活する人たちの視点は、どのように取り入れられていたのか。

公表された経過からは、売却前に周辺住民や保護者が計画を知り、立地の是非も含めて考え、意見を反映できる機会があったのかは判らない。市は、まずそこを説明する必要がある。

「説明した」と「一緒に考えた」の隙間

その後、市は2025年にも自治会組長会で説明し、出前講演も行っている。2026年1月には造成工事の住民説明会が開かれ、2月に造成着工。7月と8月には建物計画の住民説明会が行われた。

そして10月9日、市主催の住民説明会が開かれた。

説明の機会はあった。しかし、住民が知りたかったこと、意見を伝えたかったことに、その説明は応えるものだったのだろうか。

この場所に建ててよいのか。規模は適切なのか。ほかの場所を選ぶことはできないのか。こうした住民の意見を、土地を売る前の判断に反映できたかどうかが重要である。

10月9日の市の説明資料には、次の一文がある。

土地は売却済みであり、市は事業者に対して工事中止の権限はありません。

出典:北九州市・2026年10月9日住民説明会資料、3ページ

市が誘致し、売却した土地について、今度は売却済みであることを理由に、中止する権限はないと説明する。住民は、その前提から話し合いに加わることになる。

市が土地を持ち、売るかどうか、どんな条件を付けるかを判断できたときに、市民の意見を受け止める機会を設けたのか。決定後に説明会を重ねても、その問いは残る。

まちの将来を左右する選択を済ませてから、住民には影響への対策だけを話し合ってもらう。その進め方は、住民の判断を政策決定の外に置く、非民主的なものである。

市有地は市民の財産だ。その使い方を決める過程に、市民が関われる機会を保障する責任が行政にはある。議会で議決したことだけで、その責任を果たしたことにはならない。

私たちのまちでも、同じことは起きていないか

10月15日、市長は住民・事業者・市による協議会を設けると発表した。想定する議題は、生活環境、通学路や教育環境への配慮、安全対策、情報共有などである。

必要な話し合いではある。しかし、立地や規模そのものを見直す提案まで扱えるのかは、発表からは明確ではない。対話の場をつくるなら、住民の意見によって何を変えられるのかも示す必要があるだろう。

この事案を、北九州だけの出来事として読み終えてしまってよいだろうか。

大阪市でも、もと北天満小学校の跡地にデータセンターを整備する事業者が選ばれている。土地は定期借地による貸付であり、北九州とは条件が違う。それでも、公共の土地をどう使うのかという判断に、住民がいつ、どの範囲で関われたのかは、同じように確かめたい。

学校の跡地、公園、公共施設。自分たちのまちにある場所の将来が決まるとき、私たちはどこから話し合いに加われるのか。

決まったことを受け入れてもらうために説明会を開き、異議を述べても「すでに決まっている」と返すのなら、住民の声を聴くという言葉は空しくなる。結果として、反対意見が判断に届く道も閉ざされる。そのような行政の進め方を、いつまでも当たり前として受け入れるわけにはいかない。

もし、まだ選べる段階で情報が届いていたら、どうだっただろう。子どもの通学や地域での生活から気づくことを伝え、立地や規模を考え直すこともできたかもしれない。行政が見落としていた問題を、市民が見つけることもあるはずだ。

私たちは、まちを決める過程に、自分たちの経験や思いを持ち寄れる。その機会があることは、行政を信頼して任せるための、身近で大切な条件ではないだろうか。

そして、誘致を進める行政が語る「経済成長」や「地域への還元」は、そこでくらす人に何をもたらすのか。次回は、その事例なども確かめながら、私たちのまちに残る価値を考えてみたい。

参考資料

※公表資料の確認は2026年10月20日現在。

ucoの活動をサポートしてください

    【ucoサポートのお願い】
    ucoは、大阪の地域行政の課題やくらしの情報を発信し共有するコミュニティです。住民参加の行政でなく、住民の自治で地域を担い、住民の意思や意見が反映される「進化した自治」による行政とよって、大阪の現状をより良くしたいと願っています。 ucoは合同会社ですが、広告収入を一切受け取らず、特定の支援団体もありません。サポーターとなってucoの活動を支えてください。いただいたご支援は取材活動、情報発信のために大切に使わせていただきます。 またサポーターとしてucoといっしょに進化する自治を実現しませんか。<ucoをサポートしてくださいのページへ>

    シェアする
    タイトルとURLをコピーしました