webサイトに公開していることが「市民への情報公開」か?――見えなくなった都市の姿

市民と市政
この記事は約4分で読めます。

行政の透明化とは程遠い、大阪市の言う「情報公開」

大阪市役所1階にある「市民情報プラザ」。ここは、大阪市が様ざまな統計書や政策の解説をはじめ、経済や産業、市政に関する刊行物が並び、市の姿を誰でも手に取って確認することができる、市民にとっての重要な情報拠点だった。しかしその姿は、この10数年で大きく変わってしまった。書棚は縮小され、紙資料は大幅に減少し、目に見えて情報が少なくなっている。かつての姿は見る影もない。

特に統計やブックレット類の廃止について、大阪市は「Webで公開している」と説明する。だが、市民情報プラザに閲覧用の端末は設置されていない。スマートフォンやパソコンを持たない市民にとって、情報は「公開されているが、アクセスできない」ものになる。仮に機器を持っていたとしても、小さな画面で大量のPDFやデータを読み解くことには限界がある。
問題の本質は、単に紙が減ったことではない。
何が配架されなくなったのか、その全体像すら把握しにくい状況にある。

情報は公開されている。
しかし、市民はそれにアクセスできない。

大阪市は政策評価の指標の公開を放棄した

「大阪市統計書」は、PDF版として断続的に公開はされているようだが、更新頻度が定まっておらず、分冊などまとまりに欠け、統計書としての役割を果たしているとは言い難い。
「市勢要覧」と「経済白書系」の冊子類は、2010年代に入って更新は停止され、pdf版さえ見当たらない。
「商業統計のまとめ」、「工業統計の市独自整理」、「経済動向資料」といった経済・産業系刊行物では、2010年代前半まではあったようだが、その後部局ごとに個別に発表しているに過ぎない。
大阪市の資料、冊子の公開、刊行の削減経過

~2000年代前半  「都市の全体像を紙で把握できる時代」

大阪市統計書(冊子)
市勢要覧
経済・産業系刊行物(商業・工業など)
市民情報プラザに紙資料が集約


2000年代後半~2010年代前半  紙→デジタル移行期(まだ“読む機能”は残存)

統計書のPDF化
冊子縮小・併用
各局の個別資料が増加

2013~2016年前後(転換点)  「統合して示す機能」が崩壊

オープンデータ化(CSV中心)
統計の分散公開
市勢要覧・経済刊行物が更新停止


2010年代後半  “自分で組み立てる統計”へ

統計書の形式的存続(実質弱体化)
局別・テーマ別の断片化


2020年代  「公開はされているがアクセスできない」状態

市民情報プラザの紙資料縮小
書棚削減
Web閲覧前提(ただし端末なし)
この変化は、情報の形をこのように変えた。

「まとめて示される情報」から
「自分で集めて読み解く情報」へ


いま大阪市が提示、提供しているのは、「情報」ではなく「数値資料=データ」に過ぎない。分野別に整理された“読む資料”は消滅している。

この変化が意味するものは小さくない。
都市の全体像は見えにくくなり、変化の方向も把握しづらくなる。人口減少と産業構造、財政との関係といった本来一体で見るべき問題は、断片的なデータからは読み取れない。
CSVデータだけでは、比率や指数、経年変化や将来の見通しは、自ら加工しない限り見えてこない。

大阪市は2010年代に「統計をまとめて示す機能」を放棄した

結果として、市民が政策の効果を検証することは難しくなった。

なぜ大阪市は行政責任を果たさないのか

一方で、他の政令市では異なる選択が続いている。横浜市や名古屋市では、統計書や年鑑が現在も継続して発行され、都市の現状や変化が整理された形で提示されている。
この違いは決定的だ。

横浜市・名古屋市の刊行物で「わかること」、また統計書(年鑑)の役割について整理してみよう。

❶ 市の全体像(人口・産業・財政)が一体で把握できる
人口構造(年齢・世帯)、産業構造(事業所・従業者、財政・行政規模など、 都市の“現在地”を俯瞰できる

❷ 長期時系列が維持されている
数十年単位の推移、景気・人口減少の変化などが一目でわかる。つまり、変化の分析が可能となっている。

❸ 分野横断で整理されている
経済・教育・福祉・都市計画が同一構造で掲載されているので、政策間の関係が見える。

❹ 指標として“読みやすく加工”されている
比率の明示や指数化されている。またグラフや注釈が付けられるなど、専門知識がなくても理解が可能。

❺ 行政の“編集責任”が明確
「市勢の現況を示す」ことが明記されている。これは単なる公開ではなく「理解可能な形で提示する責任」でもある。
大阪市と他の政令市との資料・刊行物の公開の違い

項目		大阪市		横浜市・名古屋市
紙資料		ほぼ廃止		継続
統計書		断続・分散	毎年発行
データ形式	生データ中心	編集済み
利用者負担	高い		低い
情報格差		発生しやすい	抑制されている
大阪市が公開しているのは「データ」である。しかし、他都市が提示しているのは「情報」であり、「認識」である。
行政は、データを収集するだけでなく、それをどう整理し、何を読み取り、どのように認識しているのかを示す責任を持つ。なぜなら、それが政策判断の前提となるからだ。
では、大阪市はその責任を果たしているのか。

もし内部では統計を整理し、分析し、意思決定に用いているのであれば、それは市民にも共有されるべきである。逆に、そうした整理や分析が行われていないのであれば、それは政策運営そのものの基盤が問われる問題となる。

ここまでの変化を整理するると次のようになる。

・大阪市統計書は形式上は存続している
・しかし2010年代中盤以降、統合的な機能は弱体化
・市勢要覧・経済系刊行物は事実上消滅
・市民情報プラザは閲覧機能を縮小

いずれにしても、現在の状態は明らかだ。
大阪市は、データは公開している。しかし、都市の全体像や変化の方向、そして行政自身の認識は、ほとんど示されていない。

情報公開とは何か

情報公開とは何か。

それは単にデータを掲載することではない。市民が理解し、判断し、検証できる形で情報を提示することである。その前提があって初めて、「開かれた行政」は成立する。
大阪市の言う「情報公開」は、その要件を満たしているのか。
この問いは、単なる情報提供の問題ではない。
都市の運営と、その責任のあり方そのものに関わっている。
ucoの活動をサポートしてください

    【ucoサポートのお願い】
    ucoは、大阪の地域行政の課題やくらしの情報を発信し共有するコミュニティです。住民参加の行政でなく、住民の自治で地域を担い、住民の意思や意見が反映される「進化した自治」による行政とよって、大阪の現状をより良くしたいと願っています。 ucoは合同会社ですが、広告収入を一切受け取らず、特定の支援団体もありません。サポーターとなってucoの活動を支えてください。いただいたご支援は取材活動、情報発信のために大切に使わせていただきます。 またサポーターとしてucoといっしょに進化する自治を実現しませんか。<ucoをサポートしてくださいのページへ>

    シェアする
    タイトルとURLをコピーしました