行政の透明化とは程遠い、大阪市の言う「情報公開」
大阪市役所1階にある「市民情報プラザ」。ここは、大阪市が様ざまな統計書や政策の解説をはじめ、経済や産業、市政に関する刊行物が並び、市の姿を誰でも手に取って確認することができる、市民にとっての重要な情報拠点だった。しかしその姿は、この10数年で大きく変わってしまった。書棚は縮小され、紙資料は大幅に減少し、目に見えて情報が少なくなっている。かつての姿は見る影もない。
特に統計やブックレット類の廃止について、大阪市は「Webで公開している」と説明する。だが、市民情報プラザに閲覧用の端末は設置されていない。スマートフォンやパソコンを持たない市民にとって、情報は「公開されているが、アクセスできない」ものになる。仮に機器を持っていたとしても、小さな画面で大量のPDFやデータを読み解くことには限界がある。
問題の本質は、単に紙が減ったことではない。
何が配架されなくなったのか、その全体像すら把握しにくい状況にある。
情報は公開されている。
しかし、市民はそれにアクセスできない。
大阪市は政策評価の指標の公開を放棄した
「大阪市統計書」は、PDF版として断続的に公開はされているようだが、更新頻度が定まっておらず、分冊などまとまりに欠け、統計書としての役割を果たしているとは言い難い。
「市勢要覧」と「経済白書系」の冊子類は、2010年代に入って更新は停止され、pdf版さえ見当たらない。
「商業統計のまとめ」、「工業統計の市独自整理」、「経済動向資料」といった経済・産業系刊行物では、2010年代前半まではあったようだが、その後部局ごとに個別に発表しているに過ぎない。

この変化は、情報の形をこのように変えた。
「まとめて示される情報」から
「自分で集めて読み解く情報」へ
いま大阪市が提示、提供しているのは、「情報」ではなく「数値資料=データ」に過ぎない。分野別に整理された“読む資料”は消滅している。
この変化が意味するものは小さくない。
都市の全体像は見えにくくなり、変化の方向も把握しづらくなる。人口減少と産業構造、財政との関係といった本来一体で見るべき問題は、断片的なデータからは読み取れない。
CSVデータだけでは、比率や指数、経年変化や将来の見通しは、自ら加工しない限り見えてこない。
大阪市は2010年代に「統計をまとめて示す機能」を放棄した
結果として、市民が政策の効果を検証することは難しくなった。
なぜ大阪市は行政責任を果たさないのか
一方で、他の政令市では異なる選択が続いている。横浜市や名古屋市では、統計書や年鑑が現在も継続して発行され、都市の現状や変化が整理された形で提示されている。
この違いは決定的だ。
横浜市・名古屋市の刊行物で「わかること」、また統計書(年鑑)の役割について整理してみよう。
❶ 市の全体像(人口・産業・財政)が一体で把握できる
人口構造(年齢・世帯)、産業構造(事業所・従業者、財政・行政規模など、 都市の“現在地”を俯瞰できる
❷ 長期時系列が維持されている
数十年単位の推移、景気・人口減少の変化などが一目でわかる。つまり、変化の分析が可能となっている。
❸ 分野横断で整理されている
経済・教育・福祉・都市計画が同一構造で掲載されているので、政策間の関係が見える。
❹ 指標として“読みやすく加工”されている
比率の明示や指数化されている。またグラフや注釈が付けられるなど、専門知識がなくても理解が可能。
❺ 行政の“編集責任”が明確
「市勢の現況を示す」ことが明記されている。これは単なる公開ではなく「理解可能な形で提示する責任」でもある。

大阪市が公開しているのは「データ」である。しかし、他都市が提示しているのは「情報」であり、「認識」である。
行政は、データを収集するだけでなく、それをどう整理し、何を読み取り、どのように認識しているのかを示す責任を持つ。なぜなら、それが政策判断の前提となるからだ。
では、大阪市はその責任を果たしているのか。
もし内部では統計を整理し、分析し、意思決定に用いているのであれば、それは市民にも共有されるべきである。逆に、そうした整理や分析が行われていないのであれば、それは政策運営そのものの基盤が問われる問題となる。
ここまでの変化を整理するると次のようになる。
・大阪市統計書は形式上は存続している
・しかし2010年代中盤以降、統合的な機能は弱体化
・市勢要覧・経済系刊行物は事実上消滅
・市民情報プラザは閲覧機能を縮小
いずれにしても、現在の状態は明らかだ。
大阪市は、データは公開している。しかし、都市の全体像や変化の方向、そして行政自身の認識は、ほとんど示されていない。
情報公開とは何か
情報公開とは何か。
それは単にデータを掲載することではない。市民が理解し、判断し、検証できる形で情報を提示することである。その前提があって初めて、「開かれた行政」は成立する。
大阪市の言う「情報公開」は、その要件を満たしているのか。
この問いは、単なる情報提供の問題ではない。
都市の運営と、その責任のあり方そのものに関わっている。
ucoの活動をサポートしてください

