メガソーラーの課題に能勢町が選んだ「ゾーニング」という自治
再生可能エネルギーは、脱炭素社会に不可欠な存在である一方、
各地で深刻な対立や環境問題を引き起こしてきた。
その多くは再エネそのものではなく、「どこに、どのようにつくるのか」が決められていないことに起因している。
能勢町が導入した「再エネゾーニング」は、この問題に自治の側から答えを出そうとする試みだった。
全国で噴出する「メガソーラー問題」
近年、大規模太陽光発電所(メガソーラー)をめぐる問題が全国で顕在化している。
北海道・釧路湿原周辺では、隣接する地域で太陽光発電設備の開発が進められていたことが報道された。
湿地の生態系や景観への影響が強く懸念され、行政対応の遅れも問題視されている。
山梨県や千葉県、九州各地では、森林を伐採して設置されたメガソーラーが、豪雨時の土砂流出や災害リスクを高めているとして住民訴訟に発展した例もある。
共通しているのは、
・事業者主導で計画が進み
・地域への説明や合意形成が不十分なまま
・「完成してから問題が顕在化する」
という構造にある。
こうした事例が繰り返されることで、「太陽光発電=危険」「再エネ=迷惑」というイメージが地域に広がっている。
能勢町でも芽生えていた不安
能勢町も例外ではなかった。
豊能町では、一度隣町の亀岡の太陽光発電の設置が元になって、土砂災害が起こったということがあった。そのため結構早い段階で、地面に平置きはほぼ全面禁止で、設置できないということになった。
一度、変な形で設置されてしまうと、再エネそのものが地域から拒否されてしまうことにもなりかねない。
能勢・豊能まちづくりで実務を担うのは、そうした全国的な状況も踏まえ、「今のうちにルールを作る必要がある」と考えたという。
北橋みどり氏によると、
「能勢町では、まだ国内でのゾーニング事例があまり多くなかった2021年度からゾーニング事業を実施し、能勢・豊能まちづくりがその検討事務局を担いました。」
「全部反対」から始まったゾーニング
住民ワークショップでは、
「太陽光は絶対反対」
「里山の綺麗な風景を残していきたい」
という率直な意見が多く出た。
観光や農業にとって、里山の風景は生活そのものだ。
反対の声は、感情論ではなく、暮らしに根ざした危機感だった。
一方で、対話を重ねる中で、別の視点も現れる。
「全部禁止したら、結局、原発か火力発電なのか?」
「自分たちの未来は、再エネで経済を回すことも大切では?」
高校生や若い世代が議論に加わったことも、「白か黒か」の対立を和らげる契機となった。
絶対反対ではなく、1個ずつ審査していって詰めましょうというような形でマップづくりが始まった。最終的には、100%合意というわけではないが、議会も通りゾーニングは公開された。
「つくっていい場所」を先に決める
能勢町が選んだのは、再エネを止めることでも、無条件に進めることでもなかった。
法令、傾斜、土砂災害リスク、生態系、景観――多層的なGISデータを重ね合わせ、
・明確に設置不可のエリア
・条件付きで調整が必要なエリア
・比較的問題の少ないエリア
をマップとして「見える化」した。
重要なのは、「調整エリア」を残したことだ。
一件一件、現地を確認し、地域住民の意見を聞き、条件を満たす場合のみ受け入れる。
再エネを地域の審査にかける。ゾーニングの本質はここにあるのだろう。

日本初の「条例化」が持つ意味
マップをつくっただけでは法的拘束力はない。このゾーニングは、計画にとどまらず、条例として位置づけられた。
単なるガイドラインではなく、地域の合意としてのルールとなった。
この地域で勝手に設置すると条例違反となる。おかしな太陽光設置ができなくなったことで、住民との距離感が変わっていったという。
それまで住民の方とも若干の距離があったという思いがあったが、一緒にこの地域を作っていく仲間だという形で受け止められたことが、事業を進めていく上での大きな糧となったようだ。
国の補助事業としてのゾーニング事業は終わったが、勉強会等が継続された。
「勝手に作られる再エネ」から、「地域で決める再エネ」が実現するきっかけとなったと言えよう。
メガソーラーと、地域ゾーニングの決定的な違い
全国で問題となってきたメガソーラーは、規模と効率を最優先に進められてきた。
一方、能勢町のゾーニングは、地域の暮らしと環境を起点に「ここなら許容できるか」を積み重ねていく。
再エネゾーニングは、ビジネス重視でもなく、規制でもなく、行政×住民×事業者 三者による自治の実現なのだろう。
エネルギーの地産地消」は、単に地域で発電することではない。
どこで、誰が、どの規模で、どのような責任を持ってつくるのか。
「能勢・豊能まちづくり」の再エネゾーニングによる事業展開は、再エネを地域のものにするための基本方針を示している。。
次回は、「電気を売らない」という選択から広がった
省エネ、若者、交通の取り組みを追う。
エネルギーを「使う側」から自治を考える。
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