ダイキンPFAS公害調停

大阪府摂津市一津屋。
この地域の住民たちは、ダイキン工業を「ダイキンさん」と呼ぶ。長年、地域でともに歩み、働き、くらしを支えてきた企業だからだ。
その「ダイキンさん」を相手に、公害調停を申し立てる――。そこには怒りだけでは語れない、複雑な思いが垣間見える。
7月1日、大阪府公害審査会で、ダイキン工業淀川製作所によるPFAS(有機フッ素化合物)汚染をめぐる第1回公害調停が開かれた。
調停は非公開で行われたため、その内容を明らかにすることはできない。しかし、終了後に開かれた記者会見で、弁護団や申請人が語った言葉から見えてきたのは、企業との対立だけでは語り尽くせない住民たちの思いだった。
「何としても話し合いを進めたい」
記者会見の冒頭、弁護団長の池田直樹弁護士(弁護士・あすなろ法律事務所)は、
「最初にこういうことを言うのは非常に恐縮なんですが、公害調停で今日何をやったか、誰が何を発言したか、ダイキンが何を答えたか、調停員が何を言ったかというのは、ノーコメントでございます。」
と釘を刺すように語った。

そう前置きしたうえで、池田弁護士はこう語った。
「地域としてPFASの問題を何としても解決したい。私たちはこの話し合いを何としても進めたい。」
調停は裁判とは異なり、当事者同士が話し合いによる解決を目指す制度である。一方、調停では、もう一切の関わりなく打ち切るというのも十分ある、という。だからこそ弁護団は、調停の内容を語ることよりも、話し合いを継続することを優先した。そして、その思いを象徴するように、池田弁護士は印象的な言葉を続けた。
「この公害調停の地域の運動というのは、ダイキンに対する壮大なラブコールだと思っています。」
地域に根づき、長年信頼関係を築いてきた企業だからこそ、住民の中には「ダイキンだから何とかしてくれる」という期待があった。
しかし、その思いがなかなか実現しない。だからこそ住民たちは企業を排除するのではなく、「何とかしてほしい」と対話を求めたのがこの調停の運動だと語った。その願いを池田弁護士は「壮大なラブコール」と表現した。
「私が対話しているのは地域住民です」
続いて、地元で自治会役員を務める穂積範仁さん(摂津市一津屋連合自治会長・摂津市一津屋在住、世話人)は次のように語り始めた。

「ダイキンさんとは、一切いま対話はありません。私が対話しているのは今地域の住民の方たちとです。」
「この(PFAS)問題が解決しても、そのあと住民同士が禍根を残し、お互いがこの地域に住めない、いがみ合う、これが一番最悪です。私はこれを避けるために地域を回って、皆さんと対話して」いる。
自治会長として、PFAS問題によって不安を抱え、さまざまな立場の中でくらしている地域住民と向き合う日々を朴訥と語られた。
ダイキン工業は何十年にもわたり地域とともに歩んできた企業である。だからこそ「天下の一流企業として胸襟を開いて対話してほしい」と訴えた。
最後に、穂積さんはこう締めくくられた。
「あえて(調停に)臨むのは、ほんとうに地域を守りたい。このままでは次の世代に この地域は引き継げない。」
株主として、住民として

共同代表・世話人の和田壮平さん(摂津市一津屋在住、ダイキン工業株主)は、自らを「共同代表であり、同時にダイキンの株主でもある」と紹介した。
株主総会でダイキン工業の社長が「地域住民と対話する」と説明したことに触れ、
「共同代表であり、株主でもある立場から、地域住民との対話の場を設けていただきたい。」
と語った。
住民としてだけではなく、企業を支える株主としても、地域との対話を求める。その言葉には、地域と企業の双方を大切にしたいという複雑な思いがにじんでいた。
元社員としての願い
最後に発言したのは、共同代表・世話人の清水信行さん(元ダイキン従業員・摂津市一津屋在住)である。

「私は42年間、ダイキン工業淀川製作所で働いてきました。私の在職中にも既にPFOAが作られておって、会社は知っていたのです。けれども地域住民の方、それだけでなしに私たち ダイキンで働いているものにもそういう有害な物質が作られていたということを一言も言ってくれなかった。そのことに対して 非常に大きな 怒りを持って」いると語った。
その一方で、清水さんは次のように訴える。
「ダイキンが住民と、それから元従業員、いま働いている人を含めて目を向けていただくように、この戦いを 続けてやっていきたいと思います。」
地域の未来のために
第1回公害調停で交わされたやり取りは非公開である。
しかし、記者会見で語られた言葉に共通していたのは、企業への怒りだけではなかった。
地域を守りたい。
次の世代へ、この地域を引き継ぎたい。
そのために、まず対話を取り戻したい。
この公害調停は、企業と住民が争う場という側面だけでは語れない。
長年地域で築かれてきた信頼を、どうすれば未来へつなぎ直すことができるのか。住民たちは、その問いを公害調停という場に託した。
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