駅前-市役所-旧市民会館を縫合する“連結型シビックコア”という提案

枚方市駅から市役所まで、歩いたことはあるだろうか。
時間にして10分ほどである。
決して遠くはない。むしろ近い。
しかし不思議なことに、市民多くは、この二つを「ひとつの場所」として認識していない。
駅前で買い物をして、市役所に用事があれば向かうが、その途中に都市の中心を感じることはあまりない。
この「近いのに、つながっていない感覚」こそが、枚方のいまの状態を象徴している。
前回、都市核には三つのモデルがあると整理した。
一極集中か、多極連結か、行政核再強化か。
今回はそのうちの一つ、多極連結=「連結型シビックコア」という方向を、もう少し具体的に描いてみたい。
それは大きな建物を建てる話ではない。
移転か否かを争う話でもない。
いまあるものを、どうつなぎ直すかという話である。
分断ではなく、関係性の弱さ
枚方は「分断された都市」ではない。
駅と市役所は徒歩圏にあり、天野川も決定的な障壁ではない。
道路も跨げないほどのものではない。
では何が問題なのか。
それは、「都市の物語が途中で切れている」ことである。
駅前は商業の顔をしている。
市役所は行政の顔をしている。
旧市民会館は、もう廃墟っぽくて、少し宙ぶらりんな顔をしている。
それぞれが別の時間を生きている。
だから、市民はこう感じる。
- 駅前は駅前の話
- 市役所は市役所の話
- 再開発はまた別の話
この分断された物語を、ひとつの都市軸として縫い直すことが必要である。
歩いて気持ちのよい軸をつくる

再設計の第一歩は、歩行空間である。
大きなデッキを架ける必要はない。
巨大な再開発ビルを建てる必要もない。
必要なのは、「歩きたくなる道」である。
たとえば、
- 歩道を広げる
- 街路樹を連続させる
- 夜も安心して歩ける照明計画にする
- 小さなベンチやポケットパークを点在させる
- イベントができる舗装デザインにする
こうした積み重ねが、都市軸を生む。
駅から市役所までの道が、「ただの移動」ではなく、「都市の中心を歩いている感覚」に変わるとき、都市核は自然に形成される。
これは派手ではない。
しかし、人口減少期の都市には、この地味な再設計が効く。
旧市民会館を“間”の空間にする
旧市民会館跡地は、いま再開発用地として語られることが多い。
だが、ここを巨大な建物で埋める必要があるのだろうか。
むしろここは、駅前の商業的エネルギーと市役所の行政機能をやわらかくつなぐ「間」の空間として再設計すべきである。
例えば、
- 小規模な多目的ホール
- 市民が自由に使えるラウンジ
- 図書機能の一部統合
- コワーキングや子育て支援
- 行政相談のサテライト窓口
これらを一体的に配置する。
床面積は減らす。
だが機能は混ぜる。
巨大施設よりも、日常的に滞留が生まれる場所をつくる。
それは、ハレの空間ではなく、ケの空間である。
日常の重心がそこに移るとき、都市は静かに再編される。
市役所のあり方から構築すること
市役所が老朽化していることは事実である。
しかし、全面移転が唯一の答えとは限らない。
オンライン手続きが進み、窓口機能が変化しつつあるいま、行政は巨大な箱である必要があるのか。
分棟化、低層化、一部機能の駅前分散。
行政機能をネットワークとして再設計することで、柔軟性を高めることは可能である。
また公園+集約化という方法も考えられる。
市民にとって大事なのは、使いやすさであり、その視点が重要となる。
移転か否かの議論に閉じる前に、「行政のあり方そのもの」を問い直すことが必要である。
タワーマンションという複雑化
再開発と聞くと、まずはタワーマンション=高層住宅が前提になる傾向が高い。
大規模な開発には、資金が不可欠であり、再開発事業にして国から助成金を引っ張ってくることが横行している。
キーテナントが抜けていった枚方に限らず、近年の駅前再開発は、商業施設ではなく、分譲タワーマンションがその資金源に当てられている。
だが人口減少期において、分譲タワーマンションに依存するモデルもまたリスクが高い。
上部は区分所有としての私的マンション住宅、下部は、公共で行う商業賃貸スペースという立体複合、定期借地による長期収益化。
複雑な権利関係を有した長期運営不可欠となる。
都市は売って終わる商品ではない。
住み続ける環境である。
既に枚方市駅前は、デパートの撤退という経験があるのだが、タワーマンションの分譲は、問題点をさらに先送りにし、かつ複雑化する手法であり、将来は手が付けられない廃墟化する可能性も持っている。
縫合という思想
枚方は幸い、「縫合が可能な都市」である。
駅と市役所は近い。
インフラも整っている。
既存資産も豊富である。
足すよりも、つなぐ。
拡大よりも、再配置。
これが人口減少期の都市設計である。
枚方の再生は、移転の是非ではない。
駅前・市役所・旧市民会館を一体の公共軸として再設計できるかどうか。
その静かな縫合こそが、都市核再定義の第一歩となる。
しかし、この設計は図面だけでは実現しない。
次回、第3回では、
「再開発より先に設計すべきは合意形成の構造である」
というテーマに入る。
<山口 達也>

