コミュニティを育む防災訓練を。

進化する自治 vision50防災・減災
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正論は正論として。

地区防災計画のスタートラインは、
まず小さなコミュニティをつくること
これは、もはや定石中の定石だ。弊社もその定石と方法を問うてきた。

しかし、現実はどうか。
年度末が迫り、3月末までに「今年度の防災訓練」を実施しなければならない。
名簿はある。組織図もある。だが、人と人の関係性は、正直言って盤石ではない。

この状況でよく聞くのが、
「コミュニティができてから訓練をやろう」という声だ。

だが、それは今年度防災訓練をやらねばならない地域では無理な話だ。
今年度は少なくとも発想をひっくり返す必要がある。

コミュニティがないから訓練ができないのではない。
訓練を、コミュニティ形成の“入口”にすることこと。

この割り切りが、年度末訓練を意味あるものに変える。

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「ちゃんとした防災訓練」という負担回避

まず、捨てるべき幻想がある。

・フルスペックの避難所運営訓練
・役割分担が明確な本格シナリオ
・防災士主導の完成度の高い訓練

これらは、コミュニティがもう少し成熟してからやるものと考えよう。

コミュニティでの関係性がまだ醸成されていない状態で
フルスペックの防災訓練をやろうとすると、何が起きるか。

  • 一部の「できる人」だけが動く
  • その他大勢は「見学者」になる
  • 終わったあと、誰の記憶にも残らない

つまり、防災訓練をやったのに、防災力も関係性も何も残らない。

年度末訓練で目指すべきゴールは、別にある。

ゴールは「顔と名前が1つ増える」こと

この時期の防災訓練のゴールは、極端に言えばこれだけでいい。

「あ、この人、同じ地域の人なんだ」という認識が、1つ増えること。

防災知識の習得でもない。
完璧な動線確認でもない。

人の存在を知ること。

災害時に本当に効いてくるのは、
「あの人がいるから大丈夫かもしれない」
という、根拠の薄い安心感だったりする。

コミュニティ形成につながる訓練の立て方①

テーマは「作業」ではなく「会話」

訓練内容を考えるとき、
「何をするか」より先に考えるべき問いがある。

この訓練で、住民同士は話すか?

例えば、

  • 消火器訓練 → 話さない
  • AED講習 → 話さない
  • 避難経路確認 → 話さない

どれも大切だが、会話は生まれにくい。

一方で、

  • 「この地域で一番怖い災害は何だと思いますか?」
  • 「もし夜中に地震が来たら、どこに行きますか?」

こうした問いを、2〜3人の小さな単位で話すだけで、空気は一変する。

防災訓練に、正解があるわけではない。
雑談に近い会話こそが、関係性の種になる。

コミュニティ形成につながる訓練の立て方②

役割を「与えない」、問いを「渡す」

よくある失敗が、
「あなたはこの役」「あなたはあれ」
と、役割を先に決めてしまうことだ。

関係性がない状態で役割を与えられると、人は身構える。

そこで逆にする。

  • 「今日は、正解を出さなくていいです」
  • 「気づいたことを、そのまま言ってください」

役割ではなく、問いを渡す。

例えば、

  • 「ここ、ちょっと不安じゃないですか?」
  • 「これ、誰がやると思います?」

この曖昧さが、参加者を“当事者未満”に保ってくれる。
それが、次につながる余白になる。

コミュニティ形成につながる訓練の立て方③

訓練は「未完成」で終わってよい

年度末訓練で、
一番やってはいけないのは「きれいに終わらせること」だ。

・課題が全部整理された
・次の行動が完璧に決まった

それは一見、成功に見える。
だが実際には、続きをやる理由が消える。

むしろ、こう終わらせる。

「今日は、正直まだ何も決まっていません」
「でも、気になることがいくつか見えました」

この「未完」が、次年度の小さな集まり、次の声かけにつながる。


年度末訓練は「防災の完成形」ではない。

だが、今年度の3月末にやる訓練は、
完成形の一歩手前ですらない。

それでよい。

むしろ、

  • 知り合いが1人増えた
  • 名前は知らないが顔は思い出せる人ができた
  • 「また話してもいいかな」と思えた

これが残れば、訓練としては十分に成功だ。

コミュニティは、計画ではつくれない。
だが、場をつくることで、あとから立ち上がってくる。

年度末の苦しい訓練こそ、
その「場」を仕込むチャンスなのだと思う。
そうやって積み上げていくコミュニティは強くなる。

<山口 達也>

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