防災「単位」としての組織

進化する自治 vision50防災・減災
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地区防災計画を作り直すという自治の可能性を仕掛けや単位で考えてきたが、今回は大阪市福島区をケーススタディに、福島区で地区防災計画を考える際に関与をするべきであろう団体・組織を具体的に挙げ、その役割や強み等について、「単位」としての組織について考察する。

福島区は、淀川河口部近接、都市化された密集地という地理条件を有しており、洪水・高潮・浸水・地震被害等のリスクが無視できない。区の公式ページにも「地域防災計画」「防災マップ」などの取り組みが掲載されている。(大阪市ホームページ)
災害はいつ起こるか予測不能であり、行政だけでは対応しきれない。だからこそ、地域住民や地域団体が参画して地区防災計画をともにつくり、普段から備える構図が不可欠である。

福島区で参画すべき団体・組織

以下の団体・組織は、福島区という地域特性に照らし合わせても、地区防災計画への参画先として極めて有効であると考える。

1. 福島区地域防災リーダー連絡会

福島区には既に「福島区地域防災リーダー連絡会」が存在しており、規約も区が公表している。いわゆる防災リーダーという存在だ。(大阪市ホームページ)
同連絡会は、地域防災リーダー間の連絡調整、地域毎の災害時行動計画の検討、連携調整などを役割としている。同連絡会は、既存の枠組みであるため、活動の受け皿になりやすく、防災リーダーを通じて地域各所への活動展開が期待でき、すでに行政との窓口性が確保されているため情報共有経路が明確である。

参画の際には、連絡会内部での役割(情報班、初期消火班、救出・救護班、避難誘導班、給食・給水班など)にも関与できる余地がある。

2.自主防災組織=町会

地区防災計画の“現場”部分を担うのは、住民に最も近い存在である自主防災組織としての町会である。
福島区役所や区のサイトでも「自主防災組織を育成」する方向性が示されており、地方自治体の防災施策と地域のボトムをつなぐ役割が期待される。
(大阪市ホームページ)
これら住民組織との協働により、地区防災計画の実効性を高めることが可能である。

3. 福島区まちづくりセンター・地域活動協議会

福島区には「福島区まちづくりセンター」があり、地域活動協議会を支える拠点として存在している。(福島区まちづくりセンター)
まちづくりセンターは地域団体をつなぐ役割を果たしうるため、地区防災計画の連携調整や住民参加の誘導、情報発信において重要なパートナーとなる。

また、地域活動協議会(地域コミュニティ活動を担う団体群)とも連携を図るべきである。たとえば、上福島地域では「上福地活協」が防災訓練を主催した実績も存在する。

<地域活動協議会とは(大阪市HPより)>

4. NPO・民間防災支援団体・災害ネットワーク

行政や住民団体を支援する役割を担えるNPOやネットワーク団体も重要である。例えば、大阪府下避難者支援団体等連絡協議会(ホッとネットおおさか)は、被災者支援を専門とするネットワークを大阪府域で構築しており、災害時の支援調整機能を持つ。(大阪市市民活動総合ポータルサイト)
また、大阪府・大阪市レベルで情報連携する「おおさか防災ネット」が防災情報プラットフォームとしての機能を持っている。(osaka-bousai.net)
こうした外部ネットワーク団体と連携を結ぶことで、地区防災計画における広域支援や横断的情報交換を強化できる。

5. 消防署・警察・医療機関・福祉団体などの専門機関

防災・救護・避難支援・医療対応・要支援者対応といった専門分野は、地域だけで完結できるものではない。
福島区においては消防署、警察署、地域の医療機関、社会福祉団体などとも緊密に連携すべきである。訓練時にはこれら専門機関の参加を仰ぐべきであり、地区防災計画にはその協力協定や役割分担をあらかじめ定めておくべきである。

町会と地域活動協議会と。

さて大阪市の町会を知る方々は、町会とともに地域活動協議会が出てきたことに違和感があるのではないだろうか。
町会は戦後作られた赤十字奉仕団をベースにしているが、全ての住民が加入しておらず、また様々な層が暮らす大阪市(福島区)にとって、包括的な団体とは言い難い側面がある。
そこで地域のNPOやボランティアをも含めた町会の上位概念としての地域活動協議会を市内全域にほぼ強制的に作らせたのが橋下維新市政である。

本稿を含め、ボトムアップ型の進化する自治をめざしているルートではなく、完全にトップダウン型の自治のしくみが地域活動協議会である。
内実は、町会=地域活動協議会となっており、かつ補助金で縛る典型的な行政のしくみとなっている。そこに地域を育てるという思想そのものが欠落している。

さらに防災を考えるうえでコアとなる町会=地域活動協議会では、その町会加入率が更に低下しており、また高齢化していることから、防災機能の低下に直結する課題となっている。包括的な防災組織を形成していくためには、コアになる団体が町会=地域活動協議会ベースであっても、他の参画団体との横つなぎ連携と、より多くの新しいプレイヤーとしての住民参加が不可欠である。

そんな中にあって、福島区の意識ある防災リーダーが、東大阪の防災訓練に参加しているので紹介しておきたい。

近隣住区論という単位、そして組織の現状把握について、まとめたが、コアとなる町会ベースを拡げる新たなフックが必要である。
福島区では、地域を超えて「防災士」を取得した全く今までとは異なるネットワークがスターとしつつある。そういった地道な活動について、今後も紹介していきたい。

<山口 達也>

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