夢洲カジノ用地「鑑定価格の一致」は偶然か?

市民と市政
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偶然では説明できない「鑑定価格の一致」

不動産の鑑定評価と聞けば、多くの人は「専門家が客観的に価格を算定するもの」という印象を持つだろう。同じ土地であっても、評価者が異なれば将来予測や判断の置き方に違いが生じ、一定の幅が出るのが普通だ。

ところが、夢洲IRカジノ用地の鑑定評価では、その常識とは異なる結果が現れた。

複数の鑑定業者が算定した土地価格が、いずれも1平方メートルあたり12万円。さらに期待利回りも4.3%で一致し、そこから導かれる賃料水準もほぼ同じ数字となっている。

不動産鑑定において、評価額や利回りなどの主要部分までが完全に一致することは一般的にはない。にもかかわらず、夢洲では複数の鑑定で同一の数値が繰り返し現れている。

第5事件で原告が問題にしているのは、この「一致」にある。

偶然では起こりえない「3社同一価格」

原告側は準備書面において、複数の鑑定業者の評価結果が一致している点について、「通常起こりえない事態であり、極めて不自然である」と指摘している。
既に第2・5事件原告ら準備書面(3)で主張したとおり、鑑定結果が3社一致することは、大阪市評価審議会委員や複数の不動産鑑定士、住民監査委員が指摘しているように通常起こりえない事態であり、極めて不自然である。
土地価格が120,000円/㎡で一致し、期待利回りも4.3%で一致していることについて、『結果論に過ぎない』という説明しかできないこと自体、むしろ本件各鑑定評価書の不合理さを際立たせている。

「第2事件及び第5事件原告ら準備書面(5) 令和7年6月2日」より

不動産鑑定は、評価対象の選定、収益予測、利回り設定など、複数の判断要素の積み重ねによって導かれる。評価者が異なれば前提の置き方も変わるため、結果に一定の差が生じるのが自然である。
にもかかわらず主要数値が一致したことについて、原告は鑑定結果だけでなく、その判断過程そのものに疑義があると主張する。
複数の鑑定業者による評価額及び期待利回りが一致していることは通常は起こりえない事態であり、その評価過程に疑義を抱かざるを得ない

「第2事件及び第5事件原告ら準備書面(5) 令和7年6月2日」より

原告の主張は、単に価格が低いというものではない。
独立した鑑定として評価が行われていたといえるのかという点に向けられている。

大阪市は「偶然の一致」を強調する

これに対し被告大阪市は、鑑定結果の一致そのものは問題ではないと反論する。
被告は準備書面において、鑑定結果が一致したとしても、それはあくまで「結果論」にすぎず、各鑑定業者は独立して判断を行っており、市による誘導や影響は存在しないと主張している。
鑑定評価の結果が同一となったとしても、それは結果論にすぎない

「被告ら準備書面18 令和7年1月16日」より

つまり大阪市の立場は明確である。
一致は偶然であり、評価過程に問題はない、という説明だ。

一致の背景には、共通の前提条件が結論を同じ方向へ導いていた可能性がある

しかし、この説明だけで疑問は解消されるだろうか。
鑑定評価において重要なのは、最終的な数字ではなく、そこに至るまでの前提条件である。同じ数字が出たことよりも、なぜ同じ数字になったのかが問われなければならない。

もし複数の鑑定が本当に独立して行われていたのであれば、評価対象の選定や収益予測の置き方の違いが、どこかに現れるはずである。完全に同じ数値が繰り返されるためには、評価の出発点――すなわち前提条件が強く共有されていた可能性を考えざるを得ない。

ここで思い出されるのが、第1回で見た鑑定評価の前提条件である。

IRカジノ事業を「実現性不明」として評価から除外しながら、IRカジノ(大阪・関西万博用をも含む)を前提として整備された基礎的インフラは価格形成要因として考慮するという条件設定。この共通の前提が与えられていたとすれば、鑑定結果が似通った方向へ収束したとしても不思議ではない。

問題は、一致したという結果そのものではない。
同じ前提が、同じ結論を導いたのではないかという点にある。

「適正価格」はどのように導かれたのか

大阪市は、鑑定評価を根拠として夢洲IRカジノ用地の賃料を「適正な対価」であると説明してきた。しかし、その鑑定が同じ前提条件のもとで導かれていたとすれば、それは複数の独立した判断というより、同じ出発点から導かれた結論だった可能性もある。

第5事件が問いかけているのは、鑑定士個人の判断ではない。
行政が提示した条件や情報が、鑑定結果をどこまで方向づけていたのかという問題である。
では、その前提条件はどのようにして鑑定業者に共有されたのか。

次回は、裁判の中で明らかになってきた大阪市職員と鑑定業者とのメールのやり取りに焦点を当てる。そこから浮かび上がるのは、「偶然の一致」という説明では済まされない経過である。
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