議席削減への批判①
議員を減らすと聞いて、まず思い浮かぶのは、政治家の席が減ることだろう。しかし、その席は、私たちが代表を送り出すための席でもある。減らした後に、どのような声が届きにくくなるのか。今回の定数削減を考えるには、この問いが欠かせない。
自民党、日本維新の会、国民民主党の3党は10月29日、衆議院の比例代表を31議席削減する案に合意した。人口減少の見通しを根拠とし、今国会での法案成立を目指している。[1][2]
人口が減ることと、国民の代表を減らすことは、どうつながるのか。さらに、なぜ比例代表だけを削るのか。削減数の説明と、削減が必要な理由の説明は、分けて考える必要がある。
衆議院全体の6.7%、比例代表の17.6%
現在の衆議院の定数は465で、小選挙区289、比例代表176である。合意案どおり比例代表だけを31減らすと、比例は145、総定数は434となる。[1]
| 選出方法 | 現行 | 31削減案 |
|---|---|---|
| 小選挙区 | 289 | 289 |
| 比例代表 | 176 | 145 |
| 合計 | 465 | 434 |
※合意案に基づく比較。以下の割合は筆者計算。
31議席は衆議院全体では約6.7%だが、比例代表の議席に限れば約17.6%に当たる。比例が全議席に占める割合も、約37.8%から約33.4%へ下がる。
つまり、議員が一様に減るわけではない。二つの選び方のうち、比例代表の側を大きく縮め、小選挙区の比重を高める変更である。
比例代表は、どのような声を議席につないでいるか
衆院選では、小選挙区で候補者に、比例代表で政党に、それぞれ一票を投じる。
小選挙区で当選するのは一人である。最多得票の候補者を選ぶため、ほかの候補者に投じられた票は、その選挙区の議席にはつながらない。支持がいくつもの政党に分かれれば、過半数の支持を得ていない候補者が当選することもある。
比例代表は、ブロックごとの政党の得票に応じて、複数の議席を配分する。各地では最多得票にならなくても、広い範囲に支持があれば、その支持を議席につなげられる。
ただし、二つの選挙は別々に議席を決める。比例代表が、小選挙区で生じた得票と議席のずれを、衆議院全体で完全に埋め合わせる制度ではない。
それでも、小選挙区では議席に届きにくい支持を受け止める役割はある。その部分を縮めることは、地域で多数になりにくい意見や、各地に分散している支持が、議席に反映される途を狭めることである。
比例代表の議席削減は、特定の政党の都合だけの話ではない。同じ地域に住んでいても、働き方や所得、子育て、介護、障害の有無などによって、必要とする政策は異なる。地域から一人が選ばれることで、そうした違いが十分に代表されるとは限らないのである。
配分方法を変えれば、削減の影響はなくなるのか
合意には、比例の議席配分を、現行のドント式から修正サン・ラグ式に変える※ことも含まれる。自民党は、配分方式の変更により、大政党への議席の偏りを抑え、中小政党にも議席を配分しやすくすると説明している。[2]
※ドント式と修正サン・ラグ式の違い
どちらも、各党の得票数を決まった数列で割り、計算結果の大きい順に一議席ずつ配分する。違いは、割る数である。
| 方式 | 得票数を割る数 |
|---|---|
| ドント式 | 1、2、3、4、5… |
| サン・ラグ式 | 1、3、5、7、9… |
| 修正サン・ラグ式(初項1.4) | 1.4、3、5、7、9… |
サン・ラグ式は、ドント式に比べ、大政党に議席が偏る傾向を抑える方式である。修正方式は、最初に割る数を1から1.4に変え、小政党が最初の一議席を得る条件を厳しくしている。[7]
例えば、同じ5議席を、A党62,000票、B党25,000票、C党13,000票で配分すると、次のようになる。
| 方式 | A党 | B党 | C党 |
|---|---|---|---|
| ドント式 | 4 | 1 | 0 |
| 修正サン・ラグ式 | 3 | 1 | 1 |
※しくみを説明するための架空の得票による計算例。
配分方法によって、少数の支持も議席につながる。ただし、配分する議席の総数は増えない。
国民民主党の榛葉賀津也幹事長も、小選挙区を減らせば地方の声が届きにくくなるため、比例で対応するとの考えを示した。[3]
こうした説明も検討する必要がある。しかし、小選挙区を維持することと、地方にある多様な意見を代表することは、同じではない。地方にも、その地域の多数派とは異なる意見がある。
また、配分方式を変える効果と、配分する議席そのものを減らす効果は区別しなければならない。各党への配り方を変えても、比例の議席総数は176から145へ減る。
どの政党に何議席の影響が出るかは、ブロックごとの定数や得票、ほかの制度変更も含めて確かめる必要がある。現段階で一律には言えない。ただ、小選挙区の比重が高まることは、数字から確認できる。
あるべき制度を論じる前に、枠を縮めてよいか
衆議院の選挙制度協議会がまとめた報告は、第三者機関で抜本改革を検討することと、政党間で現行制度の見直しを進めることを、並行して掲げている。抜本改革では、定数も制度と一体で検討するとした。[4]
だが、その結論を待つ間の見直しでも、比例だけを削れば、二つの選出方法のバランスは変わる。
5月26日の協議会で意見を述べた大山礼子・駒澤大学名誉教授は、比例だけの大幅削減が制度の性格を変えるおそれを指摘し、あるべき選挙制度の議論を先に行うよう求めた。[5]
中北浩爾・中央大学教授は、5月21日の協議会で、政党・政治家と有権者の接点が減っていることを問題に挙げた。政治への参加をどう促すかという視点から、制度改革を考える必要があるとの指摘である。[6]
誰を、どのように代表する議会が必要なのか。その検討を進める一方で、代表を送り出す枠を先に縮めてしまう。その順序は、十分に問われなければならない。
減らす席の向こうに、市民がいる
議員の数が多ければ、それだけで多様な声が政策に反映されるわけではない。候補者の選び方、立候補の条件、議会での審議、市民の意見に応答するしくみも必要である。
しかし、その課題は、代表を減らせば解決するのだろうか。
政治への不信があるなら、お金の使い方を明らかにし、説明と検証を求める。市民の声が届かないなら、どこで届かなくなっているのかを確かめ、参加と代表のしくみを変える。その仕事と、議員の数を減らすことの関係を、提案する側は説明する責任がある。
人口が減っても、くらしの違いや、必要な政策が同じ割合で減るわけではない。
31の席を減らす。その31の席は、私たちが代表を送り出すための席である。市民の代表を減らす以上、提案する側には、その必要性と、誰の声が届きにくくなるのかを具体的に示す責任がある。私たち自身が判断できる情報を示した議論が不可欠である。
次回は、議員定数の削減が進められてきた大阪府議会と大阪市会で、何が変わったのかを考える。
出典
[1] 時事通信「比例31削減、自維国が合意=今国会に法案共同提出へ―衆院選見直し」(2026年10月29日、nippon.com掲載)。
[2] 自民党「衆院定数31削減の方向で協議を 政治制度改革本部が総会開く」(2026年10月26日)。人口減少を踏まえるという提案側の理由と、配分方式変更についての説明。
[3] 国民民主党「【自維国】三党幹事長・実務者会談で衆議院選挙制度の見直しについて合意」(2026年10月29日)。合意成立と榛葉幹事長の説明。
合意書
[4] 衆議院「衆議院選挙制度に関する協議会報告」(2026年9月30日とりまとめ、10月5日提出)。
[5] 第4回衆議院選挙制度に関する協議会会議録(2026年5月26日)。大山氏冒頭意見、紙面4~5頁。比例のみの削減による制度の性格の変更への指摘を参照。
[6] 第3回衆議院選挙制度に関する協議会会議録(2026年5月21日)。中北氏冒頭意見、紙面1~2頁。政治家と有権者との接点の減少、政治参加についての指摘を参照。
[7] 国立国会図書館『諸外国の下院の選挙制度』(基本情報シリーズ22、2016年)、紙面39~41頁。ドント式、サンラグ式、初項1.4の修正サンラグ式の計算方法と特徴を参照。本文中の架空例は、これらの計算方法により独自に算出したもの。

