4:私たちはどこでまちづくりに参加できるのか

大阪市地方自治の現在地進化する自治 vision50
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市民が参加できるまちの規模と手法について考える全4回の最終回。

カジノ反対タグを配る市民団体:大阪市民エンジン

私の友人がカジノ反対の活動として、2万5千枚のタグを配るという市民活動をおこなっている「大阪市民エンジン」。
街頭に立つと、多くの人が声を掛けてくれている。
「こういう話をもっと知りたい。」
「街のことは気になる。」
「何かできることはありませんか。」
決して、市民は無関心ではない。むしろ、自分たちの暮らす地域を良くしたいと思っている人は想像以上に多かった。

しかし、その思いを日常的な活動につなげる場所は驚くほど少ない。

この連載では、人口規模や行政区画について考えてきた。
その中で私がたどり着いた結論は一つである。
市民が参加できる仕組みは、本当に足りない

市民は無関心なのではない

行政は「市民参加」を掲げる。説明会やパブリックコメントも実施される。しかし実際には、その場で行政の方針そのものが変わることは多くない。

市民はパブリックコメントや陳情書で意見を述べることはできても、一緒に考え、一緒に決める立場にはなれないし、場所もないし、機会すらない。

その経験が積み重なると、「言っても変わらない」という空気が生まれてしまう。自治会加入率の低下も、地域活動への参加者減少も、市民の関心だけの問題ではない。参加したくても、その入口や役割が見えにくくなっていることも大きな要因ではないだろうか。

本来、地域には参加の入口があったはず

地域には本来、市民と行政をつなぐ場所があった。
区民センター。公民館。振興町会。PTA。文化活動。地域イベント。

こうした場所は、単なる施設ではなく、市民が地域の課題を考え、人とつながる入口でもあった。もちろん、運営の固定化や担い手不足などの課題はある。しかし、それでも地域に関わる機会そのものは存在していた。

いま必要なのは、その入口を時代に合わせてつくり直すことではないだろうか。

何を変えればよいのか

この連載では、「大阪市は行政区単位としては大きすぎるのか」という問いから議論を始めた。しかし、行政区画を変えることだけで、市民と行政の距離が縮まるわけではない。

重要なのは、市民が意思決定に関われる制度を増やすことに尽きる。
全国を見ると、そのヒントになる事例はすでに存在している。

例えば、東京都武蔵野市では、地域住民による運営協議会がコミュニティセンターの管理・運営を担い、市民自身が施設運営の主体となっている。

大阪府箕面市では、生涯学習センターなどに市民公募委員を含む運営委員会が設置され、市民が施設運営や事業について継続的に関わる仕組みが整えられている。

東京都杉並区では、「皆さんとつくる予算」として、市民から事業提案を募集し、その意見を予算編成に反映する参加型予算の取組が始まっている。

長野県飯田市では、地域自治組織に一定の予算が配分され、地域住民が地域課題の優先順位を話し合いながら事業を進める制度が運用されている。

これらに共通しているのは、市民を「意見を聞く相手」としてではなく、「地域をともに支える主体」として制度の中に位置付けていることである。

大変残念なのは、制度として大阪市には、このような方向性すら萌芽がないことだ。

大阪市ででもできること

こうした制度は、大阪市を廃止したり、行政区画を変更したりしなければ実現できないものではない。

現在の制度の中でも導入できるものは少なくない。

例えば、

  • 区民センターの運営委員会を区民公募中心にする。
  • 区民が企画できる地域活動予算を新たに設ける。
  • 公共施設の運営に地域住民が主体的に参加できる仕組みを広げる。
  • 地域ごとに課題を話し合い、行政と協働して優先順位を決める場を設ける。

現在の区長は、公募区長であるが、この程度の決裁権はもっている。またこうした制度は行政の効率を下げるものではない。ただ現在の時点で地域にある知恵や経験を公共の力として生かすための仕組みとして積極的に導入している行政区はない。

日常の中で育つ民主主義

民主主義というと、多くの人は選挙を思い浮かべる。
もちろん、投票は民主主義の土台ではある。

しかし、それだけでは十分ではない。

日常の中で、市民が地域の課題を考え、話し合い、企画し、ともに決める機会があってこそ、民主主義は社会に根付いていく。

この4回の連載で考えてきたのは、「大阪市は大きすぎるのか」という問いから始まったが、本当に問いたかったのは、

私たちの身近な地域に、市民が参加し、地域を支えることのできる仕組みはアップデートされているのか。

ということである。

行政規模を議論することは重要である。
しかし、それ以上に重要なのは、市民が地域に関わる制度をどう育てていくかである。市民に近い行政とは、庁舎が単に物理的に近いことではない。

市民が日常の中で参加し、企画し、ともに決めることのできる場所がある社会ではないだろうか。

「大阪の成長を止めるな」と言う前に、大阪の民主主義の基礎を育てようとしないまさに「大阪の民主主義の成長を止めている」現実。
この15年以上に渡る今の市政の中で本当に考慮されていないことをあらためて感じる。

<山口 達也>


参考資料・引用

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