万博・IRの陰で薄くなる予算の大阪

大阪市地方自治の現在地進化する自治 vision50
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大阪という都市にいま何が起きているのか。それは派手な開発の裏で、静かに進む「配分の変化」である。万博やIRといった巨大プロジェクトに資金が集中する一方で、教育や人材、そしてスタートアップといった“未来をつくる領域”への投資が相対的に細くなっている。この構造は感覚ではなく、数字としてはっきり現れている。

数字で見るスタートアップ支援の薄さ

まず、スタートアップ支援を他都市と比較してみよう。

2026年度ベースで見ると、

  • 大阪市:広義 約8.21億円(一般会計比 約0.038%)
  • 名古屋市:広義 約2.99億円(同 約0.020%)
  • 福岡市:広義 約5.82億円(同 約0.051%)

絶対額だけ見れば大阪市は福岡市より多い。
しかし、大阪市の一般会計は約2.2兆円と突出して大きい。
つまり、

「都市規模に対して、どれだけ新しい企業の挑戦に投資しているか」

で見ると、大阪市は福岡市よりも明確に低い。

さらに厳しく見ると、大阪市の「狭義」のスタートアップ支援は約1.05億円に過ぎない。

これは一般会計比で約0.005%程度であり、ほぼ誤差に近いレベルである。

この数字が意味するのは単純である。

大阪はスタートアップ起業支援について、
“形式上はやってはいるが、新建に育てるつもりはない”

ということなのである。。

増え続ける「ハコの予算」

同じ2026年度の大阪市予算を見ると、別の動きが見える。

  • 投資的経費:前年比+588億円
  • 扶助費:+567億円
  • 人件費:+214億円

全体として支出は膨張している。その中でも特に特徴的なのが、万博・IRを含む「夢洲関連」の存在である。

万博の総費用は約7,600億円規模とされ、会場建設費約2,350億円は国・府市・経済界で分担されるが、インフラや運営費を含めると公費負担は5〜6割に達する構造である。さらに大阪市は、

  • 液状化対策:約788億円
  • IR関連追加土壌対策:最大257億円

といった負担を抱える可能性がある。

つまり「一度走り出したハコの支出は止まらない」という状態に入っている。

ところが現政権は、バブル時代のハコモノ行政を痛烈に批判して、市民の指示を得た政党であったはずなのに、喉元すぎれば、なのか、ハコものに傾いている。

削られている予算はどこか

ここで重要なのは、「何が予算から削られているのか」である。

結論から言えば、明確に露骨なカットがなされているわけではない。

しかし、「後回しにされている領域」がある。

それが、

  • 教育の質的向上
  • 人材育成
  • スタートアップ支援
  • 地域のイノベーション

等である。

教育予算は維持されている。しかし、学校施設更新の遅れ、ICT環境の格差、少人数教育の停滞、といった形で、「質」の部分が伸びない。

スタートアップも同じである。

  • 制度はある
  • だが予算が小さい
  • スケール支援が弱い

結果として、「最低限はやるが、本気ではない」という状態になる。


この構造の原因=ハコと人の関係

この構造の原因は明確である。

ハコものの予算を削ろうとすると、契約があり、作ってしまうと政治的責任が生じ、途中で止めると損失が大きい、ということで現政権の問題となってしまう。

一方、人への投資は、先送りできて、成果がわかりにくく見えにくい、政治的にも説明しにくいため、削りやすい傾向にある。

結果として、 固定費=万博・IR、 調整費=教育・人材・起業、という構造が生まれる。

これは企業で言えば、社屋ビルは建て続けるが、研修費や研究開発費を削る、という状態に近い。

短期的には成立するが、長期的には競争力を失う。

福岡市との違いに見る「意思」

ここで政令指定都市である福岡市との比較をしてみよう。

福岡市は、スタートアップ支援:約5.8億円、一般会計比:約0.051%と、大阪よりも比率が高い。

しかもその中身は、

  • 拠点運営
  • グローバル展開
  • ソーシャルスタートアップ
  • 官民連携

と、明確に「起業を都市戦略の中核」に置いている。

一方の大阪は、「やってはいるが、中心ではない」。この差は金額以上に大きい。

万博・IRと本来つながるはずだった未来

本来、万博やIRはスタートアップと強く結びつくはずであった。

・エネルギー、防災、モビリティ、観光×デジタル・・・。

これらの分野で、地域発のスタートアップが実証し、成長し、産業化する。そうなれば、万博のレガシーは「建物」ではなく「仕組み」になる。

しかし現実は、地域企業ではなく外部や海外企業主導であり、かつハード中心となっていた。残念ながら、万博終了後に残るのは使わなくなったインフラだけである。

市民が感じる「じわじわとした不安」の正体

多くの市民が感じている違和感は、決して気のせいではない。

それは、

  • 生活は維持されている
  • しかし良くもなっていない
  • 万博の恩恵も特になかった
  • 未来への期待が薄い

という感覚である。

これは、

👉「未来への投資が弱い都市」

に共通する特徴である。

削られているのは「人の可能性」

万博・IRによって何が削られているのか。

それは福祉でも教育でもない。もっと本質的なものだ。

「人の可能性」

である。

  • 起業の機会
  • 挑戦の環境
  • 成長の支援

これらが細ると、都市は静かに衰退する。

しかもそれは、すぐには見えない。
気づいたときには、人も企業も流出している。

都市は、何にお金を使うかで決まる。

大阪はいま、

万博・IRという「見える未来」を選んでいるのか、
それとも人材・教育・起業という「見えない未来」を選ぶのか。

その分岐点に立っている。

そしてその選択は、すでに予算の中に表れている。

だが残念ながら、その選択肢すらみせることなく、
副首都や3度目の大阪市廃止論議を進めようとしている現政権での運営が続く。

しかし、だからこそ問う必要がある。
この支出の先に、どんな大阪をつくるのか。

それを問い続けること自体が、
市民にできる最も重要な都市参加なのである。

<山口 達也>

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