ひとつの窓口やフロアで、複数の手続きなどを済ますことができること
前回少し紹介したように、枚方市では、昨年(2024年)9月に新庁舎の設備や機能についての市民アンケートを実施しており、その結果が公開されている。
新しい市役所本庁舎の整備に関する市民アンケート等の結果について
今回は、そのアンケートから市民の意見を見ていこう。
アンケートの目的として、次のように述べられている。
市では令和3年(2021 年)3月に、新しい市役所本庁舎整備の指針として、理念や導入する機能、施設規模などをとりまとめた「枚方市新庁舎整備基本構想」を策定しました。この基本構想に基づき、新しい市役所本庁舎に導入する機能や規模などの具体的な検討を進めており、「(仮称)枚方市新庁舎整備基本計画」の策定に向けて取り組んでいます。
今回、基本計画の策定に当たり市民の皆様からご意見をお伺いし、今後の検討に活かしていくことを目的に、アンケート調査を実施したものです。
調査対象は、住民基本台帳から無作為に抽出した18歳以上の枚方市民 3,000人
調査票による回答とWebアンケートフォームによるもの。
回収数 1,245 件
回収率 41.5 %
男性 41.0%
女性 56.0%
その他 2.9%
アンケートの前提としている「枚方市新庁舎整備基本構想」の中で「めざすべきまちづくり」として示されているのは下記の2つの図だ。


現在市役所本館、別館、保健所などのある場所が④街区とされているところ。
北河内府民センターと消防署(図では「行政施設」の文字で隠れている)があるのが⑤街区
市長案では、⑤街区を大阪府から買い取り、市役所機能をに新庁舎を建て移転。
保健所は今年7月に「枚方市駅」から徒歩約15分の旧保健センター跡地に移転している。加えて消防署も新庁舎建設のため移転させる計画を進めている。
もともと市役所や保健所のあった市有地を民間に売却。民活により、まちの賑わいづくりを行い駅前の活性化を図る、という。
この構想に対して市民からの意見は次のようになっている。
新しい市役所本庁舎整備で優先すべきこととして、あなたの考えに近いものについて、あてはまる番号を選んでください。(4つ以内)
1位 「ひとつの窓口やフロアで、複数の手続きなどを済ますことができること」56.9%
2位 「市役所本庁舎に行かなくても、自宅近くの支所やインターネットなどによリ様々な手続きができる環境が整っていること」54.1%
3位 「防災に配慮され、災害時に情報収集や指揮伝達などの対策本部機能を十分に有していること」51.3%
自由記述には、
利便性が良く、枚方市駅から近く、現状より遠くならないこと
駅から近くて徒歩で気軽に行けること
高齢者や障害者、妊婦等のために枚方市駅に今よりも近い場所(もしくは直結!!すべき)
など、枚方市駅の近くや駅に直結、駅から徒歩5分など、駅ちかを希望する記述が多くある。
バリアフリーへの対応。わかりやすい案内。非常時もサービス提供可能であること。省エネ、省資源に対応し自然エネルギーの利用や長期間運用可能なこと。

デジタル技術の進展により、今後ますます、インターネットを通じた「行政手続き」(各種申請など)が可能となることが想定される中、あなたの考えに近いものについて、あてはまる番号を1つ選んでください。
パソコンやスマートフォンなどによりインターネットを通じて、市役所本庁舎や支所などに行かずに行政手続きを完了したい
合計52.5%
「技術的に可能であっても、市役所本庁舎で、市職員と対面で必要な行政手
続きを完了したい」
「インターネット環境が整っていない方や技術的に難しい方のために自宅から近い支部で対面での行政手続きもできるようにする必要がある」といった意見も出されている。
インターネットでの対応は必要だとしても、利用できない環境の人もいれば、あらゆる障害への対応がネットだけでできるわけでもない。そうした場合のきめ細かい対応が求められるだろう。

「付帯施設」の導入を検討しています。そこで、以下のうち、新しい市役所本庁舎にあれば利用したいと思うものについて、あてはまる番号を選んでください。(3つ以内)
・「飲食スペース(カフェ、食堂など)」51.2%
・「市民が利用できるスペース(フリースペースなど)」43.9%
・「子育て支援となる施設(子どもが遊べる施設など)」28.5%。

新しい市役所本庁舎に関する自由なご意見やご提案をお聞かせください。見出し
【主なご意見・ご提案】
〈防災機能について〉
・建物の老朽化が目立ち、大規模な災害が起こった場合に不安である。
・南海トラフ等の災害が想定される中、早急に市役所を建設してほしい。
〈窓口機能について〉
・各部署で待つ時間が長い様に思う。スピーディな対応お願いしたい。
・転居ひとつでも、多くの課を回らなければならないのは、市民及び来庁者に不親切だと思う。
・インターネットやスマホなどで手続きを完了できるようにしてほしい。
・待合時のスペースや通路が狭く、少し閉塞感を感じる。
〈執務機能について〉
・業務効率が上がることを念頭にオフィスを設計したほうがいいと思う。
・デジタル技術の充実により、職員の勤務体系を見直した方がよい。(在宅勤務の導入など)
近年頻発している地震や水害などに対する意識が浸透しているのだろう、防災機能の充実を求める声が多くみられる。
先日(2025年12月21日)開かれた「伏見市長が駅前再整備の魅力を語る会」において、駅前再整備と新市庁舎整備について、伏見市長は次のような課題があると説明している。
これらの課題解決は、市長案の⑤街区移転、④街区にある市有地の民間活用でしかできないのだろうか。
保健所が移転され、続いて消防署も移転させることは、かえって市の機能の分散化が進むのではないか。
できない理由を並べれば市民は納得するとでも?
当日の市民からの要望には次のような声があったという。
市民の声に対し、伏見市長の対応は
など。
④街区に新庁舎を建てるとまちづくりができないという発言なのだが、そのまちづくりの詳細はなにも提示されてはいない。
「庁舎の位置が決まってから、それからまちづくりを進める。」という説明なのだが、これでは市民は納得できないだろう。
また、④街区新庁舎案では狭いというのだが、市民の言うように高層にすれば解決できる部分もある。
⑤街区の方が防災拠点として有利というのだが、実際は防災の司令塔としての「拠点」ではなく、物資集積所の駐車場が緊急交通路からアクセスが容易なほうがいい。それを言うなら、市庁舎に隣接している⑤街区にある消防署をなぜ移転させることになるのだろうか。実は消防署の機能充実のため、現在より敷地を拡大したいという希望がある。それであれば、⑤街区の府有地を活用する方が理にかなってはいないか。
なぜか市長説明は、市長案に出なければならないこじつけのようにしか聞こえない。
実は、土地利用については次のような意見が都市開発や公共建築の設計を手掛けている一級建築士から出ているので、少々長くなるが紹介しようと思う。
④街区の保健所跡地(市有地)は、民活よりも⑤街区の国有地(税務署、旧区検察庁)と土地交換すれば、公有地がまとまる。
現簡易裁判所(国施設)は市有地に建設されており、借地料(国→市)が発生している。
一方、現在民有地に立つ中部別館は、枚方市が借地料を支払っている。
市有地でまとまった⑤街区に現在借地に建つ中部別館を移転すれば、将来にわたって支払い続ける借地料がゼロにでき、長年の課題でもある所有権の整理が実現する。
単なる民活では国庫補助金は得られないが、この土地利用案を「市駅周辺再整備事業」に組み込めば、土地取得や施設整備に補助金(社会資本整備総合交付金等)を導入することもできる。差額精算金も、市民の税金だけに頼らず国費で賄うことも可能となる。
市民にとって利便性が高まり、金銭的な負担の軽減にもなる。
借地解消の課題解決、機能を集約する効率化は、都市再生緊急整備地域として求められていることなので、補助金の得点率も高くなる。
緊急交通路からアクセスの良い⑤街区の市有地に消防署と訓練施設、土木部署、物資集積場など、防災関連施設を集約して効率化。
③街区の行政サービスの出張所(府民センターも同様)が使いにくい原因は、商業施設内に同居しているから。商業の意匠と行政のわかりやすさは両立しない。商業、公共は動線を分け、建物だけ合築した複合施設として計画していれば、このような問題は発生しなかった。
売却よりも等価交換等で土地の集約などで利用価値を上げる方が、公的な土地活用として理にかなっている、というわけだ。
さて、伏見市長が市長案にこだわり続ける限り、市民や議会との合意を得られるとは思えない。府有地の購入額や市有地の売却金額、また当てにしている補助金も含めて、様ざまな制度上の制約や土地の権利者の都合などが横たわっているので、そう簡単にプランくりができるとは思えない。しかしながら、現在のように突っぱねるだけでなく、少なくとも合意が図れるように代替案を考える必要があると思う。
市の考えとしては、議員の意見も取り入れて5つの代替案を作成し、建築や道路の問題などを確認の上、概算費用もあわせて来年の1月以降に発表するとしている。
現在集約された市民の意見だけでなく、小さな子どもから高齢者、障がい者、外国人といった多様な市民に対して優しい「ユニバーサルデザイン」の視点を取り入れる、あるいは庁内受付にAIエージェントなどの配置で、すぐに正しい手続きがわかるといった、テクノロジーの使い方への工夫も必要と思われる。
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