枚方市駅前再開発問題を考える<3>

再開発問題進化する自治 vision50
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都市核という理念なき再開発

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京阪枚方市駅前

枚方市駅前再開発をめぐる議論を聞いていると、
ある共通した違和感に行き当たる。

タワーマンションの是非。
市有地売却の是非。
条例手続きの是非。

論点は多い。だが、どうにも噛み合わない。

その理由は単純である。
「この都市の中心はどこか」という問いが、最初から置かれていないからだ。

再開発とは、本来「中心をつくり直す行為」である。
中心が定義されていない都市で再開発を行えば、計画は必ず漂流する。

いま枚方で起きているのは、まさにその状態である。

老朽化は明らかだが、更新の物語が存在しない

枚方市役所の老朽化は、もはや誰の目にも明らかである。

  • 建物の耐震性
  • 設備の更新限界
  • バリアフリー対応
  • 動線の非効率性

これらは、部分改修で解決できる段階をすでに越えている。

市民会館は駅北西部に新築されたが、元の旧市民会館もまた、
「かつての都市文化の象徴」としての役割を終え、
その後の扱いが宙に浮いたままになっている。

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旧市民会館小ホールで現在は第3分館で一部利用

重要なのは、
老朽化そのものが問題なのではないという点だ。

問題は、

老朽化した公共施設を
「どんな都市像に向けて更新するのか」
という物語が存在しないことである。

点で語られ、面で構想されてこなかった公共施設

市役所、旧市民会館、駅前広場、公共空間。
これらは本来、一体の都市核(シビックコア)として設計されるべき存在である。

ところが枚方では、
それぞれが個別案件として扱われてきた。

  • 市役所は「庁舎の更新問題」
  • 市民会館は「文化施設の老朽化問題」
  • 駅前は「商業の衰退問題」

それぞれの“正解”を足し算すれば、
都市の中心が自然に立ち上がる、
そんな楽観がどこかにあったのではないか。

しかし、都市は足し算ではできない。
中心とは、意図的につくらなければ生まれないものである。

「中心候補」が多すぎる枚方市

枚方の都市構造を眺めると、
“中心になりそうな場所”はいくつも存在する。

  • 枚方市駅前
  • 市役所周辺
  • 樟葉(大型商業核)
  • 長尾(JR沿線拠点)

これは一見、多核都市としての豊かさのように見える。

しかし人口減少時代において、
中心が多い都市は、すべてが中途半端になるリスクを抱える。

どこも完全には捨てられない。
だが、どこにも本気で集約できない。

その結果、

  • 公共投資が分散する
  • シンボルが育たない
  • 市民の「ここが中心だ」という共有認識が生まれない

枚方は、まさにこの状態に陥っている。

都市核を定義しないまま再開発だけが動く危うさ

中心を失っている都市を観察すると共通する特徴がある。

それは、
都市核の定義が曖昧なまま、事業化だけが進んでいることだ。

枚方市駅前の再開発も同じである。

  • 駅前を中心にするのか
  • 行政機能を中心にするのか
  • 商業集積を中心にするのか
  • それとも分散型を選ぶのか

この問いに答えないまま、
「とりあえず再開発」という発想で進めれば、
計画は必ず迷走する。

市民が納得しないのも当然だ。
行き先が示されていない船に、
乗るかどうかを問われている
のだから。

なぜ「市役所移転論」が何度も浮上するのか

都市核の定義がない都市では、
ある現象が繰り返し起こる。

それが、
「移転すれば解決する」という短絡的な発想である。

市役所を移せば、中心ができるのではないか。
駅前に持っていけば、賑わいが戻るのではないか。

だがこれは、
原因と結果を取り違えている。

中心があるから施設が集まるのであって、
施設を動かせば中心が生まれるわけではない。

枚方で移転論が繰り返されるのは、
都市核をどうつくるかという議論を、
避け続けてきた結果
でもある。

老朽公共施設は「都市の意思」を映す鏡

市役所や市民会館の老朽化は、
単なる建築の問題ではない。

それは、
この都市が「何を大切にしてきたか」
「何を更新せずに放置してきたか」
を映し出す鏡
である。

  • 行政機能をどう位置づけてきたのか
  • 市民文化をどこに置いてきたのか
  • 駅前を都市の顔として扱ってきたのか

これらの問いに、
枚方はまだ明確な答えを出していない。

だからこそ、
再開発の議論は常に「施設論」に引き戻され、
「都市論」に昇華しない。

いま必要なのは「再開発」ではなく「都市核の宣言」

ここまで整理すると、
枚方が直面している本質的な課題は明確になる。

それは、
どこを都市の中心とするのかを、市として宣言していない
という一点に尽きる。

  • ここが枚方の中心である
  • ここに公共機能を集約する
  • ここを歩いて楽しい場所にする

この意思表示がなければ、
どんな再開発手法も空回りする。

単に市役所を建て替えても、
タワーマンションを建てても、
都市の重心は生まれない。

そして、その概念を市民と共有しない限り、
そもそもの意味を見失ったままの再開発になるのは自明である。

第3回のまとめ

枚方市駅前再開発が迷走する理由は、
タワーマンションでも、市有地売却でもない。

都市核をどう定義するかという問いを、
長年、先送りにしてきたこと
にある。

老朽化した市役所と旧市民会館は、
「更新しなければならない建物」であると同時に、
都市としての意思決定を迫る存在でもある。

次回、第4回では、
市役所を139号線南側へ移すという計画が、
なぜこれほどコンセンサスを得られていないのか

その構造を丁寧に解きほぐす。

<山口 達也>

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