枚方市駅前再開発問題を考える<1>

再開発問題進化する自治 vision50
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戦後駅前再開発からデパート文化の盛衰までの70年史

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枚方の名勝(第13回)枚方の街を創った京阪電車 から引用

枚方市駅前はなぜ“ターミナルなのに衰退した”のか。
枚方市駅前の再開発は、いま大きな岐路にある。
市有地の売却、タワーマンションの誘致、市役所移転の議論……。
だが、この“現在の混乱”だけを見ても、本質は掴めない。

なぜなら、枚方市駅前は 「ターミナルでありながら衰退」しているという全国的にも珍しい歴史を持つからである。
駅前は本来、都市の顔であり、成長エンジンであるはずだ。
にもかかわらず、なぜその役割を果たし切れなかったのか。

その答えは、戦後から現在までの70年の連続した“都市の物語”の中にある。

戦後の駅前再開発──枚方は関西の“優等生”だった

戦後復興期、枚方市駅前は京阪本線の主要ターミナルとして再編されていった。
京阪百貨店が開業し、商業施設が連なり、駅前広場整備も進んだ。

当時の都市計画の文脈でいえば、
「鉄道ターミナルを中心に都市をつくる」という王道路線である。
人口も右肩上がり、郊外住宅地も拡大し、枚方は大阪・京都のベッドタウンとして黄金期を迎えていた。

駅前に行けばなんでも揃う。
商店街はにぎわい、人がぶつかるほどの人流があった。
市民の記憶にも、駅前は “まちの中心”として刻まれている。

つまり、最初から市駅前が弱かったのではない。
むしろ順調に繁栄した時代が確かに存在していた。

高度成長が生んだデパート文化と駅前文化

1970〜1990年代、全国的に“駅前=商業の中心”という構造が定着した。
枚方市駅前もその波に乗った。

  • 京阪百貨店の安定した集客
  • 商店街の多様化
  • 駅前で待ち合わせをする文化
  • バス交通の結節点としての機能

この時期、枚方市駅は「北河内の中心地」として一定の地位を確立していた。

T-SITE登場よりずっと前から、
駅前は文化・買い物・人の交流が渦巻く“社会的空間”だったのである。

では、なぜこの場所が、後に衰退してしまうのか。

モータリゼーションと“商圏の弱さ”が駅前を直撃

駅前が衰退した都市は全国に多いが、
枚方の場合は“立地上の強み”があるにもかかわらず衰退した点が特徴的である。

その主因は次の三つである。

① モータリゼーションの進展
車社会が急速に広がるにつれ、商業の中心は
「駐車場が広い郊外型ショッピングセンター」へと移行した。

枚方でも、国道1号線沿いのロードサイド商業が増え、人々は車で買い物をするようになった。これが駅前の客足を大きく奪った。

② 商圏の弱さ(=“ちょうど中間”という宿命)
枚方市は大阪と京都という巨大商圏の間に位置する。
これは鉄道アクセスの強みでもあるが、商圏が独自に膨らみにくい構造的弱点でもある。

  • 若者は梅田や京都へ
  • 家族連れはくずはモールへ
  • 専門買い物は難波・京橋へ

「枚方だけで完結する理由」が弱く、駅前商業を支える地元の市場規模が限られていた。

③ くずはモールの吸引力
枚方最大のショッピングセンターであるくずはモールは、駅前商業よりも大きな規模を持つ。

  • 駐車台数
  • テナント数
  • ファミリー層の吸引力
  • 雨天でも回遊可能な環境

これにより、駅前は“日常の玄関口”としての機能に留まり、
商業の中心としての地位を徐々に失っていった。

「ターミナルなのに廃れた」という現象

本来、鉄道ターミナルは都市の心臓部である。乗降客が多く、人が動き、店が集まる。しかし枚方市駅は
「ターミナルであるにもかかわらず衰退する」という逆転現象が起きた。

その理由を一言でいえば、

“都市の心臓部として育てる”という長期ビジョンが欠けていた

からである。

さらに駅前は商業に任され、駅近にも関わらず市役所・市民会館などの公共施設は別の場所で育った。
つまり、「駅前=公共+商業が融合する都市核」という構造をつくらなかった。
この構造的ねじれが、現代の問題へとつながっていく。

衰退した駅前に持ち込まれた“再開発の2つの論理”

2000年代以降、駅前の衰退が顕著になると、行政が採ったのは再開発による活性化であった。しかし、ここで重要なのは、
「駅前がなぜ衰退したか」という原因分析よりも、
“財源としての市有地売却”を優先しようとしている
点にある。

具体的には、

  • 駅前の市有地を売却する
  • その収益で再開発を進める
  • タワーマンションを呼び込み人口を増やす
  • 賑わいを創出する

という、全国で使い古された再開発パッケージを採用しようとしているのだ。

しかしこの手法は、人口減少時代の郊外都市で成功する例は少ない。
にもかかわらず、この方向で条例化が進められつつある。

この“財政論と人口論に偏った再開発の論理”が、混乱を呼んでいくのである。

第1回のまとめ

枚方市駅前は、戦後には成長し、繁栄していた。
だが、商圏の弱さとモータリゼーション、そして都市核としての育て方を誤った結果、“ターミナルなのに廃れた”という歴史を歩むことになった。

そして現在、再び再開発が動き出したが、方向性は“財源とタワマン誘致”に寄っていこうとしている。

本来問うべきは、
「駅前とは何か」「都市核とは何か」「枚方の中心をどこに置くのか」
であるはずだ。

次回、第2回では
「なぜ現在の再開発が“タワマン+市有地売却”に流れようとしているのか」
──その条例づくりの裏側と構造を読み解く。

<山口 達也>

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