地区防災計画04:紙の計画を日常に組み込むこと

進化する自治 vision50防災・減災
この記事は約4分で読めます。

vision50の防災からは、これまでの概論から、実際に地区防災計画を作っていくということに段階を移していきたい。そのために必要な視点は、地域から何を積み上げていくのかという点と、内閣府からの「みんなで作る地区防災計画」というトップダウンだ。その最終話。

防災計画をいかに活きたかたちにしていくか

まだ更新の途である地区防災計画の見直しであるが、見直しが一過性のイベントとなってしまって、完成した地区防災計画を棚にしまってしまうようでは意味がない。
むしろ、計画が息をするように地域の生活の中に組み込まれることが重要なのであり、そのためには「特別な行事」として防災を切り離すのではなく、すでにある地域活動にうまく重ねていくことが鍵になるのではないだろうか。
特に町会や地域活動協議会は、リニューアルを望みつつも新しいことには躊躇しがちだ。重要だとわかっている防災への取り組みも、それ単独での行事にしてしまうと単にイベントごとが増え、負担意識も高まってしまう。

年中行事とセットにすることを考える

町会の総会や盆踊り、防災訓練など、地域にはすでに人が集まる機会がある。その場に「計画点検の時間」を10分でも差し込んでみてはどうだろうか。たとえば盆踊りの前に避難所の鍵を確認する、総会で「安否確認リスト」の更新を回す。そうすれば、防災は日常の延長として動き続ける。

避難訓練を大規模に行うのは大変だ。しかし「地震で停電が30分続いたら」というような小さなシナリオを用意し、役員会や子ども会で試してみるのはどうだろうか。机上で「この場合は誰がどう動くか」を確認するだけでも計画は一気にリアルになる。実際に動いてみれば、机上では気づかなかった穴も見えてくるのではないだろうか。

ただしこのあたりは、取ってつけたような防災感覚の「植え付けのようなイベント化には」、地域は微妙に反応する。

「やっても意味がない」「面倒くさい」「そんなにやりたいなら別にやれ」

すぐにでもそんな声は聞こえてきそうだ。
重要性は理解できる。しかし今までにない「妙な植え付け」に見えてしまった瞬間にその試みは足元を観られてしまうため、最新の注意が必要だ。
これは地域でいろんな動きをやっている方々との連携が不可欠である。

引き継ぎというチャンス

地域の役員や防災担当は毎年変わるのが理想だが、多くの場合、役員がローテーションしているだけだったり、長い間、同じ役職が続いていたりする場合が多い。
そもそも役員を引き受ける人材が不足していることが多いからだ。
そこで重要なのが次の人に引き継いてもらう仕組みである。
しかし、この引き継ぐ仕組みが弱かったりなかったりする地域も少なくない。
その際、まずは「1枚の引き継ぎマニュアル」があれば十分かもしれない。鍵の保管場所、連絡網の入り口、行政との窓口など、最低限のポイントをまとめておけば、新しい担当者も迷わず動けるしペライチのマニュアルならなんとか履行してもらえそうだ。
この引き継ぎを面倒な大変なものと思わず、防災意識を広めるチャンスとしてみなせないだろうか。新しいことは、こういった動きの端緒から始まる。

行政の動き

行政もまた制度や助成金を毎年更新している。こうした情報を住民側でキャッチし、計画に反映していくことも必要であろう。大阪市の場合は本来各区にある「まちづくりセンター」がその機能を担っているはずであるが、実際は防災訓練を補助する程度でなかなかサポートできているとは言い難い。また大阪市の場合、防災に絡む予算については、地域活動協議会補助金の中に計上されているが、殆どの場合、地区防災計画の見直しについての予算化は難しい膠着した内容となっている。

https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000263908.html?utm_source=chatgpt.com

大阪市福島区野田地区では、年に1人ずつ地域で活動する「防災士」受験費用を町会の費用から捻出しているが、本来、地域のマンパワーをどう担保しているのかということについて、もう少し行政側も仕組みとして取り組むべきである。

「更新すること」自体を目的へ

地区防災計画は完成した瞬間から古び始める。多くの地域では、一度10年前に作った地区防災計画は更新されていない。
だからこそ「更新すること」そのものを目的にする必要がある。
年に一度、地域の集まりで「計画を見直す」ことをイベント化したり、ゲーム化したりすることで、計画は常に新しく書き換えられていける可能性を持つ。
完璧を目指すのではなく、常に動き続けている状態こそが大切であろう。

地区防災計画を俯瞰したこの4回シリーズはこれで最終話となるが、次回からは、現時点での防災計画を更新していくことに挑戦している様々な地域やその試みについてレポートしていく予定である。

<山口 達也>


    【ucoサポートのお願い】
    ucoは、大阪の地域行政の課題やくらしの情報を発信し共有するコミュニティです。住民参加の行政でなく、住民の自治で地域を担い、住民の意思や意見が反映される「進化した自治」による行政とよって、大阪の現状をより良くしたいと願っています。 ucoは合同会社ですが、広告収入を一切受け取らず、特定の支援団体もありません。サポーターとなってucoの活動を支えてください。いただいたご支援は取材活動、情報発信のために大切に使わせていただきます。 またサポーターとしてucoといっしょに進化する自治を実現しませんか。<ucoをサポートしてくださいのページへ>

    シェアする
    タイトルとURLをコピーしました