行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-2

市民と市政
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「住民の関与」が「市民自治」につながるか? 日本で導入された事例から考える

地方分権改革を起点に始まった地方行政の変化とともに

  1. 予算編成過程の公開  編成過程での情報公開と市民意見の収集・反映   参考:全国市民オンブズマン連絡会議「予算編成過程・住民参加状況調査」 (予算編成過程=予算要求・予算査定段階での情報公開、住民参加=意見を述べる手段の有無や意見の公表、回答の公表 など)
  2. 市民委員会による予算案の作成(現在は行われていない)     例:志木市「市民委員会」設置と「市民予算編成」 (市民委員会は公募。情報は行政各部署が提供、それに基づき予算のムダを分析して積算の増減の可能性を検討 (優先順位ではなく変更可能性を提示)、市民予算説明会で行政の予算案とともに公表)
  3. 予算の一部を自治体地区に交付 例:名張市ゆめづくり地域予算制度
  4. 市民活動団体への支援 例:和泉市あなたが選ぶ市民活動支援事業(R2まで)個人住民税1%を市民投票により補助 市民税1%相当額を予算枠とし、その配分を市民活動団体への市民の投票で決める
  5. 市民提案事業  予算前にNPOから事業提案を受ける 例:千葉県「パートナーシップ市場」(現在は廃止、詳細不明) 成功の要因(兼村2024「再び住民参加予算の登場と今後の展望」) ※これらの取り組みの一部(③類似の取り組み)や、日本版BID(業務地区、商業地区の事業者についての合意をとったうえで、エリアマネジメントのための費用を徴収して使うしくみ)、ふるさと納税がPB World Atlasでは参加型予算類似の仕組みとして扱われたこともあったが、2020年版では外されている(「ポルトガルにおける参加型予算の制度と実践」藤原 遥 2023年)
日本での市民参加型予算は、政府以外の主体が課題解決するためのスキームを含んでいるが、国際的にみれば必ずしもそうではない
海外にも事業提案型の市民参加型予算が存在するが、事業提案段階、説明会や投票段階には、行政やNPOなどの関与がある。提案~決定~実行の各段階において市民が参加できるチャネルがあり、参加する機会をつくる多様なしくみが用意されている。
1%支援制度
「1%支援制度」は、一定の条件を満たした市民が、自分の応援したい市民活動団体を選択して届け出ることができ、その選択結果に基づき団体に支援金が交付される制度である。ハンガリーで始まった、自身の所得税の1%を指定した団体に寄付できる制度が発端のため、俗にこう呼ばれている。市民が直接、意思表示をする点がこの制度のポイントである。現在、千葉県市川市、北海道恵庭市、岩手県奥州市、愛知県一宮市、大分県大分市、千葉県八千代市、大阪府和泉市で制度が導入されている。

3つの特徴
1.市民が直接選択する
 地域課題の解決方法を市民活動団体が市民に提案し、その賛同票を得られれば、その分補助金が得られる。
2.多様な市民活動団体に公的資金が流れるルートができる
 従来の補助金という枠組みでは公的資金が流れることがなかった団体に補助金が流れている
3.地域全体を巻き込んだ取り組み
 これまで市民活動とあまり接点のなかった市民もが、参加するチャネルを開く仕組みとなっている

地方分権から都市内分権へを謳う名張市「ゆめづくり地域予算制度」

ゆめづくり地域予算制度
名張市のゆめづくり地域予算制度の交付金内容

【事業例】
70歳以上単身高齢者交流会
小学校新入生に「命の笛」贈呈
ラジオ体操支援
防災関係資機材の整備
給食ボランティア支援
稲作体験教室
防災井戸を活用した蔵清水カフェ
ウォークラリー大会
伝統文化教室(獅子神楽)開催
コミュニティバス運行
放課後児童クラブ支援
道標(案内板)設置事業
くわしくは、webサイト名張市ゆめづくり地域予算制度

出典●「自治体予算編成過程への市民参加」松田真由美(公立鳥取環境大学客員研究員)(調査研究報告 地域生活空間 TORCレポート №26 2004年)

出典●まちづくりに関する日本の参加型予算の現状と可能性 ~NPOをはじめとする市民社会組織による役割を中心に~松原 明、鈴木 歩 
『まちと暮らし研究』 No.13 (一般財団法人 地域生活研究所 2011年6月20日発行)「新しい公共」の社会設計にむけて

出典●「ポルトガルにおける参加型予算の制度と実践」(藤原 遥 福島大学経済経営学類准教授)


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