行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-1

市民と市政
この記事は約6分で読めます。

市民参加型予算から市民自治のあり方を考える

市民参加型予算は公共への市民参加の一形態

NPM(ニューパブリックマネジメント)
新公共経営手法とも呼ばれる。公共部門に民間的経営手法を導入する、行政組織における経営・運営の効率化を図る自治体の行財政改革。
①成果志向、②組織内分権、③市場機構の活用、④顧客志向
を標榜する手法。1990年代半ば以降全国の自治体に取り入れられてきたが、「導入自体が目的化しただけの改革」、あるいは改革の効果を評価する基準がないため、言われているほどの成果がなく「形だけの改革」とも評価されている。
  1. 住民が公共事業の優先順位を決める熟議を行うことで予算編成へ直接的に参加する 例:ポルト・アレグレ(地区ごとの評議会、テーマ別評議会の2系統で議論して、市全体の議論にかける)
  2. 事業アイデアを住民から募ることで予算の使途への関与を深める 例:グルノーブル(岸見2023「フランス、グルノーブルにおける参加型予算の実践」)
  3. 政治的要因との距離を保つ(政治に左右されない意思決定)

市民参加型予算を実現する4つの要因

  1. 市長の強力な支援
  2. 進行中の政策議論に積極的に貢献できる内容
  3. 市民社会、議員の攻撃から参加型予算の予算編成を隔離する政治環境
  4. 財政資金

出典●再び住民参加予算の登場と今後の展望
兼村高文(かねむら たかふみ NPO法人市民ガバナンスネットワーク理事長、金沢学院大学講師)
-自治総研通巻546号 2024年4月号-

  • ブラジル・ペロオリゾンテ市(1993年~現在)
  • ポルトガル・カスカイス市(2011年~現在)
  • フランス・パリ市(2014年)
  • フランス・グルノーブル市(2015年)
  • フランス・レンヌ市(2015年)
  • ドイツ・エバースヴァルデ市(2008年)
詳細は別表の通り
先に引用した「再び住民参加予算の登場と今後の展望」では、下記のような記載がある。

「ポルトアレグレ市の事例では、貧困層を中心とした住民が政府の予算編成プロセスに直接に加わったことで、政府の透明性が高まり汚職が削減され、効率性が確保されたというのである。そしてこのことが達成されたのは、ポルトアレグレ市の当時の状況のもとで可能であったとし、そこでは市民、非政府組織(NGO)、市民社会組織(CSO)の役割が大きかったことが強調されている。」と紹介されている。

すなわち、参加型予算は、市民(住民)が直接政策決定に参加することによって、自治体の事業や予算の決定プロセスがオープン(透明化)になることで、行政への不信感が払しょくされたり、信頼性を築くこともできる。また、行政側だけでなく、地域にかかわる様ざまなステークホルダー[住民、市民活動団体、NPO、民間企業、農家や商店などなど]かそれぞれの視点から意見を出し、熟議を重ねることで、参加者(つまり地域の関係者全員)が納得し合意する成果を得られるということではないだろうか。
そして、このような取り組みを継続し、自治体の制度として確立させるためには、継続させるためのPDCAも必要となってくる。
継続させるためのPDCA
☆計画と熟議=アイデア実現のための議論・支援
☆実施と責任=提案者が実施に参画、責任を担う
☆事業評価=第三者による継続的なモニタリング
☆改善・改革=システム改善や部門の改革
今回は、海外の事例をもとに市民参加型予算がどのような制度かについて文献を中心に読み解いた。次回は、日本国内ではどのような形で導入され、行政、市民それぞれにとって制度の意義や課題などについて調査もとに探っていく。
出典●再び住民参加予算の登場と今後の展望
兼村高文(かねむら たかふみ NPO法人市民ガバナンスネットワーク理事長、金沢学院大学講師)
-自治総研通巻546号 2024年4月号-

ブラジル・ポルト・アレグレ
  出典●「ブラジルにおける参加・民主主義・権力」(松下冽立命館大学国際関係学部教授)

フランス・グルノーブル市
  出典「フランス,グルノーブルにおける参加型予算の実践」(岸見太一福島大学行政政策学類准教授)
ポルトガル
  出典「ポルトガルにおける参加型予算の制度と実践」(藤原 遥福島大学経済経営学類准教授)
ブラジル・ペロオリゾンテ市
  出典「ブラジル・ペロオリゾンテ市の参加型予算」(小池洋一立命館大学経済学部特任教授)
フランス・パリ市
  出典「パリ市における市民参加型予算 」(山口まみ 価値総合研究所主任研究員)


    【ucoサポートのお願い】
    ucoは、大阪の地域行政の課題やくらしの情報を発信し共有するコミュニティです。住民参加の行政でなく、住民の自治で地域を担い、住民の意思や意見が反映される「進化した自治」による行政とよって、大阪の現状をより良くしたいと願っています。 ucoは合同会社ですが、広告収入を一切受け取らず、特定の支援団体もありません。サポーターとなってucoの活動を支えてください。いただいたご支援は取材活動、情報発信のために大切に使わせていただきます。 またサポーターとしてucoといっしょに進化する自治を実現しませんか。<ucoをサポートしてくださいのページへ>

    シェアする
    タイトルとURLをコピーしました