「特別区の仕事」と決めるだけでは、毎日の収集は保障されない
朝、決められた場所に出したごみが収集される。普段は、その後の行き先や、収集車と焼却工場の調整まで意識することはほとんどない。しかし、ごみは集めれば片付くわけではない。運ぶ先に受け入れる能力があり、必要な職員と車両が動いて、初めてまちの衛生が保たれる。
大阪市を廃止して4特別区に分けるとき、この一連の仕事はどう引き継がれるのか。4区でごみ収集を続けるために必要な運営費や、分割に伴う追加費用も示されていない。毎日の収集を支える体制や、処理が滞った場合の調整など、市民が確かめられる説明にはなっていない。
市全体で動かしてきた職員と収集車を、4区でどう動かすのか
9月18日に開催された第9回法定協議会の資料では、家庭ごみの収集輸送、許可業者への許可・指導、特区民泊の廃棄物処理報告の受付、搬入施設の指定などが、特別区の「各区」の事務に配分されている。
現在の収集輸送について、同資料では、本課が作業計画や車両管理、事業所間の調整を行い、事業所が収集作業や車両整備を行うと説明する。組合との連絡調整も、各区が行うとしている。[1]
引き継ぐのは、机上の「事業」だけではない。各特別区が仕事を組み立て、人員と車両を配置し、動かし、処理先と調整する機能であり、そのための予算だ。
4区がそれぞれ収集を運営するのか、共同で運営するのか。職員・車両・環境事業センターをどう配分するのか。ある区で対応できなくなったとき、誰が応援を決めるのか。今回確認した事務分担資料には、これらの具体的な運営条件は示されていない。「各区の事務」という整理だけで、4区の独立運営も、共同運営による継続も確認できない。当然予算の言及もない。
大阪市という一つの自治体による調整をなくすなら、それに代わる体制を示す必要がある。ここを後回しにして、事務を引き継ぐから大丈夫だと言えるのか。
民泊ごみの収集は事業者負担。指導・苦情対応の負担はどう配分するのか
家庭ごみと事業系ごみでは、収集のしくみが異なる。大阪市では、民泊から出るごみを行政収集の対象とせず、事業者が許可業者へ処理を依頼し、費用を負担する扱いとしている。では、4特別区に分割されるとその扱いはどうなるのか。[2]
民泊が多い地域ほど、その収集費がそのまま区の負担になるという話ではない。しかし、適切に処理されているかの確認、家庭ごみへの混入や不適切な排出への対応、業者への指導は行政の仕事である。
事業所や宿泊施設が集中する地域と、住宅を中心とする地域では、必要な対応も同じとは限らない。人口だけで人員や費用を配分してよいのか。4予定区域別の家庭系・事業系ごみ量、民泊由来の量や指導業務の実態を把握し、それを体制にどう反映するのかを示す必要がある。
複数区を回る許可業者の手続や指導も課題となる。各区の許可権限を、共通の手続や運営にどう結び付けるのか。区境を引いても、業者の収集経路や住民の生活環境まで区ごとに完結するわけではない。
焼却は既に共同処理。それでも大阪市の役割は残っている
現在、焼却施設などの建設・管理運営は、大阪市、八尾市、松原市、守口市で構成する大阪広域環境施設組合が担っている。[3] 収集と焼却の主体が分かれること自体は、大阪市廃止で初めて起こるものではない。
現在の体制であっても、大阪市は搬入施設を指定し、組合との調整を担っている。事務分担資料の説明には、ごみ量を基本とする分担金の負担に加え、長期的・安定的な焼却処理体制を組合との調整によって構築する仕事が記されている。[1]
この役割を4区へ分けると、組合との調整はどう変わるのか。施設の停止や処理能力の不足が起きたとき、誰が4区を通じた搬入変更や収集継続を調整するのか。他都市に処理を依頼する必要が生じた場合の判断と、追加費用の負担はどうするのか。
各区が組合に参加するという説明だけでは、こうした事態への対応は判らない。ごみ量に応じた負担と、処分手数料の収入、施設整備費をどう組み合わせるのかも、市民が判断するために必要な情報である。当然ごみ処理費用が、分割された区民にどのような負担となるかは未知数だ。
市民は自分の区に改善を求めても、解決には他区や組合との調整が必要になる場合がある。そのとき、区長は何を決められ、誰が収集から処理までの対応に責任を負うのか。
くらしを支える条件を、廃止を決めた後に回してよいのか
今の資料だけで、ごみ収集が必ず止まると断定はできない。しかし、止めずに続けるための体制・費用・責任を、市民が確認できないという問題は残る。
廃止の日までに検討する時間がある、という説明では足りない。市民が住民投票で問われるのは、大阪市を残すか、なくすかである。4区に分けた後の運営や費用負担が確かめられず、現在の大阪市が持つ調整機能を手放すかどうかだけを先に決めてよいのか。
公表資料に見当たらないことと、行政内部で検討されていないことは同じではない。だからこそ大阪市は、決定済み・検討中・未検討を区別し、試算や協議記録を市民に示すべきである。
問われるのは、4区に分けても、市民のくらしを支える力を維持・改善できるのか、そのためにどんな追加の調整や費用が必要になるのかだ。
その条件を示さず、廃止だけを先に決めさせれば、市民は後から決まる運営や負担を引き受けさせられる。毎日のごみ収集を支える重要事項を未解決・未説明のまま、住民投票へ進むべきではない。
主な資料
- [1] 第9回副首都・大阪にふさわしい大都市制度協議会(2026年9月18日)資料3-2「広域と基礎の事務分担について(資料編)」。「6.環境」印刷頁152・No.166〜175、頁154・No.187。PDF上は153・155頁。
- [2] 大阪市「民泊から出るごみ(廃棄物)の処理について」(2026年5月30日)。行政収集の対象外、排出事業者による処理費負担、一般廃棄物と産業廃棄物の区分等。
- [3] 大阪広域環境施設組合「組合の概要」。構成団体と、焼却施設・粗大ごみ処理施設の建設・管理運営、最終処分等の共同処理を確認


