大阪カジノ住民訴訟で揺れる夢洲-1

市民と市政
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大阪市はカジノ事業者のために788億円もの税金を使うな

市民が行政に対してNOと言える権利「住民訴訟」

市民税が使われる最優先策は、市民の安全と福祉のために使われることだ。しかし、大都市においては都市整備のため、経済成長のためというお題目を唱えて、市民が望まない税金支出が行われる。「安全な土地を提供するのが市の責任だ」などと屁理屈を述べて、カジノ事業者のために夢洲の土壌対策費を支出することを大阪市は予算化をした。このことを発端としてカジノ用地にからむ多くの疑惑が露呈する住民訴訟が始まって3年になる。

税金の使い道について、直接市民が意見を言ったり、採決をできる機会はない。行政の税金の使い方について異議を唱える機会は、いまのところ住民訴訟として訴える以外にない。(行政の手続きとして住民監査請求はあるが、99%認められることがなく、訴訟へのステップと化している)
これまでucoでは、陳情書やパブリックコメントなど、現在の行政法の下で行える市民自治の権利のあり方、使い方などを探ってきた。高校財産無償譲渡事件と合わせて、この大阪カジノ住民訴訟についてもレポートしていく。

夢洲の今後に不安と疑問を抱く市民の声

10月13日、184日間にわたって開かれていた大阪・関西万博が閉幕した。大阪府市は、万博跡地の利用について、2025年6月「夢洲第2期区域マスタープラン Ver.2.0 (案)」を提示し、パブリックコメントの募集を行った。「夢洲まちづくり構想」の一環として今後も夢洲全体について開発が進められるというわけだ。ucoでは大都市における「防災」のあり方や行政、地域、個人それぞれがどのような視点を持てばよいか? というテーマを掲げた様々な情報を掲載している。その視点からは、今後南海トラフ地震をはじめとして発生するであろう大地震のことを考えた場合、湾岸地域にあえて観光施設をつくる、特に地盤が不安定な夢洲に集客施設をつくることは、危機管理を引き受ける立場にある行政の方針として正しい選択とは思っていない。
しかし計画は進められており、夢洲には「夢と創造に出会える未来都市」をつくろうとしている。
夢洲まちづくり構想
夢洲第2期区域マスタープランVer.2.0 (案) [大阪府・大阪市 2025年6月]
夢洲第2期区域マスタープランVer.2.0 (案) [大阪府・大阪市 2025年6月]
この構想の中には、「統合型リゾート(IR)を中心としたまちづくり」を組み込まれており、IRの名前に隠されているが、ここが日本で最初に開業すると言われている「カジノ」になる場所だ。万博の大屋根リングに上ればその北側にクレーンが林立し、そのん設工事が見て取れた。「夢洲に行くことでしか体験し得ない多様なエンターテイメント機能の集積」などとアピールしているのだが、何のことはない「カジノ」ができるのだ。
問題は、このカジノ用地にある。夢洲は大阪湾沖の埋め立て地だ。しかもまだまだ埋め立て年月が浅く、土壌そのものは軟弱で、今後数十年にわたって沈み込んでいくことが明らか。なおかつ大阪湾は世界的にも稀な地層で、これまでそれ以上は沈まないとされていた第二天満層という地下80mほどにある地層そのものが、沈んでいっており、その実態がよくわかっていないのだ。これは関西空港が今も徐々に沈んでいっていることから、大阪湾岸全体で起こることがわかってる。
このような土地を観光集客施設にしようとすることの問題もさることながら、この夢洲ににカジノ誘致をしたために、大阪市が788億円もの予算を使ってカジノ事業者のために土地整備をするということが行われている。
防災面での不安と莫大な税金をカジノ事業者のために支出するという行政に対する不信から、多くの市民が夢洲の今後に疑問を抱いている。

嘘にウソを重ねる大阪市の実態があらわになったカジノ住民訴訟

2016年に「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆるカジノ推進法)が交付されて以来、大阪ではカジノ誘致を巡って様ざまな角度からの問題の指摘が行われ、過去には住民の8割近くが反対しているという調査結果も出ている。
当初万博開幕前の2024年度開業を目指すとされていたが、新型コロナ感染拡大で計画は大幅に遅れ、その間に大阪府が当て込んでいたカジノ事業者の撤退が進んだ。最終的に残ったのはMGMリゾーツ1社のみとなり、そうした中で事業者選定が行われた。そのため競争原理が働かなくなり、大阪府の思惑は大きく外れ、カジノ事業優位に契約が進んでいった。カジノの事業用地は大阪市の保有する夢洲と決定しており、この間松井一郎市長(当時)は、大阪市はカジノ事業に対して税金の支出はしないと発言していた。しかし2021年12月、大阪市会は「土地課題対策費788億円」を市が負担することを決定した。このことを受け、大阪でのカジノに絡む住民訴訟が始まった。

大阪では翌2022年の3月から5月にかけて、カジノ誘致の住民投票条例制定を求める署名運動が展開されていた。カジノに反対する複数の団体がこの署名運動に取り組んでいた。その中のひとり、大阪を知り・考える市民の会を主宰している中野雅司氏が中心となって、「大阪市は土地課題対策費788億円を支出するな」とする住民訴訟が始まった。
2022年7月29日、中野雅司氏を含む5人が原告となって、「借地権設定等差止請求事件」とする住民訴訟が提起された。現在「第1グループ・夢洲IR差止訴訟」と呼ばれている訴訟だ。

ここでは、下記2点について請求をされている。
  • 大阪市長・大阪港湾局長は大阪IR株式会社に夢洲の土地を貸す定期借地権設定契約を締結してはならない
  • 大阪市長・大阪港湾局長は、大阪IR株式会社に対し土地改良事業の費用を一切支払ってはならない
この訴訟が提起されて以降、カジノ用地をめぐっては大阪市によるデタラメな事案が噴出している。
一つは、カジノ事業用地の賃料があまりにも安すぎる設定となった、不動産鑑定をめぐる疑惑。これはのちに官製談合だったのではないかという証拠まで発覚している。

いま一つは、先のカジノ用地の土壌改良をする期間中の土地賃貸料を無償としたこと。これは1月当たり2億1073万0589円*にも上る金額となっている。
※上記の格安賃料を前提とした算出金額

次々と沸き上がる疑惑に対して、新たな住民訴訟が起こされており、現在3つのグループによる6つの訴訟が同じ裁判として進められている。
次回以降、訴訟で争われている論点について、レポートしていく。


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