省エネ・若者・交通がつなぐ、参加するエネルギー
再生可能エネルギーの議論は、発電所や設備の話に偏りがちだ。
だが、能勢町・豊能町で行われてきた取り組みは、エネルギーを「どう使うか」から自治を組み立て直すことに重きを置いてきた。
省エネ、若者、交通。
それらは別々の政策ではなく、地域が一体となって未来を考えるための入口だった。
流出していたエネルギー代はどこへ
かつて能勢町では、年間およそ8億円もの電気代が町外へ流出していたとされる。豊能町では、10億円を超える規模だった。
人口1万人に満たない町にとって、この金額は決して小さくない。
「電気代として出ていくお金を、少しでも地域の中で減らせないか」
この問題意識が、発電だけでなく「使い方」へと視点を向けさせた。
設備投資不要の省エネ
「能勢・豊能まちづくり」が最初に取り組んだ省エネは、大規模な設備投資ではない。
公共施設に入り、一つひとつ現場を確認するところから始まった。
たとえば――
・自動ドアが同時に開き、冷暖房が逃げていた施設
・必要以上の換気が続いていた庁舎
・空調があまり効率のよくない設定のままになっていた学校
「ここ、閉めたらどうですか」
「この設定、変えるだけで十分ですよ」
そんな小さな調整だけで、電力使用量が2割、場合によっては4割近く下がった施設もあった。
しかも、ほとんどコストはかかっていない。
ワークショップが、省エネを「自分ごと」にした
重要だったのは、省エネを「指示」ではなく「対話」で進めたこと。
職員や教職員と一緒に現場を歩き、
「なぜこうなっているのか」
「変えたらどうなるか」
を共有する。
小学校では、簡易シェードを窓に設置するアイデアが採用され、
夏場の電力使用量と室温上昇の両方を抑えることができた。
省エネは、「節約」ではなく「暮らしを良くする工夫」として受け止められていった。


画像提供:株式会社能勢・豊能まちづくり
はじめから町のパートナーだった若者たち
能勢町で若者がエネルギーや地域づくりに関わってきた歴史は、「能勢・豊能まちづくり」が設立される以前から続いている。
町内に一校しかない高校――大阪府立豊能分校は、町にとって「未来をつくるキーマン」と位置づけられてきた。
かつて高校生たちは、過去にドイツ・ブリロン市を訪れ、シュタットベルケ(エネルギーを軸に公共サービスを担う公企業)の姿を学んでいる。
それは単なる海外研修ではない。「自分たちの町にも、できることがあるのではないか」という視点を育てる時間だった。
交通からエネルギーへ
通学バスの廃止や坂の多い地形は、高校生にとって切実な課題だった。バスがなくなって、通学が自転車でもすごいしんどいと。電動自転車を使いたいという話も上がってきた。そこで、大阪大学と東京大学の交通の専門家と一緒に、国際交通学会の研究プロジェクトとして提案した。企業として、単に電動自転車(Eバイク)を寄付する方法もあったが、実証研究としてEバイクを導入し、地域の交通、自分たちの交通、通学以外の交通を良くすることができないかという、ESD、SDGsの研究プロジェクトを3年間実施した。

画像提供:株式会社能勢・豊能まちづくり
Eバイクを使った実証では、生徒自身がカメラを付けて走り、
・危険な場所
・暗い区間
・改善が必要な道路
を記録し、町に提案した。
さらに、「このEバイクを再エネで充電できないか」という問いが生まれる。
エネルギーは、発電所の話ではなく、自分たちの移動と暮らしの延長線上にあるという気付きにもなっている。

画像提供:株式会社能勢・豊能まちづくり
「地域のエネルギー専門家」という立ち位置
「能勢・豊能まちづくり」は、自らを「まちづくり会社」と位置づけている。
「まちづくりをやるために、電気の仕事をしている」
「ローカルシンクタンクであり、ドゥタンクでもある」
電気事業を通じて得たノウハウは、省エネ、再エネ、補助事業の企画、研究プロジェクトへと広がっていく。
電気事業そのもので稼ぐことが目的ではない。
電気事業があるからこそ、先進的な実践と研究に関われる。
町と会社が「共に進む」段階へ
かつては、「外から来た事業者」と見られることもあった。
だが今では、町の計画づくりや環境教育、脱炭素に向けた実践の相談先として、名前が挙がる存在になっている。
町もまた、この会社を「使う側」ではなく、一緒に未来を考えるパートナーとして受け入れ始めている。
発電の「つくり方」を制御し、消費の「使い方」を共有する。
その両方がそろったとき、エネルギーはほんとうに地域のものになる。
「能勢・豊能まちづくり」が描くのは、エネルギーをきっかけに、人が集まり、学び、選び続ける町の姿だ。
自治は、遠い制度の話ではない。
スイッチをどう入れるか、どこへどう移動するか、そんな日常の選択から始まっている。
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