前回の基礎知識を踏まえ、第2回では具体的な事例として枚方市の現状を検証します。現在、枚方市駅周辺再整備計画が進められていますが、都市全体の安全を確保するという観点から、いくつかの重要な懸念点が見えてきます。
1. 水害対策と、見落とされがちな「火災リスク」
枚方市は淀川に隣接しているため、水害への意識は非常に高いですが、「地震に伴う市街地火災リスク」への視点が不足しているように感じます。防災とは「あらゆる災害を想定した総合的な判断」が重要です。一つの災害を避けた結果、別の災害に対する守りが弱くなっては意味がありません。
特に災害リスクが高いと認識されているのが、道路幅が狭く、古い建物が密集している川原町の飲食店街です。地震発生時にいかに迅速に「初期消火」を行い、「避難場所」を確保するかが、生死を分ける問題となります。

2. 消防機能の移転と計画の不合理性
現在、駅周辺の再整備に伴い、老朽化した市役所と消防署の建て替え計画が進められています。しかし、現在の計画では消防署を市街地から遠く離れた中宮北小跡地へ移転させる方針となっています。
都市計画の観点から見れば、これは極めて不合理な計画と言わざるを得ません。
最も火災リスクの高いエリア(川原町)から消防機能を遠ざければ、初期消火が遅れ、延焼が広がる恐れがあります。地震による道路寸断や看板の落下などを想定すれば、遠隔地からの救急・消防車両の到着は困難を極めるからです。

3. 「技術」で克服する水害と、「立地」が命を分ける火災
「水害リスクを避けて高台へ」という視点は一見正しいように見えますが、特定の災害だけを避けるために、火災や救急対応の遅れを招いては本末転倒です。
都市防災において重要なのは、あらゆるリスクを想定した上での「総合的な判断」です。
ここで参考にすべき先進事例が、千葉市役所の新庁舎です。
千葉市は浸水リスクに対し、高台へ移転するのではなく「駅前立地での技術的防護」を選択しました。
[浸水対策] 建物全体を周囲より約1m高くする「高床化」を施し、さらに1階の開口部には「耐水シャッター」を設置して浸水を遮断します。
[重要設備の配置] 万が一の浸水に備え、電気・機械室などの重要インフラは被害予測を上回る上層階に集約。
[垂直避難ルート]駅から直結するペデストリアンデッキを、地上レベルが冠水しても安全に新庁舎へ移動できる「命の動線」として活用。
このように、水害リスクは建築技術と工夫で克服が可能です。しかし、火災の被害を抑えるための「到着時間」は、拠点との物理的な距離でしか解決できません。
枚方市においても、水害リスクは技術で克服し、人口密集地である駅前に防災機能を維持するべきと考えます。

4. 初期消火と避難を支える「空間の再整備」
特に古い建物が密集し、多くの人が滞在する川原町周辺の安全を確保するためには、以下の二つの空間整備が必要です。
① 消防活動を可能にする「道」の整備
既存の道路を活かし、消防署から市街地まで直行できる最短ルートを確立する必要があります。
特に川原町に面する道路については、消火活動ができるよう、道路の拡幅を行うことが極めて重要です。
②「延焼を防ぎ、人を守る」防災公園の配置
川原町のすぐ隣に広い公園を配置することは、街全体の安全に直結します。公園の空間が「防火帯」の役割を果たし、隣接する街区への延焼を食い止めます。また、地震や火災が発生した際、パニックに陥りやすい密集地から、人々が即座に逃げ込める「安全な避難場所」になります。

第2回のまとめ
都市防災とは、リスクから遠ざかることではなく、リスクを技術と計画で「コントロール」することです。建築技術で水害を防ぎつつ、消防署の適切な立地によって火災から街を守る。この両立こそが、市民の安心を支える合理的な計画といえます。
第3回では、これらの課題を解決し、かつ経済的にも持続可能な「次世代型防災都市モデル」の具体案を提案します。
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