学校防災訓練の「次」とは何か

進化する自治 vision50防災・減災
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─学校は、どこまで防災を担うのか

学校で行われる防災訓練には、長い歴史がある。
避難経路の確認、点呼、校庭への整列。
多くの人が、子どもの頃に一度は経験してきた光景だろう。

この訓練自体は、今もなお重要である。
しかし、地区防災計画という視点から見たとき、
学校防災訓練には、どうしても曖昧なまま残されている問いがある。

学校は、どこまで防災を担う場所なのか。

学校防災が分かりにくくなる理由

町会やマンションの防災訓練は、比較的わかりやすい。
町会であれば「人を把握すること」、
マンションであれば「設備と判断の境界を確認すること」と、
訓練の焦点が明確である。

一方、学校防災はそう単純ではない。

学校は、
児童・生徒を守る教育の場であり、
同時に、災害時には地域住民の避難所となる。

この二重の役割が、
学校防災訓練を分かりにくくしている最大の理由である。

学校防災訓練の「次」は、訓練内容ではない

学校防災訓練を一歩深めようとすると、
つい「何を新しくやるか」を考えがちになる。

だが、学校防災訓練の「次」で本当に重要なのは、
新しい訓練メニューを増やすことではない。

学校が「できること」と「できないこと」を、
地域と共有すること
である。

言い換えれば、
学校防災訓練の次とは、
線を引く訓練なのだ。

これが意外と教育委員会が決めてきた校長先生や、
さらに公募校長制度で決められた校長先生では話が通じない事が多く、
また新たに説明し直さねばならない場面が多い。

まず確認すべき三つの前提

学校防災訓練の次として、
まず共有しておくべき前提がある。

誰を最優先で守るのか

学校が最優先で守るのは、
言うまでもなく児童・生徒である。

地域住民の避難所としての役割は重要だが、
それが児童・生徒の安全確保より優先されることはない。

学校は運営主体ではない

学校は、避難所「施設」ではあっても、
避難所「運営組織」ではない。

教職員は防災専門職ではなく、
災害時に無限の対応力を持つ存在でもない。

人手は必ず不足する

大規模災害時、
全ての教職員が学校に集まれる保証はない。

この前提を共有せずに行われる防災訓練は、
どうしても現実から乖離してしまう。

「使う側」に考えてもらう訓練へ

学校防災訓練の次として有効なのは、
学校が説明する訓練ではない。

地域住民が「使う側」として考える訓練である。

例えば、こんな問いを投げかけてみる。

  • この校舎を避難所として使うと、どこが不便か
  • トイレや水は、何日分持ちそうか
  • 子どもが生活している空間で、何ができないか

すぐに答えを出す必要はない。
重要なのは、
「学校は万能ではない」という現実を、
地域が自分ごととして考えることだ。

子どもを「翻訳者」にすること

学校防災ならではの強みもある。
それは、子どもの存在だ。

子どもを、
守られる側や参加者としてだけ扱うのではなく、
**地域と学校をつなぐ「翻訳者」**として位置づけてみる。

  • 子どもが校内を案内する
  • 子どもが「困りそうな場所」を指摘する
  • 大人がそれを聞く

子どもの視点は、
大人が見落としてきた前提条件を、
驚くほど素直に浮かび上がらせる。

無理をさせないという選択

学校防災で最も避けるべきなのは、
地域防災の課題を、
そのまま学校に背負わせてしまうことだ。

学校は教育の場であり、
防災拠点の運営主体ではない。

だからこそ、

  • 学校は「考える場」を提供する
  • 地域は「使う側」として参加する
  • 役割は混ぜない

この線引きを、
防災訓練という形で共有することに意味がある。

学校防災訓練の「次」とは

学校防災訓練の「次」とは、
何か新しいことをやることではない。

学校の限界を、地域と共有すること。
そしてその上で、
地域として何ができるのかを考え始めること。

それは、
学校を守るための防災であり、
同時に、
地域防災を現実に近づけるための一歩でもある。

前述したが、大阪市の場合、
この大前提すら共有できない
校長先生が公募で選定されることがある。

話し合えば、地域のエゴだとしたり、
これまで決めてきた大前提を平気で反故したりする。

教育統括のプロとしての校長先生は、
同時に地域防災時の要の一人であることを
認識していただきたい。

<山口 達也>


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