「市民サービスの規定が起こす矛盾」3

市民と市政進化する自治 vision50
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市民×行政のもう一つの未来

令和5年 陳情第8号を全会一致で採択 理事者をして善処せしめる

2月15日の委員会の翌日、Kさんは自宅ポストに封筒に書かれた手紙と名刺が入っていることに気づいた。「大阪市会議員 自民党 石川博紀」とある。手紙には石川議員が入浴サービスの陳情書を民生保健委員会で取り上げたこと、採択はされなかったが今後も実現に向けて声を上げることなどが書かれていた。この時Kさんは自身が書いた陳情書が議会で取り上げられ、後押ししてくれた議員がいたことを初めて知った。この手紙を受け取ったのち、Kさんは石川議員に議員のwebサイトを通じてお礼のメッセージを送り、その後メールを通じてのやり取りを始めた。
 「手紙を読んで感動しました。こんなに助けてくれる議員がいるのかと思いました。」Kさんは、こんなことならもっと早く陳情書を出せばよかった、と回想する。個人でこういう陳情を出しても議会にはねられるんじゃないか、とも思ったこともある。しかし実際には二人の議員がこの陳情書を取り上げ、実現に向けた発言をしてもらっていたのだ。
 訪問入浴サービスのことが議会で取り上げられ、なぜか公明党と大阪維新の会が賛同しなかった、ということがsns上で話題になった。その後それぞれの党や委員会の委員に対して何らかのアクションが起こされたかどうかはわからない。石川議員も、武議員も他の会派に対して働きかけることは特になかったと聞く。
 別表のように、市民から出された陳情書は、提出後に開催される市会の各委員会に諮られ、いったん採決を受ける。この時継続審査となった陳情書は年度末に改めて審査し再度採決をとることとなっている。3月に入り2022年度最後の民生保健委員会が開かれた。
 3月7日に委員会で公明党の小笹正博議員が質疑を行った。重度障がい者入浴サービスは重要な事業であることを強調し、一人当たり約10万円の増額でいけるという予算からひも解き、「ぜひともこの回数は増やしていただきたいということをさらに要望」するとされた。また最終日となった14日には、大阪維新の会の藤岡寛和議員は、質疑ではなく要望というかたちで発言に立ち、障がい者の方の訪問入浴サービス事業について「回数等の取組」や「冬・夏などの時期を考慮したり」し、「利用者に寄り添った、検討を進めていってもらいたい」と市側に伝えた。この間、石川議員も質疑に立った際には福祉局に対する質疑を通じて採択への賛同を呼び掛けた。
 各議員が陳情書への賛同と大阪市へ回数増加の措置への要望を伝える中、採択へと進んだ。全会一致で採択された結果、福祉局に対して善処するよう申し入れが行われることとなった。翌日付で大阪市会議長からKさんに対し審査結果の通知が行われた。

通知書もらったけど このまま待ってても大丈夫?

陳情採択の通知書を受け取ったものの、これから先どのように進んでいくのかは全くわからなかった。6月になり、7月を迎えた。石川議員は民生保健委員会から建設港湾委員会に移動していた。そのため聞くのはためらわれたが、連絡を取ると、福祉局の方で陳情の採択を実現するため前向きに進めている、という状況が伝えられた。8月には改めて自身で福祉局に連絡を取り、進めていることを確認した。
 大阪市福祉局では、すべての事業に対して毎年見直しが行われている。訪問入浴サービスを担っているのは障がい者施策部障がい福祉課。課で行っている事業に対し、利用者状況や他都市の現況などの情報をもとにまず課内で検討が行われる。この入浴サービスについては、確実に週2回を確保するために必要な日数として最大月10回、年間105回として予算を割り出し、課で決定後局内で検討。また局内の全体調整で諮り、最終的に予算化されるかされないかが決定される。訪問入浴サービスについては、議会からの申し入れということもあって、事業見直しの中でも優先度は高くなっていたことは確かなようだ。こうした流れで検討が進められていることもあり、なかなか正確に回答されることはなかったことがうかがえる。

令和6年4月から利用回数上限が増えます

8月に電話をしてからも何の連絡もなく過ぎていった。翌2024年2月27日になって障がい福祉課に電話を入れた。翌3月1日に連絡が来て、入浴サービスの利用回数上限を増やすための予算案ができており、議会に提出するということだった。その内容が知りたかったので、面識はなかったが当初から質疑をされ今も民生保健委員会にいるのは武議員だったこともあり、思い切って武議員にメールをしてみた。すると武議員から資料が送られてきて、すごくくわしく教えてもらったという。そこで初めて「すごいな よかったなと思いました。」と振り返った。
 2024年4月から入浴については確実に週2回実施されることになり、Kさんも利用している。週2回になってどうかと聞いてみた。
「お風呂に入ってあったまるていうのは 生活の一部になっていて、それがポンと抜けてしまうことになるとそういう部分でもストレスになります。」
週2回利用している中で1回抜けることは、まる1週間抜けてしまうっていう状態になるので、これはかなり厳しい。
「僕ら在宅で障害者が生きていく中でね、 安心して生活したい、安心してお風呂入りたいということが結構大事なことやと思う。そやから当事者の声が制度の中に入ってないことの問題がこういうのに出てきてのかって思う。もうちょっと当事者(利用者)の声をもうちょっと入れていくとか一緒に作っていくっていうことが必要かと思います。」(w)
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