市民の財産権、教育自治を奪う行政の裏切り-4

レポート
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高校財産の無償譲渡を議決をしたのか? 議員間に認識のズレ

原告が行った市会の全議員へのアンケートから判明した議員間での認識のズレ

控訴審にあたり、原告団は無償譲渡が違法であることを補強する新たな証拠や意見書が提示できないか考えていた。そうした中、議案182号が市立高校を廃止する条例だけか、高校財産の無償譲渡を含むのか、また無償譲渡の根拠となる法的根拠は何か。裁判で争点となっているこの2点について採決を行った市会議員全員にアンケートを取って確認したい、との意見が原告から提案があったという。
裁判では、本会議で議案182号を審議する中で、議案内には記載のない財産無償譲渡を「議会の議決があったということができる」と追認している。であるならば、採決を行った議員は、どのような認識をしていたのか。もし判決が指摘しているように「議会の議決があったということができる」のであれば、全議員が同じ認識を持っているはずである。議会の実体と裁判所の判断が異なる場合、どちらが判断の根拠となるだろうか。

ということで、原告らは、次のようなアンケートを各議員団に宛てて回答を求めた。

アンケート質問用紙

令和2年12月9日の市会本会議定例会における議案第182号(大阪市立学校設置条例の一部を改正する条例案。以下「本議案」と言います。)について、ご回答ください。Q2~Q5は、当てはまるものに〇をつけてください。

Q1 あなたは、令和2年12月9日の市会本会議定例会に出席されていましたか。いずれかに〇をつけてください。「いいえ」の場合は理由をお書きください。

1 はい
2 いいえ(理由)

Q2 本議案の議決対象について、あなたの認識は次のいずれでしたか。

1 市立高校を廃止する条例のみ
2 市立高校を廃止する条例及び高校財産(土地、建物及び備品。以下同じ)の無償譲渡

Q3 あなたは、本議案の表決に当たって、高校財産の無償譲渡について、地方自治法96条1項6号等に基づいて市会で意思決定を行うとの説明を受けていましたか。

1 はい
2 いいえ

Q4 あなたは、高校財産の無償譲渡の判断は、大阪市財産条例16条等に基づいて市長又は契約管財局長が行うとの説明を受けていましたか。

1 はい
2 いいえ

Q5 高校財産の無償譲渡について、市会に議案(地方自治法q6条1項6号)が提出された場合、あなたの意見はどちらてすか。

1 賛成
2 反対

その結果は、以下の図の通り。
各議員団の判断については、原告が提出した証拠文書をもとに図版に続いて解説している。
結果として、各議員団での認識に大きなずれがあるだけでなく、同じ議員団内でも議員によって認識が異なることがわかった。
議決した内容で、高校の廃止のみとする議員団と財産の無償譲渡を含むという議員団に分かれた。
無償譲渡の法的根拠についても地方自治法96条の説明を受けたとする議員団と、財産条例16条によると説明を受けた議員団、いや両方を受けた、両方とも受けていないなど4つのパターンが現れた。
1つの議案の審議・採決でこれほど異なることがあるのかと驚く。と同時に、大阪市側は「財産条例16条」を主張しているにもかかわらず、地方自治法96条のせつめいがあった、いやどちらもなかったとするなど、果たしてこの審議と議決そのものに大いなる疑問がわく。
この結果をもとにしても裁判所の判断が変わらなかったことも、ある種の頑なさを感じる。
A議員団

A議員団所属議員は各自が回答。
全員が議案182号の議決対象は市立高校を廃止する条例のみとした。
高校財産の無償譲渡の根拠として、地方自治法96条1項6号等に基づくとの説明は受けず、大阪市財産条例16条に基づき市長または契約管財局長が行うとの説明を受けたと回答している。
高校財産の無償譲渡について議案が提出された場合は反対としている。

B議員団

B議員団は各自が回答。
同議員団所属の議員1は、議案182号の議決対象は市立高校を廃止する条例のみとした。
高校財産の無償譲渡の根拠として、地方自治法96条1項6号等に基づくとの説明は受けず、大阪市財産条例16条に基づき市長または契約管財局長が行うとの説明も受けていないとした。
高校財産の無償譲渡について議案が提出された場合は反対としている。

同議員団所属議員2は、議案182号の議決対象は市立高校を廃止する条例と高校財産の無償譲渡だとしている。
高校財産の無償譲渡の根拠として、地方自治法96条1項6号等に某づく旨の説明を受け、また大阪市財産条例16条に基づき市長または契約管財局長が行うとの説明も受けたとしている。
高校財産の無償譲渡について議案が提出された場合は反対としている。

C議員団

C議員団は、C議員団議員1が代表で回答した。議案182号の議決対象は市立高校を廃止する条例と高校財産の無償譲渡だとしている。
高校財産の無償譲渡の根拠として、地方自治法96条1項6号等に基づく旨の説明を受け、また大阪市財産条例16条に基づき市長または契約管財局長が行うとの説明も受けたとしている。
高校財産の無償譲渡について議案が提出された場合、賛成としている。

ところが、高校財産の無償譲渡の根拠について、地方自治法96条1項6号に基づく旨の説明を受けたとしているが、実際には大阪市財産条例第16条としているので、説明と異なっている。そのうえ、2022(令和3)年12月1日の教育こども委員会で同議員団所属の議員が行った質疑とも異なっている。
その所属議員は、委員会で「土地・建物を無償で譲渡する際の法的根拠は何」かと質問をしている。
この質問に対して、当時の教育委員会事務局総務部施設整備課長は次のように答えている。

大阪市財産条例第16条では、普通財産は、公用又は公共用に供するため特に無償とする必要がある場合に限り、国又は公法人にこれを譲与することができると定められておりまして、当該規定に基づき、市立高校の移管に伴う土地・建物の譲渡を行うものでございます。

これに対して当議員は、

財産無償譲渡について、改めてこのことについて議会に諮る必要があるのかないのか、これはどういう考え方なのか確認をさせてください。

との再質問をしており、高校財産の無償譲渡の根拠が「大阪市財産条例第16条」であることを認識している。

この質問に対し、当施設整備課長から

財産条例第16条に基づきまして、土地・建物の譲渡を行えることとなっておりますので、財産譲渡につきましては議会に諮る考えはこざいません。

との回答を得ており、当議員は、無償譲渡の根拠が大阪市財産条例第16条であり、議会の議決が必要ないことを認識している。当議員の情報が議員団で共有されていれば、このような回答が出ることは考え難い。

D議員団

D議員団は、当初、アンケートに対して回答者名も会派名も白紙で回答していた。
改めて再度依頼したところ、代表としてD議員団議員1が代表として回答している。
議案182号の議決対象は市立高校を廃止する条例及び高校財産の無償譲渡であり、高校財産の無償譲渡の根拠として、地方自治法96条1項6号等に基づくとの説明を受け、大阪市財産条例16条に基づき市長または契約管財局長が行うとの説明は受けていないとしている。
高校財産の無償譲渡について議案が提出された場合は賛成としていた。
ところが、無償譲渡の法令根拠は財産条例16条とされているので、 D議員団の回答は実際の説明と異なっている。

E議員

E議員団所属議員は、各自が回答した。
同議員団所属議員全員が議案182号の議決対象は市立高校を廃止する条例及び高校財産の無償譲渡であったとしている。
高校財産の無償譲渡の根拠として、地方自治法96条1項6号等に基づくとの説明を受け、大阪市財産条例16条に基づき市長または契約管財局長が行うとの説明は受けていないとした。
高校財産の無償譲渡について議案が提出された場合、反対と回答している。
しかし、無償譲渡の法令根拠は財産条例16条とされているので、E議員団の回答は実際の説明と異なっている。

F議員団

F議員団議員団所属議員は、各自が回答。
同議員団所属議員は全員が、議案182号の議決対象は市立高校を廃止する条例及び高校財産の無償譲渡だとしている。
高校財産の無償譲渡の根拠として、地方自治法96条1項6号等に基づくとの説明は受けず、大阪市財産条例16条に基づき市長または契約管財局長が行うとの説明も受けていないとしている。
高校財産の無償譲渡について議案が提出された場合、反対としている。
しかし無償譲渡の法令根拠についてなんらの説明も受けておらず、無償譲渡の法令根拠が存在しないという議案について採決したということなど、あってはならないのではないだろうか。


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