過去最高の税収と喜んでばかりではいられない
先月7月31日、「大阪市の税収が3年連続最高 企業業績が堅調、固定資産税も寄与」という日本経済新聞記事が出ていた。
- 市税収入は前年度比3.2%増の8305億円で3年連続で過去最高
- 歳入は5.5%増の2兆901億円で過去最高
- 歳出も5.5%増で過去最高の2兆656億円
- 市債残高は一般会計で3.1%減の1兆3341億円。20年連続の減少
のように「過去最高」の文字が並び、これだけを見るといかにも安定した財政基盤が盤石な自治体のように思われる。しかし、記事の中でも指摘されているように、福祉関連の費用となる「扶助費」が8.1%増、大阪・関西万博の建設費用、あるいは下記の参考資料の「前提条件」にあるように0~2歳児の保育料無償化などの行政施策経費が11.8%増となっており、実は決して楽観的ではいられない状況にある。
記事が裏付けとしている、同日大阪市が発表した「令和6年度大阪市一般会計等決算見込(速報版)」を見ると、増加率の多い歳出項目は、
行政施策経費 11.8% 3704億円
投資的経費 9.7% 2539億円
扶助費 8.1% 6970億円
確かに扶助費が3970億円と額は最大だが、万博費用や関連工事費、今後の開発目的の費用などいわゆる従来の土木・建設関係費は、令和6年度だけで6243億円に上る。税収増だったので、実質収支がプラス206億円とはなっているが、大阪市が試算している長期見込みでは様相が変わってくる。
今後10年間毎年赤字の試算、赤字総額1,998億円のなぜ?
過去最高とか、税収アップといった景気の良い言葉が並ぶ令和6年度の一般会計の見込みだが、大阪市は、今年度(2025年(令和7))以降10年間の財政収支概算(粗い収支)という報告書も今年2月に出している。
この中にある「収支の推移(一般会計)とその対応」のグラフを見てみよう。
2025年(令和7)から2034年(令和16)までの財政収支をグラフ化したものだが、毎年赤字が続き、その総額は1998億円に上る。右上に前回版(令和6年2月)も掲載されているが、令和6年はたまたま税収が上がったため、赤字に陥ることはなかった。しかし今後も税収が赤字幅を上回るほど増加するとは予想されていない。
この発生する赤字について市は、財政調整基金(自治体の貯金のようなもの)から補填するとしている。先に発表された「令和6年度一般会計決算見込み(速報版)」では財政調整基金は182億円がプラスされ、2,869億円となっている。財政調整基金は、毎年の実質収支を繰り入れることを基本としているので、赤字になればそれだけ財政調整基金は目減りすることになる。粗い試算とはいえ、今後10年間試算通りに赤字が継続すれば、約2,000憶円も目減りすることになる。財政調整基金は、自治体が何らかの危機的状況に陥った時に出動させる「調整役」。例えば、東京都は先の新型コロナウイルス感染時に前年まで9,345億円あった基金を95%近くまで取り崩し、感染対策に使っている。大阪市では、感染対策として国からの補助金を配布したりしたが、財政調整基金はほとんど使っていなかった。
人件費などは給与改定は令和6年度ベースだし、公債費の利率などは今後公定歩合の変動で上昇が見込まれるなど、あくまでも概算とでしかない。しかし、大きな割合を占める扶助費、行政施策費、投資的経費をどのように配分していくかを考えないと、赤字は増大し、財政は破綻と突き進みかねない。
参考資料「前提条件」
扶助費は、福祉関連の費用となるため高齢者の増加や年金で生活ができなくなる場合の生活保護費などの増加が見込まれるのだろう。ただし国庫補助などがあるので、生活保護費と障碍者自立支援給付費の大阪市の負担率は記載額の1/4である。補助額は歳入のその他に含まれている。扶助費のうち純粋に大阪市から支出金額について概算で計算してみたのが下記の表。
扶助費の増大が避けて通れない福祉関連費用とするならば、扶助費以外で大きな割合を占める行政施策経費や投資的経費の比率を下げて配分率を検討する必要があるのではないか。
大阪は、大阪・関西万博や夢洲カジノ誘致のために、多額な公金を注ぎ込んできた。現在開催中の万博やその後のカジノ誘致のための夢洲整備などでは、今年度以降もその配分率は高い。今年2月の今年度予算案の中でも、総額で1,857憶3,600万円にもなる。
その一方で、南海トラフ巨大地震など切迫する大規模地震に対する耐震対策は11億6,000万円、浄水場・下水処理場等)や医療機関等の重要施設に接続する上下水道管路の耐震化には29億8,000万円、気候変動等を踏まえた水害への備えでは24億3,200万円となっている。予算配分に対する捉え方で変わるとは思うが、夢洲にかける予算に比べ、防災や気候変動に対する予算がけた違いに少ない印象に移る。
国際博覧会推進事業 | 202億8,500万円 |
万博の成功に向けた取組 | 101億8,600万円 |
関連取組(大阪版万博アクションプラン掲載取組) | 21億2,000万円 |
夢洲地区の土地造成・基盤整備事業 | 249憶8,600万円 |
夢洲物流車両の交通円滑化に向けた対策 | 13億9,900万円 |
夢洲消防出張所の整備事業 | 3,000万円 |
IRを含む国際観光拠点の形成に向けた立地推進事業 | 6,000万円 |
依存症対策支援事業 | 6,800万円 |
淀川左岸線(2期事業) | 252憶4,600万円 |
淀川左岸線延伸部事業 | 2億4,000万円 |
なにわ筋線事業の促進 | 94憶4,200万円 |
財政局の作成資料なので、行政施策経費の内訳など、さまざまな市民サービスの項目別の配分まではわからない。これまでも道路の白線が消えて歩道と認識されないとか、街路樹の剪定が幹の部分からスパッと切られているのは予算がカットされたかからとか、メンテナンス費削減で公園のトイレが取り壊されるのではないかなど、こまごまとした市民サービスが削られているという印象が強い。今後の財政を考えた時、ささやかな市民サービスを切ってまで多数の市民の同意が得られていない開発に予算を使うのか、市民の安全と福祉を重視した予算配分をするのか、長期的な視点に立った財政ビジョンが求められる。