大阪カジノ住民訴訟で揺れる夢洲-5
第3事件、第4事件までの経過
2022年7月29日に第1事件(夢洲IR差止・損害賠償事件)の住民訴訟が提起されて以降、裁判の進行とともにカジノ事業の誘致や契約も着々と進行していった。
2023年4月3日 第2事件(格安賃料差止事件)の住民訴訟が提起された
同年 4月14日 国土交通省は大阪府・市の区域整備計画を認定
同年 9月5日 大阪府・市副首都推進本部が「実施協定」の骨子案を公表
同年 9月8日 大阪府・市が国に対して実施協定の認可を申請
同年 9月22日 国土交通大臣が実施協定締結を認可
同年 9月28日 大阪府・市とSPC(カジノ事業者)が実施協定、借地権設定契約を締結
●大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域整備等実施協定書
●事業用定期借地権設定契約公正証書
●大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の立地及び整備に関する協定
●大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の立地及び整備に係る土地使用等に関する協定)
●大阪・夢洲地区特定複合観光施設用地に係る土地改良事業に関する協定書 ※9月29日
同年 12月1日 大阪府・市とSPC(カジノ事業者)が土地改良工事用地の使用賃借契約を締結
●大阪・夢洲地区特定複合観光施設用地に係る液状化対策等工事市有財産使用賃借契約書
●引渡し範囲等に関する覚書
同年 12月4日 カジノ用地で液状化対策工事開始
2024年9月9日 第3事件(土地使用賃借・支払い請求等事件)と第4事件(土地改良費用・支出等差止・請求等事件)が提訴される
同年 9月30日 大阪府・市とSPC(カジノ事業者)が土地引渡しに関する合意書を作成
同年 10月1日 カジノ事業用対象土地492361019㎡のうち、464952.38㎡を大阪市からSPC(カジノ事業者)に引渡し
※SPCはのちに大阪IR株式会社として登記された
土地改良工事用地の無償賃借は違法ではないか
この2023年12月に行われた土地改良工事用地の使用賃借契約の締結と液晶化工事の開始が、新たな事件として住民訴訟が起こされることになった。
これまでに紹介してきた第3事件、第4事件(大阪IR・カジノ土地改良事業差し止め訴訟)である。
第3事件は、2023年12月4日から始まった液状化対策対策工事を行うに際し、大阪市が大阪IR株式会社(現大阪MGM株式会社)に対して土地利用の賃借代金を無償とした契約書が違法で無効であるとし、対象賃料の損害賠償を請求するもの。
第3グループは、本訴訟を提起するにあたって、2つの違法性をその要旨の中で述べている。
まず、カジノ用地の賃借契約とカジノ用地の土地改良事業に関する協定書において、土地改良事業費用を大阪市が負担することの違法性を指摘している。これば第1事件と同様の違法性を指摘し差し止めを求めるものである。下記に改めてその争点を見ていく。
第1事件と同様の請求のため、第1事件への共同参加という形となっており、これが第4事件となる。
事業用定期借地権設定契約・大阪・夢洲地区特定複合観光施設用地に係る土地改良事業に関する協定書において、土地改良事業の費用負担することが、公営企業の独立採算制、平等原則を逸脱していることから下記の規定に違反している。
- 埋立地を賃貸・売却するにあたり、大阪市が改良費用を負担するのは異例。
- 年間2000万人の来場者があることを前提に、35年間の賃料収入による黒字を見込んでの最大788億の負担をすること。
土地改良事業が大阪市の公共工事とされながら大阪IR株式会社が発注する工事となっているため、一般競争入札優先主義やその他の地方自治法等の諸規定(地方自治法2条14項、地方自治法234条1項、地方自治法234条の2の1項、地方財政法4条1項)などの法の趣旨に反する契約となっている。
- 「地方公共団体は、その事務を処理するにあたっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」という(地方自治法2条14項)の規定に反している。
- 上限額のみ定めており、工事業者側に費用を抑える理由が無い。
- 大阪市は、大阪市が算定した上限額があるので適正さが担保されていると主張しているが、それで済むなら全ての入札が不要となり、競争原理も働かない。
第3事件は、上記の違法性を前提として、次のように主張している。
大阪・夢洲地区特定複合観光施設用地に係る液状化対策等工事市有財産使用貸借契約に関して、以下のような違反があるとしている。
第4事件で示した、土地改良事業に関する協定書と一体となった使用貸借契約は、前者が違法無効であれば、これも無効である。
平等原則(憲法14条1項)に違反
・港湾土地を賃貸するにあたり、改良工事中の無償使用を認めるのは異例。
・大阪市は、市の事業でも無償で使用させているので平等原則違反ではないと主張している、しかし対象はカジノ事業用地でカジノ事業は「市の事業」ではない。上記改良工事については入札によっていないことと矛盾する。
地方自治法、大阪市財産条例違反
・カジノ事業は「市の事業」なのか。
・大阪市財産条例では公益事業のためなら無償貸付可能としている。
しかし民間によるIR・カジノ施設の建設は「公益事業」なのか。
・大阪市は、賃料収入や経済波及効果が公益であると主張している。
しかし大阪市がインフラ等の建設の場合を例に挙げている従来の条例解釈と矛盾している。
以上の理由から、第3事件、第4事件では、以下のように請求をしている。
- 大阪IRの事業のために必要な土地改良費用を負担するという合意の差止め
- 大阪IRの事業のために必要な土地改良費用の支払いの差止め
- 大阪IRに対する令和5年12月4日から1月あたり金2億1073万0589円の割合の損害賠償もしくは不当利得返還請求の履行請求
- 大阪市長もしくは大阪港湾局長に対する令和5年12月4日から1月あたり金2億1073万0589円の割合の損害賠償請求の履行請求
- 上記❸及び❹の怠る事実の違法確認
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