大阪カジノ住民訴訟で揺れる夢洲-4
大阪市の負担が青天井となりかねない契約に危機感―大阪カジノ住民訴訟で揺れる夢洲-2―で紹介したように、2022年10月に「しんぶん赤旗」が大阪カジノ用地賃料「不当鑑定疑惑」を報じたことをきっかけに、新たな住民訴訟が起こされることになった。(しんぶん赤旗日曜版 大阪カジノ用地賃料「不当鑑定疑惑」特別全文公開 https://note.com/nitiyouban)
第一報以降、不動産鑑定を進めるにあたって大阪市と不動産鑑定業者間のやり取りが暴露され、意図的に賃料を安くするための条件設定が明らかとなっていった。カジノ用地の賃料を巡る違法性を問うている第2次訴訟では、どこが違法であり市民の財産を既存しているのか、その不正のもととなっている格安賃料を設定した不動産鑑定の内容も含めて見ていこう。
大阪市民に不利益となる格安賃料設定の是正を求める
第2次住民訴訟の目的は、大阪市がカジノ用地を事業者に貸すにあたって設定され賃料があまりにも安く設定されているため、大阪市民に不利益を与えないよう、契約を是正させることを目的としている。
実際には、本来市民の財産である夢洲の土地をカジノ用地として貸すことには問題があると指摘。しかも、この用地は大阪市が土地所有者の責任として、土地改良費として約788億円を負担している。税金を投入する用地なので本来であれば通常の設定より高くなければおかしいものを、30年以上にわたって格安の賃料で貸し出すことは、大阪市民が大きな不利益を被ることになる。
住民側は、こうした事実を明らかにし、大阪府・市が進めるIRカジノ事業の不当性を広く知らせ、IRカジノ事業を止めることを最終の目標としている。
「不当鑑定疑惑」報道があった翌2023(令和5)年1月に住民監査請求が行われ、4月3日付で訴訟が提起された。
請求の趣旨として訴状には次のように記されている。
要は、カジノ用地の契約、引渡しと登記を差し止めようとするもの。
原告皮は、市有地の引渡しがされた場合その返還を求めるとしている。
- 被告大阪市長は、大阪IR株式会社との間で、別紙物件目録記載の土地について、借地権設定契約を締結してはならない
- 被告大阪港湾局長は、大阪IR株式会社との間で、別紙物件目録記載の土地について、借地権設定契約を締結してはならない
契約責任者としての大阪市長と、実質的に契約者となる大阪港湾局長両名を被告としている。
提訴後の同年9月28日、大阪市は大阪IR株式会社(現在のMGM大阪株式会社)と賃貸借契約書を締結している。
格安で土地を貸すことが違法になるのは、次のような法律による。
地方自治法237条2項
普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。
「適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない」
大阪市の財産である夢洲の土地を「適正な対価ではない」格安賃料でカジノ事業者に貸すことは、この地方自治法237条2項に反する言うに財務会計行為にあたる、というもの。
では、なぜ格安賃料となったのだろうか。大阪市は意図的にカジノ事業者に便宜を図って格安にしたという悪質性が明らかになっている。
格安に設定するための鑑定条件を示し合わせた隠ぺいメールが発覚
2023(令和5)年9月28日に締結された契約書(事業用定期借地権設定契約公正証書)では賃借内容が次のようになっている。
● 賃貸借期間(同契約6条) 引渡し日から2058年4月13日まで
これは35年間に及ぶ長期契約
● 賃料(同契約7条) 月額金2億1073万0589円
換算すると1㎡当たり金428円
これには改訂検証日が設定されており、当初の区域認定日以降5年ごとに大阪市が賃料の改定を行う必要があると判断した場合に賃料が改定できるとされている。しかし、実質的には35年間格安の固定賃料のままとなる可能性が高く、特約として、10年間増額はできないとされている。
訴訟が進行する中で弁護団は、大阪市担当者と不動産鑑定業者間で賃料設定の条件についてやり取りを行っていたメールを入手。その内容から、大阪市が意図的に格安となるような鑑定条件を設定していたことが明らかとなった。
隠ぺいその1
「IR事業を考慮外」として鑑定すること
カジノ事業者が設置しようとしている施設は、高層ホテルを含むカジノ施設であり、国際会議が開催できるMICE施設も予定されている。それにもかかわらず、低中層の商業施設用地(事例としてイオンモール)として賃料を算定することとしている。
隠ぺいその2
コスモスクエア駅を最寄り駅とすること
万博の開催に合わせて大阪メトロは「夢洲新駅」を開業することを進めていた。カジノの海峡は2030年ごろとされている。そうであれば最寄り駅は夢洲新駅となるところを、咲州(隣の島)のコスモスクエア駅を最寄り駅として鑑定することとしている。
隠ぺいその3
違法な鑑定条件の示し合わせに大阪市が積極的に関与したことは明白
不動産鑑定業者の内の1社が設定した鑑定条件を、大阪市が他の3社の業者とメールで共有し、不動産鑑定業者間で鑑定条件について積極的に示し合わせていた。
第2次訴訟では、大阪市と不動産鑑定業者との示し合わせたメールが発覚する前、複数の不動産鑑定業者による鑑定結果が、1円も違わず一致していたことから「奇跡の一致」としてその不自然さとあり得ない確率で出された鑑定結果であるとして追求していた。
2回にわたって行われた鑑定結果は以下のとおりである。


様ざまな条件をもとにしてそれぞれ鑑定業者としての専門性に加え、独自の知見をもとに算定される鑑定結果が不自然ほど一致することは、ほぼあり得ないレベルだ。その真相が弁護団が入手したメールの内容で明らかとなり、鑑定結果の不自然な一致は、鑑定条件の違法な示し合わせであることが明らかとなった。
つまり、本来土地を貸し出すにあたってはより高い設定を行い損失を最低限に抑える努力をすべきところ、故意に格安賃料となるような条件を設定。しかも鑑定条件として土地課題対策費788億円の税金を投入することは条件として含まないようにしており、極めて悪質である。
第2次原告グループはこの第2次訴訟を進めるとともに、格安賃料によって被った被害として損害賠償請求を請求することになる。
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