2021年11月17日
大阪市立高校を廃止し、大阪府に移管。同時に議会決議もなく、各学校の土地建物を含む財産を無償で府に譲渡するという市長、議会の暴挙に対し、市民が差し止めを請求しているこの事件。 11月15日に第1回口頭弁論が開かれました。
目次
裁判が始まった大阪市学校財産無償譲渡差し止め請求事件
大阪市立高校を廃止し、大阪府に移管。同時に議会決議もなく、各学校の土地建物を含む財産を無償で府に譲渡するという市長、議会の暴挙に対し、市民が差し止めを請求しているこの事件。 11月15日に第1回口頭弁論が開かれました。 事件のくわしい経過は前回の記事をご覧ください。
傍聴に大勢の市民が駆け付けた第1回口頭弁論
11月15日の朝、大阪地方裁判所第1007法廷前に数十名の市民が法廷が開くのを待つ姿がありました。 市民だけでなく、中には被告・大阪市側の傍聴人の姿も認められました。 あいにく、コロナ対策もあり、本法廷で傍聴できる人数は限られ、市民側13名が入場し、開廷されました。
問題の本質や異常さを顕わにした原告の意見陳述
裁判長の指揮の下、原告・綱島慶一氏の意見陳述から始まりました。 陳述内容はおよそ次の5点
- 大阪市廃止を決めるいわゆる都構想の住民投票で大阪市民は市を残すことを決めた。それは高校教育も含む市の行政を残すことに他ならない。議会で高校廃止を決めたことは背任行為である。
- 議会では、土地・建物を含む財産の無償移譲の決議はされていない。
- 市長は二重行政と言っているが、戦前より府は中等教育、市は商工等の実業教育と高等教育では住み分けができており、二重行政にはあたらない。
- 高等教育、また学校そのものの存在は、市民、地域にとっての重要な自治であり、その権利を侵している。
- 市民の財産をこういった形でなくすことは市民として許せない。正しい判断を下してほしい。
迅速で的確な訴訟指揮で3月までの判決が確定
今回の訴訟では、2022年4月に市から府への移管が決まっており、原告は早期判決を求めていました。意見陳述を聞き終えた森鍵一裁判長は、本事件の目的である差し止め請求は、早期の決着が必要である旨を説明。裁判所の職責として、3月末までに判決を言い渡すことを明言されました。「裁判所の職責」と言われたことは、原告にはとても勇気づけられたようで、そのあと開かれた説明会での豊永弁護士の説明からも伺えました。 また、3月判決までの日程についても言及され、判決に至る弁論の機会を3回と確定、各期日と法廷も以下のように決まりました。
- 2021年12月17日(金)15:00 大阪地裁大法廷
- 2022年1月17日(月)15:00 大阪地裁大法廷
- 2022年1月28日(金)11:00 大阪地裁1007法廷
無償譲渡とした土地の大半が未登記!!
裁判では、該当する高校の土地を特定するため登記書類を市側に提出を求めていました。しかし、11月15日現在、まだ提出されておらず、被告側の理人岩本安昭代弁護士から「大半が未登記で特定が難しい」という発言がありました。原告側の豊永泰雄弁護士によると、登記がないということは法的には存在しないと。移譲するにあたって土地詳細の確認、確定もせずに進めていたことが明らかになりました。このことからも、土地だけでなく、高校の移管そのものも慎重に進められたものでなく、政治的な思惑と杜撰な手続きで進められたことが明白になったのではないでしょうか。教育委員会が首長の言いなりに事を進めていると思われても仕方がないほど、組織としての体をなしていないように見受けられます。 裁判後に開かれた声明会では、豊永泰雄弁護士から、画期的な訴訟指揮であり、3月までに判決を出すと決められたことは原告にとっていい結果が出たと説明。多くの傍聴者が詰めかけたことで市民の関心が高いことが示され、この結果を後押ししたとしめくくりました。
次回第2回口頭弁論は大法廷で開かれます。 大法廷を埋め尽くすことで、市民が強く関心を示していることをアピールしたいものです。 多くの市民に知ってもらうためにも、ぜひ傍聴に参加していただきたいと思います。