大阪府・市が描く副首都ビジョンの先にあるもの-3

コラム
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日本維新の会が定義する「副首都」とその条件

自民党総裁選に絡み、日本維新の会が「連立」する場合の条件として、「社会保険料を引き下げる制度改革」と「首都機能の一部を移す「副首都構想」」の合意を掲げた。それ以降、4日の総裁選に至る10日間ほどの間に、「副首都」についてアピールする日本維新の会の動画や報道が次々と掲載されてきた。また、日本維新の会がまとめたという副首都法案の骨子案についても、マスコミ各社が報道を重ねている。

YouTubeの「吉村洋文チャンネル」では「副首都構想が必要な理由」という吉村共同代表が語る「副首都」の必要性アピール動画も流れている。ここでは、30年間日本が(経済)成長していないとし、「「副首都」が東京に変わるもう一つのエンジンとして経済を引っ張っていく」と言い、自然災害を含むリスク回避をするためにも「副首都」が必要だと唱える。そして2003年(平成15)にミュンヘン再保険会社が公表した「世界大都市の自然災害リスク指数」を持ち出し、東京のリスクの高さで1位であるとも発言している。まぁ、都市リスク指標では、他の資料でも東京のリスク度は高い。英国保険組織のロイズがケンブリッジ大学ケンブリッジ・リスク研究センターと共同で行った「ロイズ都市リスク指標」では、最大級の人為的災害および自然災害の脅威によって大都市が被りうる経済的な影響の予測として、損失額の大きさで、GDPリスク量で見た上位1位が台北、2位が東京、3位がソウルとなっている。ちなみに大阪は8位だ。

総務省:宇宙×ICTに関する懇談会(第4回)資料4-2 ロイズ都市リスク指標レポート& 太陽嵐リスク
話を戻そう。問題はそこはない。報道では、"「副首都」は、東京にある首都機能のバックアップが主な役割"だとしているが、維新の会では「経済力」と「バックアップ機能」を並列している。バックアップ機能だけでは大阪が選ばれない危機感があるのだろう。何回も「経済力」、「東京に匹敵する経済力と成長」を連呼している。しかしマスコミも評論家も立ち止まって考えなおしてほしい。30年間経済成長していないのは、日本全体ではない。大都市圏で30年間成長度が最も低いのは大阪だ。維新が大阪行政を掌握してからの2012年から2020年度までの大阪市の資料でも、大阪市の2020年度の実質経済成長率は4.9%減、名目経済成長率は4.1%減となっている。
大阪市の2020年度の実質経済成長率は4.9%減、名目経済成長率は4.1%減となっている。
首都のバックアップ機能ということに限定すれば、「副首都」である必要性はなく、都市分散型の防災ネットワークを構築すればいいだけの話だ。維新の会の思惑は、大阪を「副首都」にします、という大阪市民に向けたアピールに過ぎない。
ABCニュースによれば、維新の「副首都」法案には、副首都の定義として以下の2点を提示している。
一つは「東京圏と並び経済の中心として牽引できるような都市」。
また一つは、「災害などの発生によって首都の中枢機能を代替できるような都市」としている。
そして「副首都」になるための条件なるものを定めているという。
  1. 都市機能の集積の程度が高い
  2. 東京圏の災害で、被害の影響が少ないこと
  3. 法律による特別区の設置
この条件があまりにもばかばかしすぎて、この「副首都構想」にミソをつけているとしか思えない。
1.は、大都市としてのインフラが整っていることだという。
2.は、自然災害リスクが少ないところになるだろう。果たして名古屋圏や近畿圏が当てはまるのか。真剣にリスク回避を考えるならば、東南海地震・南海トラフ地震の被害を受けないところとするのではないか。
3.に至っては、こじつけでしかない。誰しも「副首都」が東京と同じ特別区制度を踏襲する必然性はどこにもない。維新の会が「大阪都構想」を謳い、「副首都」という名目をてこに、三度目の「大阪市廃止・特別区設置」を何としても実現させたいだけではないか。馬脚を露すとはこのようなことを言う。
「副首都」の定義といい、「副首都」の条件といい、すべて維新の会の都合とこじつけと見透かされている。

政府の補助金頼みの地方行政のどこか改革か

また、NHKの報道では、

「副首都」の指定対象は道府県単位で、二重行政が解消されていることや、災害時に東京圏と同時に被災するおそれが少ないことなどを要件として、道府県からの申し出に基づき、総理大臣が指定するとしています。
そして、「副首都」に指定された区域では国からの税源移譲や、必要なインフラ整備のための財政措置、それに国会や中央省庁の機能の一部移転といった特例措置などを講じるとしています。

NHK One 維新 「副首都」法案のたたき台まとめる
とある。これもまた、維新の会に都合のいいような法案となっている。
要は、「副首都」指定をされることでインフラ整備のための財源を確保しようということだ。開発中毒ともいえるインフラ整備に血道を上げている大阪では、今後財布をさかさまにしても、もう一銭も余分な財源はない。大阪市の財政は来年度以降赤字予測となっていることは、以前の記事[税収過去最高更新の一方、今後増大する大阪市の赤字の行方]でも述べたとおりだ。
首都のバックアップ機能や、日本の成長をけん引するために「副首都」という名称を持つ都市である必要性はなく、どういう機能をどのような分散させて来るべき危機に対応させるのか、という議論が先に必要なはずだ。そもそも吉村共同代表も、「副首都」は1つでなくていいと言っているではないか。まずもって、東京の代替となるだけの経済けん引力と行政府機能を持たせられるだけの都市は、現代日本に存在しない。どこか1つの都市が担うのではなく、おのずから分散化するしかないのが現実だ。しかも自然災害リスクを極力避けるためにも、太平洋沿岸ではない地域を選ぶべきだ。
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