なぜダイキン淀川製作所が発生源と考えられているのか

レポート
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第1章 ダイキン淀川製作所でPFOAはいつ使われたのか

大阪府摂津市にあるダイキン工業淀川製作所は、PFAS問題を考えるうえで重要な場所の一つとして、全国的に注目されている。

ダイキン工業と聞くと、多くの人はエアコンメーカーを思い浮かべるだろう。しかし同社は、フッ素樹脂やフッ素化学製品を製造する世界有数のフッ素化学メーカーでもある。PFASの一種であるPFOAは、こうしたフッ素化学製品の製造工程で使用されてきた。

世界のPFAS問題を語る際には、米国の3Mやデュポンといった企業の名前がしばしば挙げられる。ダイキン工業は、それらの企業と並ぶ主要なフッ素化学メーカーの一つであり、世界市場に製品を供給してきた企業でもある。
【資料】PFOAをめぐる国内外の主な動き
| 1960年代後半 | ダイキン淀川製作所でPFOA使用開始 
| 1980年代   | ダイキン淀川製作所でPFOA製造開始
| 2000年    | 米国3MがPFOS製造中止を発表
| 2006年    | 米EPAが「PFOA Stewardship Program」を開始
| 2010年    | 主要メーカーがPFOA排出・製品含有量95%削減目標
| 2012年    | ダイキン淀川製作所でPFOA製造・使用終了
| 2015年    | 米国主要メーカーがPFOA全廃目標を達成 
| 2019年    | PFOAがストックホルム条約の規制対象に追加
| 2020年    | 日本でPFOS・PFOAの暫定目標値(50ng/L)設定
| 2026年    | PFOS・PFOAが水道水質基準化
ダイキン工業によると、淀川製作所では1960年代後半からPFOAの使用を開始し、1980年代からは製造も行っていた。そして2012年に製造・使用を終了している。

一方、世界では2000年代に入る頃からPFOAやPFOSをめぐる問題が大きく動き始めていた。2000年には米国の化学メーカー3MがPFOSの製造中止を発表。2006年には米国環境保護庁(EPA)が主要メーカーによるPFOA排出削減プログラムを開始した。その後も欧米では規制の強化や健康影響に関する研究が進められ、2019年にはPFOAがストックホルム条約の規制対象となった。

世界では規制や製造中止が進む中、ダイキン淀川製作所でも2012年にPFOAの製造・使用が終了した。しかし、それまでに製造・使用されてきたPFOAは、どの程度環境中へ放出されていたのだろうか。

第2章 排出されたPFOAは地域環境に何をもたらしたのか

ダイキン淀川製作所周辺の主な水系
第1章で見たように、ダイキン淀川製作所では半世紀近くにわたりPFOAが使用・製造されてきた。では、その過程でどの程度のPFOAが環境中へ放出されていたのだろうか。

公害調停申請書によると、2002年度にダイキン淀川製作所から排出されたPFOAは、排水として約9トン、大気中へ約3トンとされている。合計すると約12トンにのぼる。

申請書では、この量について、現在のPFOS・PFOAの暫定目標値(50ng/L)を基準に単純換算した場合、琵琶湖約6.5個分、大阪湾約4個分の水を同濃度まで汚染しうる量に相当すると説明している。

こうした数値は、単に「どれだけ使われていたか」を示すものではない。重要なのは、それだけの量のPFOAが工場の外へ放出されていたという事実である。

PFOAは排水として河川へ流出するだけでなく、大気中へ放出された後に周辺環境へ沈着する可能性も指摘されている。工場から放出されたPFOAは、河川や土壌、地下水など地域の環境へ広がっていったと考えられている。

PFAS問題の特徴は、工場の敷地内で完結する問題ではないことだ。環境中へ放出された物質が、河川や地下水を通じて地域へ広がり、長期間にわたり残り続ける可能性がある。

実際に摂津市周辺では、その後、河川や地下水、水道水から高濃度のPFASが確認されることになる。では、放出されたPFOAはどのような経路で地域へ広がったのだろうか。

第3章 放出されたPFOAはどこへ広がったのか―味生排水路と周辺水系―

ダイキン淀川製作所から環境中へ放出されたPFOAは、その後どのような経路で地域へ広がったのだろうか。

国や大阪府、市などの調査では、工場周辺の水路や河川で高濃度のPFOAが確認されている。この調査をもとに長岡ゆりこ氏(ダイキンPFAS公害調停事務局長)がまとめたレポートによると、味生排水路では2007年に1万2000ng/Lが確認された地点があり、その後も2024年から2025年にかけて2000~9000ng/L台の値が確認されている。
ダイキン淀川製作所周辺の主なPFAS調査地点
味生排水路は神崎川へとつながり、さらに安威川へ流れていく。2003年には京都大学の研究グループによって、安威川下水処理場の放流水から6万7000ng/LのPFOAが検出されたことも報告されている。

こうした調査結果は、PFOAが工場の敷地内にとどまらず、水路や河川を通じて周辺環境へ広がっていたことを示している。

また、汚染は摂津市内だけの問題ではなかった。原田浩二氏らによる2016年の調査では、ダイキン工業周辺だけでなく、大阪市東淀川区や淀川区、守口市、門真市などでもPFOAによる地下水汚染が確認されている。汚染は神崎川を越えて広がり、工場周辺にとどまらないことが明らかになった。

工場から放出されたPFOAは、水路や河川を通じて広がり、さらに周辺地域の環境へ影響を及ぼしていたと考えられる。では、その結果として地下水からはどのような濃度のPFASが確認されていたのだろうか。

第4章 地下水はどこまで汚染されていたのか

第3章で見たように、PFOAによる汚染は工場周辺の水路や河川だけでなく、地下水にも広がっていた。
原田浩二氏らによる2016年の調査結果をもとに、長岡ゆりこ氏がまとめたレポートによると、地下水からは一津屋で35,000ng/L、南江口で4,800ng/L、大桐で2,200ng/L、瑞光で650ng/LのPFOAが確認されている。
調査地点は摂津市内だけでなく、大阪市東淀川区にも及んでいる。工場周辺で確認された汚染は、行政区域を越えて広がっていたことがうかがえる。
地下水は普段目にすることは少ない。しかし、一度汚染されると長期間残留する可能性がある。そのため地下水調査は、地域環境の状態を知る重要な手がかりの一つとされている。
また、これらの調査結果は、PFOAによる汚染が工場敷地内にとどまらず、周辺地域の環境へ広がっていたことを示している。
こうした地下水汚染が確認される中、PFAS問題は水路や地下水だけの問題ではなく、水道水の問題としても注目されるようになった。では、水道水への影響はあったのだろうか。

第5章 水道水への影響はあったのか―三島浄水場と水道企業団―

水路や地下水でPFASが確認される中、その影響は水道水にも及んでいた。

公害調停申請書によると、三島浄水場では2009年に87ng/L、2010年に57ng/LのPFOS・PFOAが確認されている。三島浄水場は淀川を水源とし、大阪広域水道企業団を通じて周辺地域へ水道水を供給している。

重要なのは、水道水からPFASが確認されたという事実だけではない。これらの数値が測定されたのは2009年、2010年であるが、その年から汚染が始まったことを意味するわけではない。
第1章で見たように、ダイキン淀川製作所では1960年代後半からPFOAの使用が始まり、1980年代からは製造も行われていた。2012年に製造・使用が終了するまで、長期間にわたって環境中へ放出されていた可能性がある。
そのため、住民の間では「いつから曝露していたのか」「どの程度体内に蓄積しているのか」という不安の声が上がることになった。
PFASはどのように地域へ広がったのか
PFASが問題視される理由の一つは、その一部が人体の中で長期間残留することにある。PFOAやPFOSは体内へ取り込まれるとすぐには排出されず、長い時間をかけて少しずつ減少するとされている。そのため、低い濃度であっても長期間にわたって摂取が続けば、体内濃度が上昇していく可能性が指摘されている。

河川や地下水の汚染は目に見えにくい。しかし水道水は、飲み水や料理など日常生活の中で利用されるものである。そのため住民たちは、環境中の濃度だけでなく、自らがどの程度曝露してきたのかについても関心を持つようになった。

では、なぜ住民たちは血液検査や健康調査を求めるようになったのだろうか。

第6章 なぜ住民は健康調査を求めているのか

第1章から第5章まで見てきたように、ダイキン淀川製作所では長年にわたりPFOAが使用・製造されてきた。そして、環境中へ放出されたPFOAは、水路や河川、地下水、水道水へと広がっていたことが各種調査によって明らかになっている。

一方で、住民がどの程度曝露してきたのか、健康への影響はあるのかという問題については、十分に解明されているとは言い難い。

そのため住民たちは、公害調停を通じて環境汚染の実態解明や健康調査、継続的な環境監視などを求めている。求められているのは、単なる過去の検証ではない。いま何が起きているのかを知り、将来にわたって同じ問題を繰り返さないためのしくみづくりである。

米国ではすでに大規模な疫学調査や健康影響研究が行われている。一方、日本では血液検査や健康調査の実施は限られている。住民たちが知りたいのは、自らがどの程度曝露してきたのかということだ。

なぜ住民たちは血液検査や健康調査を求めているのか。次回は、PFASと健康問題について見ていきたい。

7月1日ダイキンPFAS公害調停第1回期日

大手空調メーカー「ダイキン工業淀川製作所」(大阪府摂津市)周辺で発がん性が指摘されるPFOA(上述の通りPFASの一種)が検出された。土壌や水質汚染が強く疑われることから、地元住民らが昨年12月に大阪府公害審査会に公害調停を申請した。健康調査や汚染除去対策などを求めるもので、来月7月1日が第1回期日となっている。
7日に行われた総会では、この問題に大勢の住民が関心を持っていることを示すため、審査会に申請人をはじめ、この問題に関心のある市民の参加も求めていた。
●日時 2026年7月1日 午後3時00分開始
●会場 大阪府咲州庁舎(ワールドトレードセンター内 大阪南港ポートライナー・コスモスクエア駅下車)
くわしくは、ダイキンPFAS公害調停をすすめる会にご確認ください。
06-6268-3970(代)

第3次申請人募集

ダイキンPFAS公害調停をすすめる会では、第3次申請人の募集を行っている。
「申請人になっていただける方」として、
摂津市およびその近隣の市町村にお住いの方または摂津市に通学、通勤その他一定の頻度でダイキン工業淀川製作所及びその周辺に出入りされている方または過去にそのような事実があった方で、淀川製作所からの汚染を何らかの形で受け、受けたおそれがあり、または今後受けるおそれがあると考える方(年齢、性別、国籍は問いません1)。
とされている。
くわしくは、すすめる会「ダイキンPFAS公害調停に参加される皆様へ」でご確認ください。

主な参考資料

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