医療機関の赤字・倒産が招く医療空白地帯の課題

コラム
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全国レベルで続く医療機関の赤字化

近年、「病院の赤字」「医療機関の倒産・休廃業」がテレビやニュースで繰り返し報じられている。背景には物価高・人件費増、医療人材確保の困難、診療報酬とのギャップなど複合的要因がある。
視点を利用者側に移すと、単に“医療業界の経営問題”にとどまらず、都市部を含む生活基盤の問題へ波及することが容易にわかる。

厚生労働省の統計※1からは、医療提供体制が静かに変化していることが見てとれる。2024(令和6)年10月1日現在、全国の病院は8,060施設で前年より62施設減少した。一方で一般診療所は増加しているが、これには地域差や新規開業の偏在があり、「必要な場所で必要な機能が残るか」とは別問題である。しかも、医療機関の「休廃業・解散」は2025年に823件と過去最多を更新し、その大半は診療所(661件)だ。つまり「病院の危機」と同時に、生活圏の外来診療を支える診療所の基盤が揺れている。


※1 厚生労働省「医療施設(動態)調査」概況(2024年10月1日現在)

「身近で診てもらえる」という日常が変わろうとしている

ここで見落とされがちなのが、中小病院や地域の診療所が担ってきた役割だ。自治体病院や大学病院は二次・三次救急、専門・高度医療の中核を担っている。一方、一次救急(軽中等症の夜間休日診療)や慢性疾患の継続通院、高齢者の急変時の“身近で受診できる場所”は、地域の中小病院や診療所、有床診療所などが支えてきた。これらが減少すると何が起こるか。第一に一次の入口が細り、救急外来や高次救急に患者が集中する。第二に慢性疾患の受診が途切れ、重症化して救急利用が増える。第三に通院先が遠くなったり待ち時間が増加し、高齢者世帯や低所得層、独居の人々の生活を直撃し、健康格差を拡大させる。病院が無くなることは、学校が無くなるのと同じく、生活圏の“定住条件”そのものを崩す可能性がある。

「都市部なら医療機関は多いから大丈夫」という見方もある。しかし都市部で起きるのは、地方都市のように広域で医療機関が無くなるというより、点としての空白が生まれ、それが交通弱者や孤立した世帯に集中的に影響する、という形だ。近畿厚生局が「保険医療機関・保険薬局の廃止一覧」※2を公開しているが、直近1年分を見ると、大阪府下で約350の診療所、約70の病院が廃止されている。大阪市に限れば、約100の診療所と約30の病院が廃止となっている。

※2 保険医療機関・保険薬局の廃止、辞退及び取消(相当)一覧

総合的な生活環境の整備という視点

この事態に対して、自治体はどのような対応をしているのだろうか。大阪府の第8次医療計画※3では、感染症や災害、有事対応、人口構造の変化、働き方改革などを踏まえて持続可能な医療体制の構築を掲げている。しかし医療計画では、病床機能や高度医療の体制が強調されやすく、生活圏の診療基盤(かかりつけ機能)や交通弱者のアクセス問題は、見過ごされがちだ。医療の「ある・なし」だけでなく、「通えるか」「継続できるか」「夜間休日でも安心か」が問われる。

※3 第8次大阪府医療計画(2024年度~2029年度)概要

昨年は特に、マイナンバーカード対応の義務付けにより、やむなく廃業を選択した診療所も多かった。現在の社会情勢を考えると、今後もこうした中小の医療機関の廃業は続くと考えられる。行政には存続支援だけでなく、生活圏を前提にした補完策が求められるのではないか。単に医療機関の体制だけではなく、介護医療と同様訪問診療・在宅医療の充実、あるいは遠隔医療の導入などを地域単位で埋めるしくみをつくる試みなども必要ではないか。医療政策だけで完結せず、福祉、交通、住宅、孤立対策など総合的な生活環境の整備という視点が求められはしないか。

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