市民の要望からほど遠くなっていく枚方市新庁舎整備計画

コラム
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ひとつの窓口やフロアで、複数の手続きなどを済ますことができること

現在ucoで「都市計画」のあり方として論考を進めている、枚方市駅前再開発の考え方。つい先日、伏見枚方市長が市民に駅前再開発について直接説明する「伏見市長が駅前再整備の魅力を語る会」が開かれた。その出席者から当日の内容を聞く機会があったので、市長の考える再開発と市民が駅前や市役所に求めていることについて、整理してみた。
第1回 枚方市駅前再開発問題を考える<1>
第2回 枚方市駅前再開発問題を考える<2>

枚方市駅前再開発の歴史は長い。2004年(平成16)11月に策定された「枚方市駅周辺整備基本構想」に始まる。駅前再開発計画の進行に並行するように2018年(平成30)に「枚方市新庁舎整備基本構想意見聴取会」が実施される。
2021年(令和3)1月には、駅前再整備と新庁舎整備の素案の市民説明会が行われ、パブリックコメントも実施されている。同年7月には、「4街区」民間活力導入エリアのあり方に関するアンケート」も実施されるが、議会の合意は得られなかった。
2023年(令和5)3月には、駅前再開発計画の改定案が出され、パブリックコメントが実施された。これと併せて、同年7月からは「枚方市駅周辺再整備に関する市民説明会」とアンケートが実施されている。
また2024年(令和6)9月には、2021年(令和3)に策定された枚方市新庁舎整備基本構想」に基づき市役所に求める機能に関する市民アンケート「未来の市役所アンケート」を実施している。
このアンケートの結果が7月に公開されており、先日行われた「伏見市長が駅前再整備の魅力を語る会」では、このアンケートの結果にを踏まえた市民や議員からの意見なども聞かれたという。

アンケートは、2023年(令和5)5月に発表された「枚方市駅周辺再整備基本計画―改訂版―」をもとに行われている。
現在、枚方市議会でも協議が行われている駅前再整備と新庁舎整備が合意できない最大の相違点は、その土地利用の非合理性にある。
計画案では次のように記載されている。
土地利用の方向性
【基本的な考え方】
  • 土地の高度利用を図るとともにゆとり空間や賑わいと地域活力の創出などメリハリのある土地利用
  • 地域資源や新たな都市機能などを有機的につなぎ、回遊性の向上や賑わい創出、定住促進を図る土地利用
  • 老朽化施設の更新と必要に応じた集約などによる効率的な土地利用
一見、都市開発として大きな問題があるようには見えないが、再開発に伴う土地の売買とそのことによる将来性にはいくつも疑問符が付く。下図の通り、再開発では5つの街区」が設定されており、特に市有地を含む4、5の2つの「街区」の土地利用に焦点が当たっている。
枚方市駅周辺再整備基本計画(2023年(令和5年)6月一部改訂)より「新たなまちづくりイメージ」
出典:枚方市駅周辺再整備基本計画(2023年(令和5年)6月一部改訂)より
「4街区」は枚方市有地。
「5街区」は北河内府民センター跡地で大阪府所有。
「3街区」は「5街区」にあった北河内府民センターが移転している。

駅前再整備と新庁舎整備目的の一つは、老朽化と行政規模の拡大で、市役所内の各機関が分散しており、市民にとっても職員にとっても不便で業務効率も悪い分散化を解消し、機能集約を図ることと考えられていた。
だが計画案では、北河内府民センター跡地の「5街区」を新たに購入し、市の新庁舎を移転。跡地となる「4街区」の市有地は民間デベロッパーに売却してタワーマンションを含む大規模な複合区分所有建築物を建てるようになっている。
昨年実施されたアンケートでは、新しい市役所本庁舎整備で優先すべきこととして「ひとつの窓口やフロアで、複数の手続きなどを済ますことができること」が54.8%と高くなっている。市民の多くが分散化による不便を強いられていることの表れでもあるのだろう。

現在「3街区」には北河内府民センターと枚方市駅市民室サービスセンターがある。センターでは、生涯学習交流センター、市駅前図書館、市民窓口センター、まるっとこどもセンター、男女共生フロア・ウィル、消費生活センターという機能がある。
本来であれば市役所機能の集約化を図るのであれば、「3街区」に近い「4街区」に新庁舎を含む市民サービスのための施設や機能を設置することが望ましいように思われる。しかし、再整備基本計画が考えるように、「5街区」に枚方市役所庁舎と税務署が整備されることになれば、市役所窓口の統合や各種の公共機能の集約とはならないことは明らか。2025年12月現在、市の「5街区」の土地購入については変更をしていないが、「4街区」の市有地は売却ではなく定期借地とする方針に変更している。

府有地購入は大阪府への便宜供与か?

では、新庁舎のために「5街区」の大阪府の土地を購入し、その費用捻出のために「4街区」の市有地を売却を図ったり、定期借地とするといったことに合理性や公益性はあるだろうか。地方自治財産法から見てもおかしいのではないかと思われる。
12月12日に行われた枚方市議会で奥野みか議員が次のような質問をしている。
枚方市議会議員 奥野みか 活動レポートより
今年12月に開催された大阪府議会総務常任委員会で注目すべき質疑があった。
大阪府は、北河内府民センター跡地を枚方市のまちづくりに協力するとの立場で、枚方市への売却を前提にしている。問題は、その売却価格である。大阪府は、枚方市のまちづくりに協力し早期移転したのだから、移転補償がされるべきとの認識を持っているようである。
その根拠として考えられるのが、2021(令和3)年2月、北河内府民センターの「3街区」への移転条例案提出時に、大阪府議会に示された資料である。そこには「府民センター跡地の収入(枚方市試算)」として、「枚方市(土地区画整理事業を実施予定)」として、「29.2億円(建物補償費込み)」と記載されている。そこで、この「枚方市試算」について伺う。
当時、どのような判断で、大阪府に当該試算額を示したのか。また、4年以上経過した現在、その見解はどのように変化しているのか、伺う。
枚方市の回答では、「試算内容としては当時の路線価などを用いて、跡地を約19.6億円、土地区画整理事業による建物などの補償額として約9.6億円、合計約29.2億円となっている。」という。

古い建物を解体して土地を更地として利用(再開発)する場合には、土地の価格から解体費用などの負の価値を控除して評価することが適切とされる「最有効使用の原則」がある。しかし枚方市の試算では、地代の約19.6億円に、本来価値のない建物の補償額として約9.6億円を加えたというものである。土地代が約20億円で、解体撤去しなければならない建物に約10億円支払うというのである。とすれば解体費用以上の補償費を支払うことになり、枚方市にとっては損失だ。

奥野議員は自身の報告書の中で次のように記載している。「大阪府有地の高値売却、枚方市の側から見ると高値買収を「有効利用促進」という名目の下、大阪府と示し合わせて進めてこられたのかもしれない。」

次回は、「伏見市長が駅前再整備の魅力を語る会」での市長と市民との意見の相違について見ていく。
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