大阪府・市が描く副首都ビジョンの先にあるもの-4

コラム
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日本維新の会の我田引水、「大阪市廃止」を目指す誘引のこじつけ「副首都構想」

自民党総裁選に絡み、日本維新の会が「連立」する場合の条件として、「社会保険料を引き下げる制度改革」と「首都機能の一部を移す「副首都構想」」の合意を掲げた。先週になって国会議員の定数削減の合意が一丁目一番地などと言い出したが、高市自民党は、これを丸呑みすることで「閣外」連立が合意に至った。ここにきて、維新の会の「副首都構想」ならぬ「大阪市廃止構想」実現が一歩近づいたと言えよう。

しかしだ、前回も改めて要点を押さえたように、この副首都構想は外ならぬ「大阪市廃止」を目指す都構想を何とでも実現させようとする、こじつけに過ぎない。別の言い方をすれば見え透いた無理筋でもある。

維新の会が再三にわたって「東京に匹敵する経済力と成長」を唱える。そして大阪こそが東京と対をなす車の両輪であり、大阪のけん引力をもって日本を成長させるのだ、と言い切る。どこにそんな事実があるというのだ。
ここに興味深い資料がある。国土交通省が「2050 年までに我が国の国土や人々の暮らしがどのように変化しているかを調査・分析し、今後の国土づくりの方向性について議論を」行った「国土の長期展望専門委員会」の「国土の長期展望」最終とりまとめとされる参考資料だ。国が政策を策定する基礎資料としたもので、ここでは各都道府県の生産人口一人当たりの成長率が示されている。確かに東京都を筆頭に総額としてのGDPは高く、稼いではいるのだが、これが一人当たりの成長率としてみると、地方の方がはるかに高い。全国平均が2.47に対し、大阪府は1.88、東京都は最下位の0.36となっている。
生産年齢人口1人当たり県内総生産(実質)の成長率(年率、平成24→29年)
出典:国土の長期展望専門委員会
これはそのまま県民の経済的豊かさにつながっており、工業生産や先進技術による経済成長だけが「経済的成長「につながっているわけではないことを表してもいると思う。下図は、「都道府県別の経済的豊かさ(可処分所得と基礎支出)」を表した都道府県別比較表だ。この表は、国土交通省が2020(令和2)年、東京一極集中の要因等について多角的な観点から分析・議論するために行った「企業等の東京一極集中に関する懇談会」の議論で使用されていたもので、東京都について述べられているが、大阪府についてみてみよう。
全世帯の可処分所得で大阪府は38位。この時点で大阪府民全体が豊かさを感じられないほど成長していないことが明らかとなっている。中央世帯(各都道府県ごとに可処分所得の上位40%~60%の世帯)に限っても37位と他府県に比べ低い。なおかつ、基礎支出と可処分所得との差では44位となり、いかに大阪府において経済的に低迷状態にあるかを如実に物語っている。一概には言えないが、地方都市の中にこそ、今後の成長の基盤があるようにも見える。
都道府県別の経済的豊かさ(可処分所得と基礎支出)
出典:国土の長期展望専門委員会

バックアップ機能としての副首都に求められるもの

これまで4回にわたって維新の会の提案する「副首都」について検証してきたが、本来首都のバックアップ機能、あるいはBCPとしての代替機能を求めるとき、どのような都市が適しているのかという点から考えてみた。別に対案ではなく、国土交通省が東京一極集中対策として議論した資料をもとに洗い出してみた。
まず自然災害リスクの少ない場所が適していることは言うまでもないが、少なくとも太平洋沿岸地域は複合リスクが高い場所と位置付けられている。
それは、自然災害リスクの高い場所として、東京・横浜、名古屋、大阪・神戸が占められていることから、大阪が適地ではないと、少なくとも国土交通省の資料から見て取れる。
東京における災害リスク
東京圏では広範囲で地震によるリスクが想定されるほか、地震以外のリスクと2項目以上の災害が
重なるエリアも分布している。
出典:国土の長期展望専門委員会
下図は、企業が東京都以外で本社事業所の移転先として考えた場合の対象となる移転先。どうしても東京圏内が多く、それ以外が少ない。とはいえ、関東近郊あるいは時間的にも距離的にも近い北陸、中越などは十分考えられるのではないだろうか。
本社事業所の配置見直し(移転)のメリットと対象移転先
また、災害時の代替地として考えた場合、地域内のエネルギー、食料自給率や水源が十分に確保されていることも重要と思われる。災害時には必ず電力供給力が問われる。地域内の再エネ供給力がエネルギー需要を上回り、地域外に再エネを販売できる地域は、首都機能代替地として高いポテンシャルを持っているとは言えないか。同時に食料や水などの供給力の高さこそ、災害時の中央拠点にふさわしいのではないか。

政府には、特定政党の謀略による提案ベースではなく、現実のBCPをベースとした本来の首都バックアップ適地を検討してほしいものだ。
再生可能エネルギー導入ポテンシャル(市町村別)
再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱など)の導入ポテンシャルは、都市部より地方部で高い。
出典:企業等の東京一極集中に関する懇談会
食料自給率
カロリーベースの食料自給率は北海道、東北の一部が100%以上であり、その他地域は100%を下回っている。
特に三大都市圏で低く、東京都は1%。
生産額ベースの食料自給率は、地方で100%を上回る地域が多い。
出典:企業等の東京一極集中に関する懇談会
水資源賦存量の都道府県比較(平均年)
出典:「令和2年版日本の水資源の現況」(国土交通省水管理・国土保全局水資源部)より国土政策局作成
平均年における1人あたり水資源賦存量(降水量から蒸発散によって失われる水量を引いたものに面積を乗じた
値)は、東京都や大阪府で少なく、北海道、東北、北陸、中国、九州南部など、地方部で多い。
出典:企業等の東京一極集中に関する懇談会
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