マンション防災訓練の「次」をどうつくるか

進化する自治 vision50
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町会とは異なる分譲マンションでの防災

分譲マンション(以下マンション)における防災訓練は、町会とは少し性格が異なる。
そこには必ず、「管理」と「自治」という二つの軸が存在するからだ。

非常用発電機、受水槽、エレベーター、防災倉庫。
多くのマンションは、設備という点では、地域の中でも比較的恵まれている。
しかし一方で、それらの設備を「誰が」「どこまで」「判断して」使うのかという点になると、途端に曖昧になる。

防災訓練は行われている。
だがそれは、設備の説明会で終わってはいないだろうか。
あるいは、管理会社主導のマニュアル確認に留まってはいないだろうか。

地区防災計画の観点から見ると、
マンション防災訓練には、もう一段深める余地がはっきりと存在している。

避難しないことを前提にする防災

マンション防災を考えるうえで、
まず共有すべき前提がある。

多くの居住者は、避難所へ行かない。

行かないというより、
「行かなくて済む」「行けない」「行く必要がない」
そう判断されるケースが大半である。

つまり、マンション防災訓練の本質は、
避難訓練ではなく、
「建物の中で72時間をどう耐えるか」を共有する訓練である。

これは町会防災とは、スタート地点が異なる。

次のステップとして見えてくる論点

避難所開設訓練の延長ではなく、
マンションだからこそ浮かび上がる論点がある。

例えば、

  • 非常用発電機は、停電後いつ、誰が、どう動かすのか
  • 管理会社と連絡が取れない場合、判断権限はどこに誰にあるのか
  • 管理規約は、非常時にどこまで柔軟に扱えるのか

これらは、平時にはほとんど意識されない。
しかし災害時には、必ず問題として表面化する。

重要なのは、
結論を出すことではなく、境界を確認することである。

設備を「動かす」訓練へ

マンション防災訓練で、
次に進むための最も現実的な一歩は、
設備を「説明する」訓練から、
実際に「触ってみる」訓練へ移行することである。

  • 非常用発電機の起動を、実際にやってみる
  • 非常照明がどこまで点くのかを確認する
  • 給水ポイントまで、実際に歩いてみる

これだけでも、
「使えると思っていたものが、意外と使えない」
「思ったより時間がかかる」
といった現実が見えてくる。

また年1回の消防訓練をうまく利用して、
防災訓練を重ね合わせるという手もある。

単にチラシやパンフを配るだけではなく、
実際に手を動かし、体を動かして
時間を共有することが訓練の基礎になる。

無理に合意をつくらない

マンション防災で最も気をつけるべきは、
訓練の場で合意形成を急がないことである。

ペット同行避難。
在宅勤務者の役割。
高齢者世帯への支援。

どれも重要なテーマだが、
正解を出そうとすれば、必ず摩擦が生じる。

だからこそ、防災訓練ではこう割り切ってよい。

  • 結論は出さない
  • 意見が分かれた点を、そのまま残す
  • 「決めきれないこと」を共有する

これだけで、災害時の混乱は大きく減る。

マンションの役割とは何か

マンションは、地区防災計画において、巨大な在宅避難拠点である。

マンションが自立して72時間を耐えられるかどうかは、
地域全体の防災力に直結する。

マンション防災訓練の「次」とは、
設備を動かすことそのものではない。
判断の境界を、平時に確認しておくことがスタートラインなのである。

<山口 達也>

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