食の主権を支えるもの――都市農業と自治の役割

コラム
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いま「食の主権」を考える

ucoが掲げる「vision50」では、都市農業を重点課題の一つとして位置づけている。それは、都市における農業振興を広げようという意味に限っているわけではない。
いま私たちが直面しているのは、食が安定して生産・調達され続けるという前提そのものが揺らぎ始めているという現実であり、そのなかで都市農業が果たす役割を「公共」として考え直したい、強く言えば定義を書き換えようという試みだ。

生産も調達もが不安定な社会情勢

近年、気候変動や災害の影響によって、農産物など一次産品の生産が不安定になる事例が増えている。猛暑、豪雨、干ばつといった極端な気象は、もはや一時的な例外ではなくなった。2025年は、世界平均気温が史上3番目に高い年となり、「異常高温の年」と位置づけられている。
この傾向は今後も続くと考えられ、農業だけでなく、都市で暮らす生活者の食にも確実に影響を及ぼしていく。

国際情勢の不安定化と物流リスク

加えて、国際情勢の不安定化は、輸入に依存した食料調達の脆弱さを浮き彫りにしている。平時には効率的に見えるしくみも、物流の停滞や外交関係の変化によって、一気に機能不全に陥る可能性を抱えている。
生産と調達の不安定さは、すでに「想定外のリスク」ではなく、日常的に考慮すべき前提条件となりつつあるのではないか。

肥料・農薬の輸入依存という構造

こうした中、私たちが「何を食べられるか」が、実は外部の力によって決められていることに気づくべきだという現実だ。
日本の農業は、肥料や農薬の多くを輸入に頼っており、生産の前提条件そのものが国外に依存している。
また、2024年度以降に顕在化した米をめぐる混乱が示すように、投機や投資目的によって、食料価格が左右されるリスクも現実のものとなった。
これは、生活者が直接関与できないところで、食をめぐる条件が決められていることを意味する。

食の主権が脅かされている時代

ここで問われるのが、「食の主権」という考え方である。
食の主権とは、単に何を買うかを選べることではない。「どのように生産され、どのように調達され、どのように手にするのかを、生活者自身が関与できる状態」を指す。

食の主権を「自治」として再構築する

この食の主権は、市場や民間の努力だけに委ねられるべきものではない。食は、エネルギーや防災と同様に、社会の基盤を支える公共的な領域であり、「自治の問題」としてとらえ直すべきではないか。
行政の役割を、食を管理することから、生産者と生活者の関係が成熟し、持続するための土台を整えることへと一歩踏み出せないか。

その起点として、都市農業が持つ意味は大きい。
都市農地は、大量供給を担う存在ではないが、生活者が生産の現場に関わり、食が生まれる過程を共有できる貴重な場である。
都市農業は、食を「買うもの」から「関係のなかで支えるもの」へと捉え直す契機を与えてくれる。

生活者は「消費者」から「参加者」へ

重要なのは、生活者を消費者の立場にとどめないことだ。
作付けや育成、流通のあり方に関与し、不作や失敗も含めて共有する。
そうした関係性の積み重ねが、結果として、生産と調達の不安定さに対する現実的な備えとなる。


食の主権を支えるものは、特別な制度や理想論ではない。それは、都市農業を軸に、生産者と生活者がつながり、行政がその関係を公共として支えるという、「進化する自治のあり方」だ。
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