町会防災訓練の「次」をどうつくるか

進化する自治 vision50防災・減災
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1月17日。
阪神・淡路大震災から31年目となった。

あの震災で、多くの人が人生の羅針盤を失い、あるいは変更を余儀なくされた。
私もその一人である。
それでも今、こうして生きているという事実を胸に、
この1年への感謝と、次の1年をどう生きるかを考える一日となっている。

これまで本ブログでは、地区防災計画について様々な角度から書いてきた。
その中で、最も多くの人が「体感」できる具体的な場が、防災訓練である。

今回から3回にわたり、
毎年行われている防災訓練を、一歩だけ深めるとしたら何ができるのかを整理していきたい。

避難所の外へ目を向ける訓練へ

毎年、町会を中心に防災訓練が行われている。
倉庫を開け、毛布を並べ、段ボールベッドを組み立てる。

それ自体は非常に重要であり、否定されるものではない。
ただ正直に言えば、「それだけ」で終わっている地区が多いのも、また事実であろう。

地区防災計画の観点から見たとき、
地域の目標は、単に避難所を開くことではない。

「避難所に行く前の72時間(3日間)を、地域としてどう耐えるか」
そこに本質がある。

もちろん、避難所開設訓練そのものが、
人手不足や高齢化によって現状維持すら難しい地域も多い。

しかし、もし避難所開設訓練が一定の手順として固まりつつあるなら、
次の視点は、避難所の中から、地域全体へと視線を戻すことである。

72時間を想定した、次のステップ

例えば、72時間を想定した場合、
次のような視点が考えられる。

在宅避難者の把握訓練

避難所に来ない人は当然いる。
それ以上に、来たくても来られない人は必ず出てくる。

高齢者、障害のある人、ペット世帯、外国人世帯。
「来ない人をどう把握するのか」という視点を持てない限り、
訓練はどうしても現実味を欠いてしまう。

初動72時間の役割分担確認

避難所が機能するまでの間、
誰が・何を・どこで判断するのか。

町会長、防災リーダー、民生委員、自治会役員。
実際には被災してみないと分からないことだらけであり、
役割を決めていても、怪我などで動けなくなる可能性もある。

それでも、
どんな役割が必要になりそうかを、事前に共有しておくことには大きな意味がある。

情報の流れを可視化する訓練

LINEは使えるのか。
掲示板は誰が貼るのか。

そして訓練後に、
「情報が届かなかった人がどれくらいいたのか」を振り返る。
これも、地区防災計画を現実に近づける重要な工程である。

それでも、盛り上がらないという現実

ただし、これらは避難所開設訓練以上に地道で、
地域活動としては、どうしても盛り上がりにくい。

そこで本稿では、
地区防災計画と避難所開設訓練の間を、町会というスケールで一歩だけ埋める方法を提案したい。

地域の現実を「見える化」する

最初にやるべきことは、
避難所の運営練習ではない。

地域の現実を、少なくとも参加者全員で共有することである。

具体的には、次のひとつだけでいい。

訓練に来なかった人を、思い浮かべる時間をつくる

名簿を読み上げる必要はない。
ただ、「今日は来られなかったけれど、気になる人」を
各自が頭に浮かべてみる。

高齢の一人暮らし。
足腰が弱くなってきた人。
外国籍で日本語が十分でない世帯。

これを、地図や白紙に丸シールで示すだけで、
地区防災計画では拾いきれていない「空白」が、はっきりと見えてくる。

無理なく行うために

大阪市の場合、防災訓練後にアンケートを実施し、
集計・取りまとめを行うことが事実上義務付けられている。

しかしこれは、見える化というよりも、
報告業務のための作業となってしまい、
町会が疲弊させられているケースも少なくない。

町会の防災訓練に何かを付加する際に最も大切なのは、
新しい作業を増やさないことである。

おすすめなのは、
いつも自然に起きている光景を、そのまま訓練に組み込むことだ。

  • 訓練後の立ち話を、5分だけ公式に残す
  • 「困りそうなこと」を口に出してもらう
  • まとめ役は置かない

当然、立ち話なのでとりとめもない。
議事録も、結論もいらない。

「そんな事情があったのか」と知ること自体が、
町会の防災意識を高めるための、大きな第一歩となる。

町会だからこそ、「続ける」ことが重要

町会の防災訓練が固定化してしまう理由の一つに、
失敗しないために役割が固定されすぎているという問題がある。

同じ人が、同じ立場で、同じ説明をする。
それでは、どうしても疲弊してしまう。

そこで、発想を少し変えてみてはどうだろうか。

  • 防災担当を「毎年変える」(防災リーダーは固定でもよい)
  • 少しでも若い世代に「今年のやり方」を決めてもらう
  • 計画は完璧を目指さないと合意する

防災訓練は、正しさよりも、続くことの方が重要である。

「町会」という存在

町会は、
避難所を開設し、運営するための組織ではない。
行政の代わりに防災訓練を行う組織でもない。

しかし、
「誰が、どこで、孤立しそうか」を最も早く察知できる存在である。

地区防災計画は、
町会のこの力があって初めて、現実に機能する。

避難所開設訓練で終わらせない。
その一歩先を、町会からできることとして、考えてみよう。

<山口 達也>

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