「万博の運営収支、最大280億円の黒字見込み」に はしゃぐ関係者の見識を疑う
先週10月7日、日本国際博覧会協会が、大阪・関西万博の運営収支が230億~280億円の黒字になる見通しと発表した。この会見の中で当協会の十倉雅和会長が、余剰金の使い道について「科学技術の発展や命の大切さといったわれわれが訴えてきたことや皆さまに感動していただいたものを残すために使っていければ」と、あの大屋根リングの保存に使うような話をしたという。(「万博の運営収支、最大280億円の黒字見込み 大屋根リングなど再使用へ」電波新聞デジタル 2025.10.10)
いやいや、そんなことを勝手に決めてもらっても困るし、まずまず大屋根リングを残すことは、そのツケを大阪市民に押し付けることに他ならない。まだ議会にも図られもしていない「大阪市の公園にする」などという話も寝耳に水の話ということを忘れてもらっては困る。大阪府知事がなんの権限を持って大阪市の公園にすると言ったのか、そのこと自体からして市民を置き去りにし馬鹿にした重大な越権行為だ。
当の吉村府知事に至っては、当日のsnsで以下の通り
万博、赤字になったらどうする!と散々言われましたが、結果、
「約230億円~280億円の黒字」
となる見込みです。大きな黒字です。
もし、赤字だったら、今頃、メディアから連日猛批判の日々だったでしょうね。
万博の成功は赤字黒字だけではありません。未来社会の共有。やって良かったと思います。
などと喜び勇んだメッセージを出しているが、黒字と発表されているのは「運営費」だけであり、その運営費も実際には、警備費や途上国出展支援費など、本来運営費とされていた費用を国に負担してもらったり、会場で大発生したユスリカ対策費などは、予備費から出されている。本来運営費として負担しなければならなかった費用総額はおよそ1655憶円となってる。今回の発表では、運営費が50億円ほど減額できたとしており、支出が1110億円、収入が1389憶円(いずれも見込み)で約230億円~280億円の黒字が出る見通しとしている。しかし本来負担すべき運営費で見れば、210億円強の赤字ではないか。国に負担してもらったまま「黒字、黒字」と騒いでもらうのも困った話だ。その付け替え費用は、税負担。要は国民の税負担で黒字になったものを余剰金と称し、それをいずれ解散してしまう協会で勝手に使い道を決めてしまうというのも、あまりにも国民を馬鹿にした話ではないか。
十倉雅和会長や石毛博行事務総長、副会長を務める吉村副知事など協会トップの見識は、その程度のものなのか。
運営費どころか、expo2025はロゴやキャラクターのカラー通りの大赤字
報道やsns上ではこの運営費と万博の収支について大賑わいだが、はっきり言って大阪・関西万博、大阪府・市民や国民にとっては大赤字の災いだ。内閣官房国際博覧会推進本部事務局が2025年2月に発表した「大阪・関西万博に関連する国の費用
について(Ver.3)」と、同じく2月に大阪府市万博推進局が公開した「大阪・関西万博に要する府市の費用について」をもとに今回の万博ならびに関連事業費にかかった費用を改めて見直してみた。
大きくは3つの分野に分かれているのだが、総額14兆1250億円にも上る。
以下の表は国と開催自治体の負担と明細



インフラ整備を除いても 国の予算とは別に大阪府市で負担している額が、運営費とは別に1440億円もある。
大阪府を除く他府県の国民は、国の負担分だけだが、大阪府民は、それにプラス大阪府府民税を、大阪市民は、それに加えて大阪市民税をそれぞれ負担することになっている。要は、その費用分を本来市民サービスなどに使われるべき税金が、万博や夢洲開発に消えていったのだ。
開催前には万博の経済効果が喧伝されていたが、実際には、大阪府や市内で消費されたであろう支出が、万博に付け替えられただけという評価も目にした。一時のイベントで経済が上向くなどというのは幻想だというのは、50年前の大阪万博後の大阪経済の沈滞で証明されていたはずなのに、学習機能のついていない自治体トップによって、2度目の経済沈下を見ることになるかもしれない。
都市にとって「にぎわい」は必要かもしれない。しかしこんな重い負担をすることが市民や地域のためになることではないことは確かだ。