ucoは、2021年より大阪の行政や地域コミュニティ、地域内で起こるくらしに直結するさまざまな出来事に対して、「自治」というフィルターを通して市民の視点から情報発信を行ってきた。
そうした中で強く感じてきたのは、市民や地域にとって行政が遠い存在であり続けているということ。例えば公園の運用について見てみよう。
公園から考える市民と行政の関係
大阪城公園をはじめとする大規模公園では、民間事業者(私企業)が公園全体の管理運営を担う「PMO (Park Management Organization) 事業」を導入し公園の維持管理や運営を委託している。公園全体の管理運営を一体的に行うことで、効率的な運営や効果的な魅力向上を図るとしている。が一方で、施設整備の名目によりレストランなどの商業施設を設置し、そのために樹木の伐採や市民が利用できるエリアが狭まるなどが発生する。PMO事業導入に関しては市民が事前に詳細を知らされることなく事業者が決定され、市民の意見は聞かれることもなく公園内の施設変更が行われた。天王寺公園では植物園が撤去され、公園の全周に商業施設が立ち並び、中央は芝生だけになっている。これを由とする方もおられるだろうが、公共の各公園内で比較的高額な利用料金を払えば施設利用ができるが、払えなければ利用できないという格差を生んでいることに違和感を覚える。
また中小規模公園では、市民(個人・団体)による公園の利活用を進める「パークファン事業」が2021(令和3)年より実施されている。公園を拠点とした地域コミュニティの活性化や地域交流などを目指して導入されたものだが、「公園の管理や運営に利用者が主体的に関わることを促す」というように、行政の視点と行政が管理しやすいしくみとなっている。そのため、飲食販売、ワークショップ、音楽イベントなど幅広い用途で公園を使える一方で、募集・企画書提出・審査と申し込みから決定までのリードタイムが長く、希望する時期に実施できるとは限らず、活動内容によっては利用できる公園も限定されている。活動の幅が広がったとはいえ、公共公園なので当然だが、営利イベントが自由にできるわけではない。この事業においても試行期間があったのだが、しくみは行政が決定し告知されるだけで、この制度を作るにあたって市民の声が反映された痕跡は見当たらない。
つまり、大規模公園であれ中小規模公園であれ、実際に利用する市民の声を反映させる制度もなければ、積極的に声を聴き、反映させようとする意識もない。市民と行政の間にはとても高い壁があり、声を届けようとすれば、あからさまに敵対するような態度をとられることもある。市民権や市民自治を自治体行政に取り入れようとする流れが起こっている2000年代以降において、市民のための公共施設や公共性の高い事業について市民の声を聞こうともしないことに大いなる失望を感じている。
進化する自治を構想する
市民に身近な公園のような公共施設や学校の統廃合、また再開発に伴う街空間の改変などにおいても、計画に際して地域の市民や市民団体を交えたコミュニケーションは必要ではないだろうか。例えば「大阪市緑の基本計画〈2026〉(案)」といった事業計画などでは、市民の意見募集としてパブリック・コメントが実施されるが、多くが「聞き置いた」、あるいは市民の意見は反映されないまま計画が進むといった、「意見は聞いた」というアリバイづくりとして利用されることもしばしば見受けられる。
さて、コロナ禍を経て2023年から、ucoは「進化する自治」をテーマにさまざまな情報発信や講座を実施してきた。
これまで住民参加と言えば、法的に定められている意見書の提出や公聴会への参加、パブリックコメントでの意見発出、審議会で委員として参加するなどがほとんどである。従来の住民参加の手法では、住民の意思や意見が反映される場面は少なく、あくまでも行政の意思や裁量によって進められているのが現状といえる。
しかし、地方自治は地域の自由権であり、住民自治は市民の自由権である。自治体行政はその住民の自由権を尊重し、住民は地域の自由権のためにその担い手となる権利を持っている。
ucoは、より発展した住民の行政参加を妄想し、模索する。行政の事業計画の早い段階での住民の参画に門戸を開くことで、その計画が固められてからではなく、早い段階で住民の意思をとらえ、住民にとってもより自由度の高い事業計画が行われ、住民が実感する自治運営となることを願う。
みんなでつくる大阪へ
ucoは大阪の現状をより良くしたいと願っている。大阪という街が強い住民自治を取り戻すことで、大阪の未来を切り開くと考えている。行政に頼ったり、強い指導者の出現を待つのではなく、市民、住民の一人一人が自らの力を信じて一歩踏み出すことで、道が拓けると信じている。
そのため、ucoを一つのきっかけとして、少しでも市民の声を行政に反映させようとする個人や団体が集まり、話し合えることを始めたい。
地方自治行政の多くは、市民生活に直接かかわっている。都市交通や上下水道などの事業体から、教育、環境、医療、介護、防災など。それぞれが生活だけでなく、まちづくりや地域社会と深くかかわっている。一般に、マスコミでは事件や今回の新型コロナ感染どの事件級の課題については報道される。しかし、地域で進められている行政の方針や、住民自治に関連する事柄について取り上げられることはごくわずか。
ucoは、なかなか声にならない地域の課題や住民自治の課題を大きな声にしていくことで、地域の課題やまちづくりに、多くの市民やコミュニティの意見を反映し、行政にコミットできる「みんなでつくる大阪」になってほしいと願う。