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夢洲に集客施設、観光開発は危険

夢洲開発問題
夢洲懇談会記者会見
取材
UCO

港営会計の破綻から大阪財政が危機に陥る
市民団体が大阪府市や万博協会との協議経過と最新情報を報告

東京2020/オリンピック・パラリンピックが閉幕しました。無観客、空港での検疫、毎日の検査など、世界的な大型イベントは、コロナ以前とは全く違う風景を映し出したと言っていい。ワクチン接種が進んでいる海外においても、コロナ以前の飲食やイベント開催は難しく、感染者、発症者を0にすることはできていないのが現状です。

大阪においては、大阪湾に浮かぶ人工島「夢洲」を会場とする国際博覧会「大阪・関西万博」と大型観光施設「IRカジノ」に向けて急ピッチで開発が進行中。夢洲のまちづくり構想は2017年に発表されたもので、IRカジノでは年間1500万人の集客を、万博では半年間で2800万人の動員を、そして13万2000人の無雇用を創出し、経済効果は一兆一千億円を見込むというものです。だが、これらは、すべてコロナ以前に計画されたもの。2000年以降、saasをはじめとして、さまざまな感染症の発生が世界経済や公衆衛生の脅威となってきました。そして新型コロナウイルスです。飲食業をはじめ、中小の商工業へのダメージは大きく、経済と雇用は危機的状況にあります。大阪府も市も税収減は避けられず、今後支出増も予想がつかない中、財政圧迫が危惧される状況となっています。

こうした中、夢洲の都市計画変更に伴い結成された「夢洲の都市計画変更を考える市民懇談会(略称:夢洲懇談会)」と「大阪カジノに反対する8団体懇談会」が、大阪府政記者クラブにて記者会見を開催。これまで大阪府・市、日本国際博覧会協会(以下博覧会協会))とさまざまな局面で質問と協議を重ねてきた現時点での報告が行われました。

硬直的な対応が目立つ国際博覧会協会

冒頭、この9月2日に行われた博覧会協会との協議結果を報告。コロナ禍に対する検討や環境アセスメントの現状、会場建設費の増加と収支、SDGsの具体的な方針など6項目にわたる質問書に対する口頭での回答では、検討中、協会とは関係ない、回答できないなど不明確で、硬直的な対応が目立ったという。中でも、コロナ禍で面談での協議ができない中、書面での回答を求めたにもかかわらず、書面での回答は行われず、今後も検討するという回答しか得られていないという。

また、「SDGsが達成される社会をめざす」という大阪・関西万博において、SDGsに精通したアドバイザーや職員が設置されていない中で、環境アセスメントが進められていることについて、「方法書の中に全くSDGsが入っていない。環境アセスの中にどういうふうに具体化していくのかが見えてこない。」など、このままで先進的な環境アセスメントができるのか疑問があるとされた。

両市民団体では、大阪都市計画局に対しても、

  1. 1. コロナ禍の中、「夢洲都市計画及び開発事業」は議会で再検討されるべき。
  2. 2. 「都市計画審議会」に差し戻して再審議すべき。

の2項目からなる「夢洲の都市計画」に関する質問及び申し入れ書を8月7日付で提出。

コロナ禍で財政圧迫が明確になり、市民生活への影響が危惧される中、夢洲開発への巨額の公共投資を進めてよいのか。
また、当初「IRカジノ」は「2025年万博」と同時開業としていたものの、複数の事業者撤退により公募事業者は1社、しかも開業は2020年代後半、展示施設、宿泊施設、会議場なども大幅削減や協議対象となるなど、2年前に都市計画審議会で決められた内容から大きく乖離している以上、差し戻すことが不可欠だとしています。

大規模集客をするような環境にはない人工島・夢洲

特に、1987年から始まった夢洲の埋立、開発においては、埋め立てを規制する法律がなかった。ガイドラインができた2006年以前に埋め立てられた建設残土や産業廃棄物、河川の浚渫土砂などがあり、PCB、ダイオキシンといった有害物質がどのような状態にあるのかが全く考慮されていない点が指摘された。
また、地盤の沈降についても関西空港島の止まらない沈下を例に、防災面でも危険性が高く、大型観光開発を行い、大規模集客をするような環境にはないことが強調された。
また環境だけでなく、夢洲の性急な埋立と開発が財政を圧迫していることも指摘された。
ひとつは資産と負債の関係。いま一つは、収入と支出の関係。
当初得られるであろうと思っていた収入の目途が立たなくなっている点。夢洲を埋立整備した土地を販売、あるいは賃貸することで収入とするはずであったが、万博のための土地確保とIRカジノによってこの6年間全く販売も賃借もできていないという。今後収入のない中、どうやって事業を継続するのか目途が立たなくなっている。それは通常10月と3月に提示される港営会計の計画表が発表できなくなっていることから明らかであるという。
一方、資産と負債の関係では、夢洲の埋立でこれまで投入した費用が借金として6000億円を超えると予測されている(現在大阪市に情報公開請求中)。
もともと170ヘクタールを売却予定地としていました。これまでに売却された総額は、約32億7千万円。そのうちの100ヘクタールをカジノに使うと言い出した。カジノ事業者に対しては、当初売却としていたものが賃貸に変更。年間24.5億円で35年間の契約とされている。これでは、総額が1030億円程度にしかならない。では、残りの70ヘクタール=70万平方メートルの土地で5000億円を賄わなあかんとなると、いったいあの土地なんぼで売らなあかんねん。東京23区のマンションと同じくらいの値段で売るような掲載になるから、それはできない話、となると借金返せない話。それを、もう出来上がったからしゃぁないやんで済ませていいのか、と。

これまでの万博協会との協議においては、情報公開、パートナーシップの観点において、非常に問題のある姿勢だなと感じているという発言があった。環境アセスメントにおいても後ろ向きな姿勢に終始している。このままではカジノとビッグデータ(によるスーパーシティ特区)をつくるために万博をするようにしか見えない、と締めくくられました。


夢洲を舞台とした関西万博とIRカジノについては、市民、府民の負担も大きな負担となることが明らかになってきています。
世界的に大きな方向転換が行われようとしている今、20世紀型の開発、コロナ以前の計画遂行、イベント型経済を続けて市民の安全や、生活を守ることができるとは思えません。
今回は記者会見の速報版として掲載しましたが、これまでの取材を通じて収集したデータも検証しながら、夢洲開発の問題点や大阪市の財政問題をクローズアップしていきます。。

記者会見の全貌はアーカイブでご覧いただけます。
UCOアーカイブ | 20210907 記者会見ノーカット版「夢洲に集客施設、観光開発は危険」

[関連情報]

「夢洲の都市計画変更を考える市民懇談会(略称:夢洲懇談会)」
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