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学校再編に揺れる生野区西部地域 田島中学校

中学校の運動場のど真ん中に5階建の小学校新校舎を建築中

大阪市は、生野区西部地域の小学校12校を4校に、中学校5校を4校に統廃合する計画をすすめています。
市は学校構成として、「学校規模の適正化」、「単学級解消」、「小中一貫教育」を掲げ、小中学校は一旦「リセット」。「新たな学校」をつくるとしています。
中でも生野区では、平成29年(2017年)7月、生野区がめざす教育内容と環境整備案を示した「生野の教育」を公表。
「生野の教育」3つのキーワード
自立(自律)学習
チーム学校
キャリア教育

「生野の教育」3つのキーワード

自ら課題を設定し、学ぶ力・やりぬく力を育てる「自立(自律)学習」
人生100年時代の「キャリア教育」
教育活動をサポートする外部連携を充実させる「チーム学校」
を生野から発信するといいいます。

そうした教育の実現させるる施策として、小中学校の「リセット」と「単学級解消」、「小中一貫教育」を進めると説明します。

大阪市は「学校規模を適正化」「すべての小学校をリセット」

減少する児童数と学級の対策として2020年、大阪市は小学校の学級数の適正規模を「学級数が12から24までであること」と条例で規定しました。
自治体が教育委員会に条例で児童数など学校規模を規定することは、行政の教育介入で、問題視する声もある内容です。
こうして学校規模を適正化するとして、小学校の統廃合が進められています。
生野区では、西部地域の小学校12校を4校に、中学校5校を4校に統廃合。
そのひとつが、生野南小学校と田島小学校は廃止し田島中学校と統合する計画で、新たに小中一貫校を設置し、2022年4月開校を目指しています。
2020年度の児童数は 生野南小学校 11学級177名、田島小学校 11学級211名、田島中学校 152名。
適正とされる学級数に1つ足りないが、ただそれだけで廃校としてよいものか、甚だ疑問が残る内容です。
というのも、小中学校は教育機関というだけではなく、地域と密接にかかわっている住民が共有する社会資産です。特に小学校区は地域コミュニティの基礎単位となっており、小学校区を基本に防災拠点を設置したり、防災訓練や地域の生涯学習などが行われたりしています。子どもたちが成長する過程で、学校教育が行われる場であると同時に、地域コミュニティの一員としての自覚や地域活動の重要性を学ぶ場でもあるのです。それゆえ、小学生の人数で一律に学校規模を規定し、条例によって統廃合を進める方法は、強権的と言えます。当事者である児童、保護者、地域住民と話し合いを行い、合意形成を行っていくことこそ、市の行政に求められるものです。

⽣野区⻄部地域学校再編整備計画

公開されている図面をもとに実際の建築後の校舎を3D化

新校舎は、現在の中学校敷地の中央にあたる運動場を2分する形で、5階建てとして建築されます。
建築面積1,184平米、高さ21.345メートル
運動場面積は従来の約7,200平米が、西側の約720平米、東側の約5,300平米の2つに分断され縮小されることになります。
西側は低学年の利用を想定、東側は高学年としているが、中学生も利用します
これまで150名程度の中学生が利用していた運動場が2/3程度の大きさになったうえ、約4倍弱ともなる540名もの児童・生徒が利用することになります。
ユーシーオオサカでは、公開されている図面をもとに実際の建築後の校舎を3D化。
「増築校舎による既存校舎への日影等の影響が大きくなる」という課題も、実際にはかなり大きな影響を受けることがわかります。また、視覚的にも圧迫度は高まります。

小学校校舎新設前

小学校校舎新設後

市でも「西側の運動場に角がなく狭いため、球技のコート等の設置が行いにくく、利用しにくい。体育で使用する運動場が1つになることからカリキュラムの工夫が必要になる。」と認識しており、提案時すでに課題のあることはわかっていました。

当初、市は「田島中学校の校地は本市の他の施設一体型小中一貫校と比べて狭隘であり、必要な施設改修を行うと十分な運動場面積が確保できないといった事情等を総合的に考慮して、田島中学校の校地での施設一体型小中一貫校の開設は困難だと判断した」と説明していました。
しかし、その後、通学路の問題も含め、田島中学校での整備を再度検討してほしいとの意見を反映させ、調整して田島中学校の校地での小中一貫校の案を提示することになったと言います。

この提案により、田島小学校の再編の話が、通学時間や通学路の問題から「小中一貫校」へと変化。しかも「皆さんから田島中学校地での小中一貫校の提案があり、検討を進めてきたものです。」とあたかも保護者からの要望により、市としてはするつもりはなかったが、「小中一貫校」したと説明しています。

再度紹介しますが、大阪市の方針は、「学校規模を適正化」、「単学級解消」「小中一貫教育」。保護者からの要望というには、あまりにも無理があります。

市は、保護者たちの不安や疑問を残したまま議論を打ち切った

市は、2018年1月より保護者・地域住民との意見交換の場として「田島中学校区将来の学校を考える会」を立ち上げ、7回にわたり実施。9月の第7回で「さらに議論を深めたいテーマ等の意見もないことから、将来の学校を考える会を閉会とする。」として打ち切りました。しかし、この時点でも、「子どもが減った原因は交通が不便なためであり、学校再編について再考を依頼していたが明確な返答がない。」「児童数は過去の予想より増えており、新築の家も増えており若い世代が増えていると感じている。」など多くの不安や疑問の声は出されており、保護者や住民の声を聞くことなく、行政の思惑通りに進めているという声が上がっています。

これまで7回実施された「田島中学校区将来の学校を考える会」の進行と説明を見ていくと、市側の説明には矛盾することが数多くあります。

「生野区の課題として、小学校入学前後の時期に転出している子育て世帯が多いという状況にあります。」とし、「魅力ある学校づくり、子育てのしやすいまちづくり、災害に強いまちづくりを進めていきたいと考えています。」と説明しています。しかし、学校再編により、地域の不動産会社は小学校が近いというメッセージを出さなくなり、地域の教育環境をアピールしなくなっています。また、避難所でもある学校が存続できないかもしれないことから、まちの人の多くは、防災面の低下を危ぶんでいます。

「複数学級の話とあわせて学級定員についても議論してほしい。」という声に対し、「「40人学級」は、国が定めている「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律(標準法)」以下の法令に従」っている。「区(あるいは市)独自にその基準を変更することはできません。」と説明しています。しかし近年、青森県や山梨県など15道県では、1学級25人とするなど独自に少人数学級を拡大しています。

跡地利用について、市では民間事業者に賃貸する方向で検討。まちの関係者からは、「校舎の維持管理が難しく、校舎の一部は使用せず潰す話になっている。」という事例を紹介。維持管理には年間500万円程度必要としており、その維持管理費を拠出できないとしている。これについては生野区長自らもインタビューで「単に避難所として残すと管理費だけで1校当たり年間約500万円かかる。区の財政で9校分に相当する年4500万円の予算を出し続けることはできません。」[日経BP社 新・公民連携最前線]と答えている。しかし、一方で「1校につき約4 400万円が不要になります。」とし、「再編により生み出される効果額(財源) は、これら(教育、子育て、防災の柱で総合的なまちの活性化)の実現に向けた 資源として活用していきます。」と説明しています。では2校で8800万円もの財源からどうして維持管理費が供出できないのか、全く説明がされていません。

行政が教育を条例で縛り、保護者や住民が十分に納得できるまでの合意形成を図ることなく推し進める小中学校の統廃合。
「他の施設一体型小中一貫校と比べて狭隘」と認識している中学校に、保護者から再整備の要望があったためとして進めている新校舎の建設。
1校当たり年間4400万円の費用効果が見込めるにもかかわらず跡地の維持管理費用を拠出しようとしないなど、市の説明には矛盾や疑問が数多く見られます。

2010年ころから「決められない政治」という言葉が発せられ、強いリーダーシップを発揮して山積する課題を前に進めることこそ、良い行政であり、正しい姿であるかのような言説が見られるようになりました。確かに、国政においては、政治的な駆け引きや党利党略的な動きや調整能力の欠如などがあるのも事実です。しかし地方行政や住民と密接にかかわる地方自治においては、行政と住民間とが納得できる話し合いこそが重要です。
時間がかかりすぎる、あるいは、反対する住民との話し合いが進まないから条例を作って強制的に事を進めるというのは、住民自治をないがしろにして突き進む「決める政治」の姿でしかありません。

ユーシーオオサカの掲げる「NEXT OSAKA」は、住民と行政が誠意ある態度で議論を進め、お互いが高い調整能力を発揮し合意形成を進める、住民自治の形です。
強いリーダーにすべてを任せるのではなく、住民が主体的に行政にコミットすることのできる自治のあり方です。特に市民の財産でもある学校のあり方を決める場合には、より深くかかわることができるようにすることが必要と考えます。
生野区の小中学校統廃合について、市は当事者である保護者や住民に対して、もっと誠意ある態度で説明し、合意形成を図る必要があります。