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「住民の意思を聞け」。大阪カジノ誘致の賛否を問う住民投票を求める署名運動へ市民が立ち上がった。

直接請求署名運動
記者会見
取材
大阪府記者室

府下15万人が必要、条例制定の直接請求署名運動

2022年2月21日、大阪府記者室で「カジノの是非は府民が決める 住民投票を求める会(以下もとめる会)」が大阪のカジノ誘致の賛否を問う住民投票を求めて、直接請求署名運動を3月25日から実施すると発表しました。
現在、大阪市、大阪府ともに2月、3月議会で、夢洲を立地とするIRカジノ誘致に向けた「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画(案)(以下区域整備計画案)」承認のための議決を行おうとしており、可決される見込み。
大阪府・市両議会で承認されると、その後4月28日までに国に対して申請が行われ、夏ごろには申請承認されるかどうかが決定するといいます。
府・市が区域整備計画案をWebサイト上に提示したのが昨年末12月21日。サイト以外は各市区役所。積極的な広報は一切されていません。また同時に重婚への説明会と公聴会の実施も行うことが掲載されましたが、これについても十分な告示期間を設けたり、積極的に知らせるということなく、1月7日から行われ、説明会に至っては、コロナ感染拡大を理由に4回を残して中止されました。
求める会は、このような拙速な行政の進め方に対し、説明責任を果たしていないばかりか、大阪府民・市民が直接自らの意思を表明する場が奪われた、と憤っています。

会見では、共同代表6名の中から3名が出席。
大垣さなゑ氏(作家)は、「なぜこの時期に、無謀なチャレンジをするのか」と紐解き、「私たちは間接民主制、二元代表制が崩壊している大阪では、府・市民が直接自らの意思を表明する場は奪われている。署名を集めることで個人から個人に呼び掛けて、多くの人の声を集めて大きくしたい」と呼びかけました。

また、西澤信善氏(神戸大学名誉教授)は、「説明会、公聴会では、住民の意思を聞け、という言葉が多かった。計画を見ると、巻き上げたカネを経済効果といっているが、巻き上げられる負の経済効果について言及していない。この計画の経済効果の実体を精査する必要がある。」と負の経済効果について明言しない府市の態度に不信をにじませていました。

会社経営の中野雅司氏は、計画案が当初から大幅に縮小されていることに言及「展示や会議を中心とするMICE部分が1/5に縮小された。インテックスの半分にもならないみすぼらしい規模で本気でするつもりがあるのか。当初いっていたもものとは全くの別物 似て異なるもの。もう一度民意を問うべきではないか。」と発言しました。

もとめる会では、提示された区域整備計画案が、当初市民に説明していた内容から大幅に変更されていることや、立地としている人工島の夢洲に土壌汚染や液状化の問題が新たに発生したとして、事業者に土地を提供する側の責務として、市が土壌改良費を負担するなど、変更内容についての説明も、費用負担についても、市民が納得できるようにするのが行政としての責務だが、それに向き合おうとせず、議会だけで話を進めようとすることに重大な問題があるといいます。
そのため、カジノ誘致の是非を住民が判断できるよう、明確な説明を行ったうえで住民投票を行うよう、条例制定のための直接請求署名運動を実施することを本格的に開始するとしました。

「住民投票条例制定直接署名」は、地方自治法で決められた制度で、住民が有権者の50分の1以上の署名をもって、条例の制定(または改廃)を自治体の長に請求できるものです。今回は大阪府が「IR事業者との実施協定締結」をすることの是非を問うものとなり、大阪府内の有権者の1/50、約15万人の署名が必要数となります。
もとめる会が計画している署名収集期間は、3月25日から5月25日の62日間。※豊中市、泉南市、河内長野市、泉佐野市では、この期間中に自治体選挙が行われるため、62日間より短くなるとされています。

「IR、カジノに税金は使わない」に反して膨らむ巨額の公費投入

当初、IRカジノの誘致に関しては、吉村知事と松井大阪市長はIR事業者が大阪に1兆円の投資をしてくれる」「IR、カジノに税金は使わない」という説明を幾度となくしてきています。しかし昨年末、誘致予定地としている夢洲の土壌改良のために790億円もの公費が使われることが判明。人工島である夢洲は、建設残土や浚渫土砂、市民のごみを含むさまざまな廃棄物の最終処分場として機能させてきた土地。そのため、もともと準工業地としての利用として、コンテナヤードなどの大阪の港湾施設を主体として利用してきた土地です。それを万博とカジノ誘致を行うため、わざわざ用途変更をして商業地として利用できるようにしたのは大阪市です。昨年2021年1月には、大阪市のボーリング調査により、安全基準値を超えるヒ素やフッ素が検出され、予定地も汚染されている可能性が高いことが発表されています。大型ホテル建設など土壌を深く掘るため、再調査を行い、どれほどの土壌汚染があるのかを明確にする必要が出てきました。同時に別の調査では、液状化の恐れがあることもはっきりとします。こうした土地であることは、当初からわかっていたことであり、松井市長が「何でもありやったのか」などと嘯くなど茶番でしかありません。
市民の間では、当初から「夢洲は危険」「南海トラフ地震が来たら観光客に大きな被害が出る」と訴えていました。果たして2021年末に予算化が判明した790億円だけで、土壌汚染と液状化対策はできるのかは疑問です。また、之だけでなく、カジノ誘致のための夢洲整備費用は、都市を追うごとに増えていく可能性が出てきています。市民団体である「どないする大阪の未来ネット」が情報公開などを重ねて試算したところ、「万博」・「IR・カジノ」のための夢洲開発費用の2021年度試算は、994億円だったのに対し、2022年度試算では、1931億円と増加。さらに4年後の万博跡地の土壌改良費として788億円も既に予算化されており、これを合わせると2719億円もの巨額の公費が使われようとしています。(別表1参照)

資料作成   どないする大阪の未来ネット  事務局

このような巨額な税金投入が判明することに対し、疑問と同時に、このままでは大阪府市は財政破綻するのではないかとという思いがよぎる住民も出始めています。

公聴会で9割が反対意見を出す問題が多い区域整備計画案

1月7日から始まった住民への説明会では、年間入場者数を2,000万人(約54,000人/日)などとするIRカジノの収支計画に対する疑問や、35年間+30年間を可能とする長期契約(マカオでは10年ごとのチェックと更新)、医療へのアクセスが島内にないなど、計画そのもののずさんさや経営に対する不安が数多く意見として出されたが、IR推進局は真摯に答えることなく、書面に書かれた内容を繰り返すといった応答に終始しました。また公聴会でも説明会でも吉村知事、松井市長はもとより、IR推進局の局長すら出席しない傲慢ぶりを示していました。
公聴会ではは4回開かれましたが、1回の公述人は9~10人、一人5分間とされ、少しでも過ぎると職員が発言を遮るなど、市民の想いを一方的に遮るという態度でした。現在負のWebサイトで説明会、公聴会の発言と回答が掲載されており、そのあきれ果てた応答ぶりがよくわかります。

「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」(案)に係る説明会https://www.pref.osaka.lg.jp/irs-kikaku/setumeikai/index.html
「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」(案)に係る公聴会https://www.pref.osaka.lg.jp/irs-kikaku/kocyokai/index.html

「市民一人一人が大阪の未来を決める主権者」

住民投票でいえば、大阪市議会において、2月10日の本会議で、「大阪市におけるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致についての住民投票に関する条例案」が提出されています。市議会の自民党会派が議員提出した議案で、大阪市民にIRカジノ誘致の賛否を問う住民投票の実施を求めるとしていました。大阪市の責任として夢洲の土壌改良を行うことを掲げ、IRカジノ用地の開発整備に大阪市の公費負担を増大させることを問題視。住民投票を実施して市議会はその結果を尊重するべきとしたが、大阪市議会では、市長以下最大会派が「大阪維新の会」であり、自民党会派の住民投票議案は、委員会付託もなく即日採決。「大阪維新の会」と公明党会派の反対で否決されました。この議案に対しては、提案されている住民投票議案を採択するよう求める市民からの陳情書が100件以上提出されており、これ自体も異例のこととなっているにもかかわらず、その声は届きませんでした。
このように大阪府議会も市議会も特定の政党の長が主張を務める結果となっており、二元代表制という間接民主制が崩壊しています。そのため、市民・府民の意見が全く反映されないばかりか、声が届くこともなくなっているといっても過言ではありません。

もとめる会によると、昨年の6月以降、何度となく住民投票のの実施についての意見が出されていたが、衆議院選挙を挟むなどの諸事情で見送られてきていたといいます。しかし、12月以降の拙速な行政の進め方や巨額の公金支出が明らかになるなど、この計画そのものに対する不信と不安が高まる中、2021年12月から2022年1月初旬にかけてカジノ誘致に反対する市民や団体と「住民投票」について意見交換を重ね、1月30日「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」準備会を発足するに至ります。
2月20日(火)個人の呼びかけによる『カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会』の発足集会が実施されています。
この発足集会で以下のような取り決めが確認されています。

  • カジノの是非を問う「住民投票」を実現することを目的とした個人の呼びかけで設立
  • カジノに反対する多数の大阪府民が自主的に参加し、つながる運動にする
  • カジノ誘致に反対してきた多くの団体の運動について共に取り組み連携する
  • 本来の自治体の役割を取り戻す
     カジノ誘致ではなくコロナ対策など大阪府民の命と生活を大切にする府政への転換
     カジノ経済ではなく、モノづくりの街大阪 地場産業を育成◎雇用創出し誰もが安心して暮らせる大阪へ

国に申請後に住民投票請求をすることはどう有効なのか

今後の実施スケジュールをくわしく聞いていくと、5月25日に署名集めを終了後、「実施協定締結」前に法定数を集め、「住民投票」条例制定を請求することになるといいます。
たとえ、大阪府が「区域整備計画」を国に提出した後であっても、審査段階、若しくは承認後でも、「実施協定」が締結される前に「住民投票条例」制定を請求するとしています。それは、「住民投票による市民意思の判断を行うまで実施協定締結の手続きを凍結せよ」「カジノ賛否を問う住民投票請求がおこなわれている最中に行政手続きを進めるな」という、大きな世論形成を作りだすようにしたい。また、初夏から秋にかけての全府民的な大運動展開。参議院選挙の争点に押し上げる力になればよいとの判断もあるといいます。また、条例案としては、日本で暮らす外国人も署名できる条例案にしたいと、オール大阪での住民投票にしたいとしました。

「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」https://vosaka.net/

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