市民活動

カジノ誘致住民投票条例 府議会による否決は住民自治・民主主義軽視

カジノ誘致問題
住民投票条例
取材協力
住民投票をもとめる会

7月29日、この日大阪府臨時議会が開催され、「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」が大阪府に請求していた、住民投票条例制定の請求が議会にかけられました。

この日の早朝から府内各地で住民投票条例の審議・採決と住民投票の実現をアピールする街頭宣伝が行われました。

府庁前でアピールする市民たち

府庁前でアピールする市民たち


府庁前でアピールする市民たち

議会開催に先立ち、午前10時からは、署名活動を行ってきた受任者や、活動の支援者たちが府内各地から府庁前に集結。府庁舎を取り囲むように数百人が住民投票実現をアピールしました。請求代表者をはじめとする多くの府民が代わる代わるマイクを握り、21万筆の署名の重みや、豊中市議会で住民投票実施を求める請願書が採択されたこと、国内で最も死者を多く出してなおカジノに固執しおざなりとなっているコロナ対策への批判、議会開催前に府民との面会を断り続ける吉村知事や維新の会議員への批判、ギャンブル依存症で苦しんでいる現場の声など、さまざまな方が府民の声を聞け、住民投票条例を実施せよと声を上げました。

傍聴券をもとめて長い列に並ぶ府民

議会傍聴券が12時30分から配布される予定でしたが、1時間以上前から大勢の府民が列を作っていました。用意されている傍聴席は52席。そのうち6席が意見陳述人分として差し引かれることになっていました。意見陳述人は傍聴者という位置づけは、府民の代表者は議会には招かないという府議会の意思のあらわれではないでしょうか。

住民投票を否決した大阪府議会

住民投票を否決した大阪府議会

13時から開会された議会ですが、本来開かれてしかるべき委員会の開催については、開かないという前提で議事が進められました。同じく2021年に住民投票条例を請求した横浜市では、政策・総務・財政常任委員会が設置され、会期も3日間で行われました。いきなり本会議のみで議決するという、本来行うべき審議の実施を否定する議会運営にあきれるばかりです。

また、本会議においてもあらかじめ代表質問という形式で行うことが決められ、5人以上の会派でなければ質問もできないという、少数派の議員を排除する理不尽で、非民主的な議会となっていることが明らかになりました。

休憩後、請求代表者6氏の意見陳述が始まりました。ただし、意見陳述は6人で合計30分という短さ。一人5分足らずという、ここでも府民の代表をできるだけ議会から排除しておきたいという意図が垣間見れました。

意見陳述する「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」の山川義保・事務局長

意見陳述する「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」の山川義保・事務局長

一人目の山川義保事務局長は、上記のような議会運営に対して抗議。21万人を超える署名と署名はしなかったけれどもカジノには反対だという多くの府民の声の重みを受け止め、住民投票を実現するよう訴えました。また、井上眞理子氏(豊中市)は、府議会の議決が決まったのちに行われれた署名は、議会の議決に対しての不満、承認しがたいという府民の気持ちの表れであり、住民との合意形成ができていないことの表れでもあると訴えました。また、ギャンブル依存症患者を持つ家族、子どもたちへの視点を持ってほしいという意見。公聴会では9割以上がカジノ設置に反対の意見を述べ、説明会はコロナを理由に途中で打ち切られた実態を述べ、議会で十分に審議されていないことを踏まえ、21万の署名に込められた、住民投票を実施してほしいという府民の切実な思いをくみ取った上で、十分な議論と条例制定への賛同をもとめました。

地方自治法や住民の直接請求の重みと意義について語る井上眞理子氏

地方自治法や住民の直接請求の重みと意義について語る井上眞理子氏

続く代表質問については語ることもはばかられるほど形骸化した茶番が演じられました。住民への十分な説明が行われたのか、土壌改良費の790億円の公金が投入されること、ギャンブル依存症対策など、請求者の懸念や疑問に対して、これまでカジノ設置を前提に進めてきたIR推進局や担当部局に質問。これまでIR推進局が市民に対して説明してきた内容を繰り返すだけで、何ら具体的な対策については語られませんでした。とくにIR推進局とはこれまで幾度も質問書を出し、面談を繰り返してきた市民団体からは、市民が投げかけてきた質問に対して向き合おうとせず、紋切り型の答弁を繰り返しているという批判が寄せられました。

吉村知事は、今さら住民投票は必要ないという発言を繰り返すばかり。「IR誘致計画は、大阪・関西の持続的な成長のエンジンとなるものだ。整備計画は議会での十分な議論を経て議決され、法が求める手続きを適正に進めており、改めて住民投票を実施する意義は見出しがたい」と言い切った。

3時間余りの長い休憩をはさんだのちの議決では、大阪維新の会と公明党、自民党の反対多数で否決され、議場には怒号が飛び交いました。

議会終了後、住民投票をもとめる会では、事務局内で記者会見を実施。記者会見では、意見陳述者5名がそれぞれ議会そのものと否決に対する意見が述べられました。

否決されたからこの運動が止まるわけではない、今後もカジノ誘致の中止を訴えた記者会見

否決されたからこの運動が止まるわけではない、今後もカジノ誘致の中止を訴えた記者会見

山川事務局長は否決に対する声明文を読み上げ、否決されたからといってこの運動が止まるわけではないとし、もとめる会として今後もカジノ誘致の中止を訴えていくと明言。山口美和子氏(堺市)からは、国はギャンブル依存症患者一人あたり、医療費や生活保護費を含め60万円という費用を支出し続けている現実を語り、日本をターゲットにしたカジノ事業者に行政が食いつく、こういうことはあってはならないと訴えました。
子ども食堂を運営する四條畷市の山本啓一郎氏からは、ギャンブル依存症の親を持つ子どもが夢をあきらめ不幸になるような政策をする大阪は特異であると発言。
年金者組合として運動をしている加納忠氏(高槻市)は、市民運動で地域から世界を変えていかなければならないことを痛感し、この運動に参加し呼びかけたと語り、この運動が大阪の市民活動の新しいステージを拓いたとしました。
高松昌子氏(枚方市)は、この住民運動は府民の心に火をつけたことを言いたかったとし、手続きさえすればそれでよしとする府議会のあり方を批判。これをもっと府民に知らせ、私たちの想いをしっかりと聞いてもらえるような運動にしたいと締め括ました。

最後に、今後は国に対して認可しないことをもとめたり、この日提訴された住民訴訟(夢洲カジノ土地契約差止請求)との連携を図るなど、さまざまな運動を展開していくとしました。

新着記事・番組

  1. カジノ誘致住民投票条例 府議会による否決は住民自治・民主主義軽視

  2. 吉村知事との面会を頑なに拒み続ける府職員 行政の長も職員も府民の声を受け取らない姿勢が問われる

  3. カジノ誘致の賛否をもとめる210,134の府民の声、いよいよ府に請求

  4. 大阪府庁を取り囲む550人超のヒューマンチェーン。住民投票の実現をもとめる府民の声が高まった

  5. 夢洲の圧密沈下による地盤沈下

  6. 3/25地方自治最悪の事例を追認した不当判決。

  7. 「住民の意思を聞け」。大阪カジノ誘致の賛否を問う住民投票を求める署名運動へ市民が立ち上がった。

  8. 本渡章の「古地図でたどる大阪の歴史」~「区」150年の歩み 第2回 番外編 府と区都市の関係について再考

新着ブログ

  1. 本渡章の「古地図でたどる大阪の歴史」~「区」150年の歩み 第4回 大阪港湾エリア 近代港の発展 港区・大正区・此花区の成り立ち

  2. 夢洲の地盤の圧密沈下問題

  3. 子どもがいて、地域があって、学校がある

  4. 大阪に欠けたるもの

  5. 『世界』3 月号特集 2「維新の政治」を読む