食と農

農業のある大阪の未来02:ナカスジファーム

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ナカスジファーム
中筋秀樹さん
取材
UCO

農業のある大阪の未来02
モノづくり、コトづくりの先へ

富田林市
ナカスジファーム 中筋秀樹さん

 

大阪府富田林市、110年以上営農されているナカスジファームさん

大阪府富田林市。大阪市内からだと車で40分程度の距離にある。大阪府の南部、南河内地域に位置する人口11万人程度の中核市で、古くから農業が盛んであった。道路が整備され、中小企業団地や工場が立ち並び、地域には飲食をはじめとするサービス産業が多くなっているが、それでも市内には多くの農地が広がっている。

市の北部の一角にあるナカスジファーム。中筋秀樹さんで4代目の110年以上富田林で代々農家を営んでおられる。周年でなす、きゅうりを生産されている。
なすは主に千両なすと呼ばれる「大阪なす」のほか、みずみずしく生食のごちそうナス、まん丸の形が特徴の京まんじゅうや30cm以上にもなる大長ナスなど10種類ものナスを育てておられる。独自のマークを持たせてブランド化を図ったり、JGAP認証を取得。また、農園の中にバーベキュー施設を設置し、収穫体験ができるようにしたり、生産だけでなく、いかに生産したものをアピールしていくかを模索されている。

Q:なすを中心とお聞きしましたが、どういった特徴があるのでしょうか。
「千両なすが中心で、土地柄がなす栽培にあっているのか、また農法が評価されているのか、品質的に高評価を受けており、高級な百貨店から一般ののマーケットまで幅広く受注を受けている。
大阪なすの特徴は、ボリュームが売りで。大きいからというて大味かというと、そうではなくて大きくてふんわりして、やわらかくて、口の中に入れた時にとろけるような味わいがある。
作り方に特徴があると思っている。
普通の自然交配したなすを大きくすると種が入るんです。僕たちは、ハウス栽培でハチなどの虫が受粉することもないので、ひとつひとつ人工授粉をしないと実がならない。人工授粉することで、ぶどうで言う種なしぶどうのような実がなる。種が入らない栽培をしているわけで、これがすごく手間がかかる。最近だと生産者が高齢化していく中で、その作業負担がしんどくて、この農法をやりたくてもできない人が増えている。
対処療法としては、路地で作ることと、ハウス内で作るとしたらハウス内にハチを飛ばして受粉させる。
ナカスジファームでは、外国人研修生をはじめ、就農を希望する若い人が多く働いている。
農園の年齢層が若いということは、こうした栽培作業をこなせる人材が豊富であるということでもある。なので、いい品質のなすを栽培することが可能になっている。
けっこう年齢層も高くなって、地域として守っていくために頑張っていかなければならないと思っている。」


昭和の時代には、ずいぶんとのどかな田園風景が広がっていた富田林市も、道路整備がされ、都市化が進んでいる。農地もまだまだ多くあるように見えるが、耕作地の転用は進んでいるようだ。また農業が抱えている「農業従事者の高齢化」や「後継者不足」は、ここでも大きな課題となっているという。それでもこの富田林のあるという地の利を生かした農業ができるといいます。

Q:近郊農業ではどんなところに工夫されているのでしょう?
「富田林市の農家は、大阪市や府下の各都市を販路とする近郊農家。地方の農家と比べあからさまに農地が狭いという点。狭くて農地も限られている。ナカスジファームでも3/4は借地で、高齢で跡継ぎのいない農家さんの地主さんから借りる形で生産している。限られた農地で、収益の上がる農業経営をしようと思うと、いかに小さい面積で高収益になるような作物を選択するか、ということに絞られてくる。
農地が限られるという中で、都市化が進み、目の前にビルなどが建ち日影ができると、それだけで作物が作れなくなるということもある。
最近では開発がかかってきて、長い時間をかけて土づくりをしてきた農地が、たい肥作りのできたいい土地がアスファルトに代わってしまうようなことになる。
地主さんにすると、開発がかかって土地が喜ばしいことになるんですけど、僕らにしてみたら大事な農地がなくなっていくという不安の中にいます。

こういう近郊農家のデメリットというのは、逆にすべてメリットにもとらえられるわけで。都市化が進むということは、自分たちの作った野菜が身近で消費される環境が整っていくということにもなるわけですよね。
鮮度のいい状態で、最終の消費者までの到達点までが早い。全国各地の地域のように10トントラックいっぱいまで積まないと運賃コストが合わないということもない。僕たちだったら直接納品ができるとか、配送コストが抑えられる環境が整っている。かつ、農閑期になったら町がすぐ近くにあるので、遊びに出かけることも簡単にできる、と。そういう都市農業の魅力的な立地は、農業をするにはやり方次第では最高の立地かな、と思ってます。」

Q:農業は担い手不足、後継者不足と言われていますが?
「高齢化で後継者がいないという課題は、全国的に一緒なんです。
新規就農する場合、地方に行くと条件はいいんですよ。「農地用意してます」、「農家用住宅も用意してます」、「農業機械用意してます」、「1年間の生活費補助します」みたいな環境の整ってる素晴らしい条件を出してくれてるとこがあって。大阪の場合、そういう環境を整えることはまずないんですけど、それには理由があると思ってて。地方でやるとそこまで用意しないと来てもらえないという、過酷な状況にあるのかな、と。
どちらかというとビジネスチャンスやというとらえ方の観点があって、都会で暮らしながら農業のある暮らしを求めることも可能。
都会の近くで、農業をビジネスとして頑張ろうという可能性を秘めてるとこもある。
うまくやっていくと大阪で農業は、ほんとうはいいんじゃないかと。いまになって気づいていますね。

以前は地方の方と同じような農業スタイルをやってました。採ったものを箱に詰めて、それを市場に流して、だれか買うてください、で終了していた。それを、こんなに身近に直接売るチャンスがある、自分たちの工夫一つでお客様を呼び込むこともできる。発信も近くでできる。インターネットで発信できるということもありながら、それが実際リアルに近い環境にあるということも地域のメリットかなと思いますね。
フルタイムで働ける環境を農家が提供できるようになってきて、そうした中で安心した所得を得られるように持っていける体制までする必要はあるんですけど、毎日悩みながらの経営ですね。」


特産の大阪なす、きゅうりの産地として評価を受けているものの、このままでは、将来的に産地の維持すら難しくなる未来がすぐそこまできていると語る中筋さん。この地での農業の維持・発展に向けた貢献意欲を持ってやってきたが、いち農家としてできることは限られている。だからこそ、共同で地域農家を支援するための法人を立ち上げることになりました。

Q:新たに設立された法人についてお聞かせください
「ナカスジファームは、父親から引き継いだ農園は、この地域でも規模が大きくて、もともと農家であるナカスジファームが近隣の農家さんをを助けていた。ハウスの張り替えとか、人がいないとできない作業などを、以前は農家でグループを組んでやっていたんです。高齢化でどんどん作業のできない方が増えて、若い人材のいてる農園を頼られるようになったんですね。で、地域を守るためにやろうということでやっていたけど、メインは農家なので、18年の台風被害のように、うちも含めて全部の農家が被害にあうと、助けに行きたくても、自分のところも被害にあっていてできない。本来は、助け合いができてこそバランスがとれるんですけど、一方通行のことが多くて。
こういう状況だと共倒れになりかねないので、農家同士の助け合いではなくて、そういった作業を統制を取って動くような法人を作らないとだめだよね、というので作ったのが「おおきにアグリ」という法人です。
現状はナカスジファームが下請けをするような形になっています。が、実際は「おおきにアグリ」という中に地域の農家さんを助けに行くような部隊をつくって、忙しい農家さんを助けに行くような、季節によってはハウスのビニールの張り替えがある、季節によっては苗の植え付け作業や収穫作業があるというような。会社の中で作りこんだ人材が動けるようなことを目指している。
新規就農される方が、自分で農業はじめて、自分で作って物ができるまでってすることないんですよ、成長するまで。そういうときのその人たちの副収入になればいいなと思ってるんですよ。
農業やりながら、なかなか1年間仕事を作ることが難しいので、そういう方にとって、他の農家さんのお手伝いに行って、自分の更なる能力を身につけながらお給料もらえる。そういう仕組みを作っていくと、地域の農家さんと新規就農の方とコミュニティもできあがってくる。新規就農の方が可愛がってもらって、高齢化になった農家さんが「おれもうやめるから、お前この農地面倒見てくれへんか」とか、そういうことって接触回数を増やしながら、人間関係を築きあげてこそ成り立つんです。
行政が窓口になって「こういう農地空きました、農地いりませんか」、ではつながらんのですよね。それをだれがやるのかって考えた時に、それを身近で常に見てる、その情報を常に持ってる農家である自分たちが橋渡しをしないとつながるわけないんですよね。ただ、それを農家としてやって、優先順位を間違ってはいけないので、法人を作ったわけです。
いま農業塾を立ち上げていく中で、土台となる役割を担っているわけです。」


新規就農したい人もみんな同じじゃなくて、家族経営のような農業を考えている方もいれば、ある程度の規模でビジネスとしての農業経営を目指している人もいる。受け入れる農家とのミスマッチで、就農につながらないこともある。学びたい方が学びたいことを学べる環境づくりが始まりました。

Q:新規就農者の支援をする「きらめき農業塾」とは
「新規就農の方というのは、農地もなければ、栽培技術もなければ、農業につながりのある環境をお持ちでない方がチャレンジしようとされてはるわけで、そういう環境の整った自分たちがサポートして助けてあげないと、なかなかレールに乗れない。
農家の跡取りが跡を継がない、環境が整っていてもやらない。いまの時代になってサラリーマンの人たちが「農業したい」って来られるわけですから、感覚的には変な感じがあったんですけど、そこが見直されてきたんだなっていうことと、自分たちの仕事にも、いまこそ魅力を発信する時期なんだろうなとやり始めて。
最初、手探りでやり始めたんやけど、共通に学べるものと、学びたい方が学びたいことを学べるような環境を作らないといけないなということで、いま農業塾を立ち上げたんですよ。
僕の持っているノウハウがすべての人に通用するわけではない。求めておられることと、こちらが提供できることのミスマッチを防ぐためにグループで作ろうということを始めた。
そういう課題の中で、独立就農目指して頑張る方がいらっしゃるというのが軸にある。今後農業が発展していって、私たちの農業所得も上がっていくのであれば、農業で勤めるというのもあるんじゃないかなと。
実働は、地域の農家さんの協力者を集めてます。本質的なカリキュラムは農家さんが作るわけです。
最低限の基礎となるスキルレベルとなる教科書は用意してますが、その日の天気、その日の状況によって、作物のコンディションによってやる作業は変わるんだよ、ということを学んでもらわないといけない。そういうことを学んでもらうための塾を作りこんでいます。
大阪に都市農業基本法ができたこともあり、農地は大阪にあるべきものに立ち位置が変わったこともあって、僕たちにとっても、都市に住まわれている方にとっても、農業を楽しむ環境づくりというのを発信していかなくてはならない。本気で後継者を作るためのコースと、貸農園とか体験農園を通じて、週末家族で野菜を収穫に来たり、畑仕事を楽しむその二本立ての環境づくりを僕らはやろうと思っています。」


都市にこそ「農」が欠かせない

インタビューを終えて。

近郊で農業生産ができるているからこそ、鮮度が高く、おいしい野菜が手に入る。地場産品が入手できるお店や、取り扱っているマーケットがあれば、それらを買うことで、少しでも生産農家を支えることになる。大阪という大都市であるからこそ、その人口を支える農家がほんとうは必要です。

2015年、農水省と国交省が打ち出した「都市農業振興基本法」。これに基づき「都市農地を、これまでの「宅地化すべきもの」から、都市に「あるべきもの」」と明確にした「都市農業振興基本計画」が閣議決定されたのが2016年5月のこと。国の流れに沿って各都道府県などが各々都市農業振興基本計画が策定され、大阪市でも昨年2020年9月に「都市農業振興基本法」が制定されている。取り組む施策として、担い手の確保と土地の確保が挙げられている。
がしかし、基本法や計画ができたからと言っても、さまざまな開発が一様に止まるわけでもなく、すぐさま担い手が増えるわけでもない。

インタビューの中で中筋さんが語っておられたように、行政の農地に対する立ち位置が変わったことで、近郊農業には追い風となる面が出てきているかもしれない。
しかし、国や行政の方針とは別の次元で、農業は息づいている。都市型開発が行われ、宅地転用が進み、高齢化とともに耕作放棄地が増えていった。中筋さんが進めておられることを聞いていると、ここ30年間で生産人口が減少し、疲弊していく中で、確実な世代交代が起こっていることを感じた。
それも、長年富田林という土地に根付いた農家だからこそ、見えていることもあるだろうし、同年代で同じような志を持つ仲間の農家があることも大きい。
話の中で出てきた法人「おおきにアグリ株式会社」が行っている新規就農支援事業の「富田林市きらめき農業塾」。ここの研修受入れをしている17農家は、40代が中心で、農業経験は平均16年という。それぞれ規模もタイプも異なりはすれど、富田林市の農業の未来を開いていこうという気持ちが、新しい試みを進める力になっている。こうした地域に根付く農のコミュニティが、行政だけでは進められない、時代に沿った流れを作ろうとしている。行政にこそ、こうした試みに対する後方支援を行ってほしいものです。
いま、富田林市から、都市に向けた、また都市生活者に向けた新しい関係づくりが始まっている。


[関連情報]

おおきにアグリ株式会社


視聴者プレゼント

ナカスジファームさんのナス詰め合わせを直送でお届けするクイズを実施しました。正解者の中から抽選で、3名の方にナカスジファームさんのなすをプレゼントいたしました。
また次回をお楽しみに。【応募締め切り2021年7月5日月曜日24時】


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